辻斬り
話を聞いて、テンが首を
「犯人の目的は、何なんですかね。一回、斬りつけるだけの辻斬りなんて……武器の切れ味を、試してるとか?」
「それに関しては、大体の見当がついている。その斬り傷なんだが、まともな治癒が出来なくて優秀な治癒スキルを持った保健委員たちでも手を焼いてるそうでのう」
「それって、つまり……魔剣や妖刀によってつけられた呪的斬撃ってこと?」
「ほう、さすがじゃな。その可能性が高いと踏んどる。そしてここ最近、ちょうど流出したばかりの呪いの武器があったはず」
俺の脳裏によぎったのは、先日の邪神事件だ。
確か霊園さんが盗んだ魔道書の他に二つ、学園の宝物庫から盗まれた秘宝があったはずだ。
「魔剣ダインスレイヴ……!?」
「そうじゃ、植村。そして、その剣の性質は斬ったものの
「斬りつけた人々から力を吸い取るのが、犯人の目的だ……と?」
「実際、被害に遭った生徒たちは全てハイクラスの生徒たち。わざわざリスクのある強者を狙ってるということは、より強大な力を吸収する為ではないかと考えちょる」
だとしたら、ただの愉快犯の方がまだマシだったかもしれない。現時点で、既にハイクラスの生徒たちの力を何人分か吸収しているということだ。どれほどの吸収量なのかは分からないが、下手をしたら……。
ようやく深刻な状況だと感じたのか、さすがのテンも真剣な表情に変わって聞くと、周防さんがそれに応えた。
「だから、助っ人を探してたんだね」
「そう。さすがに、うちらだけやと手に負えんほどに危険な領域まで進化しとるかもしれん……最初は天馬先輩やアスカを探してたんやけど、今日も舞台があるらしくて捕まらんかったんよな」
「そこで、ユウトを見つけたわけか」
「先生たちは、先生たちで既に動いてくれとって。私たちは監視と巡回に注力しろって言われとったんやけどな。でも……」
周防さんは、チラリと同じ風紀委員である牛久くんのことを見ると彼もその意思を汲み取って続きを話した。
「ワシらにも風紀委員としての誇りがある!植村ユウト、頼む……力を、貸してくれんか!?おぬしが一緒にいてくれれば、これほど心強い助っ人はおらん!!」
深々と頭を下げて頼み込んでくる牛久くん。
彼もハイクラスに属する実力者のはずなのだが、それだけ俺のことを認めてくれてるということなのか。チラリと横にいたテンと目が合うと、彼女が一言。
「協力してあげようよ!私のことは、気にせずに……ってゆーか、私も一緒に探す!!その、辻斬り犯!!!」
「いいのか?多分、どこも回れなくなっちゃうぞ。下手したら、ライブ本番までに解決するかどうかも……」
「私とユウトなら、余裕でしょ!それに、辻斬りが
「そう、だな……。よし!わかった。やろう!!」
俺らの出した答えに、風紀委員の二人は顔を見合わせながら微笑みあった。
「すまん、恩に着る!この礼は、いつか必ず」
「いえ、お気になさらず。それより、ある程度の犯人の目星はついてるんですか?」
「ああ、ついちょる。一年ロークラスB所属の“猪狩ダイチ”……そいつが、怪しい」
「何か、根拠でも?」
「いくら一太刀だけとはいえ、ハイクラスに所属する猛者たちが何の反撃も出来ずにやられとるのには必ず理由があるはずじゃと考えた」
確かに、そうだ。圧倒的強者ということも考えられるが、そんな奴が犯人だったら正々堂々と正面から襲いかかることも出来たはず。そもそも、それほどの強者なら魔剣を盗んでまで、こんな面倒な犯行をしようと思うだろうか?
だとすると、犯人は……。
「その猪狩くんは、何か暗殺系のユニークスキル持ち……とか、ですか?」
「勘が、良いのう。“猪狩ダイチ”のユニークスキルは【闇討ち】らしい。信用できる
信用できるタレコミって、この学園には情報屋みたいな生徒もいるってことか?そういうユニーク持ちがいても、おかしくはないけど。
そうなると、俺のユニークもバレてるかもしれないのか……っと、今はそんなことを心配してる場合じゃないか。
「【闇討ち】……今回の犯行手口とも、合致はしますね」
「残念ながらユニークの詳細までは分からんのじゃが、名称で推測する限りは不意打ちの成功率を上げる類のスキルと見て間違いなかろう」
「なら、まずは猪狩くんを探し出せば……」
「それが、GPS探知にも引っ掛からんのよ。それも、魔剣の効果かもしれん」
「ダインスレイヴには、そんな効果もあるんですか?」
「一つ、言い忘れておったな。“猪狩ダイチ”は、
柳生くんは闇の耐性を持っていなかったことで、魔剣に意識を支配されてしまった。闇属性を持つ猪狩くんが使えば、暴走せずにダインスレイヴの潜在能力を引き出せるということか。
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