占い・2

「そっ!それは、もちろん一人に……」




 そう答えようとした俺に、ぐいっと顔を近付けてくる占い師。




「私の【占い】は、恋愛に関することなら全てを見透かすことが出来ます。浅い嘘などは、すぐに見抜いてしまいますよ?」




 なに、それ!?もう、恋愛の神様じゃん!

 確かに俺のスキルのことまで見抜いていたし、嘘ではないっぽい。正直な気持ちを話すしかないのだろうか?





「願わくば……みんなのことを、幸せにしたいな〜なんて。だ、ダメですかね?」



「つまり、ハーレムを作りたい。と」



「人が、精一杯のオブラートで包んでいるというのに……まぁ、そういうことかもしれないです」



「その道は、選ばれし者しか辿り着けぬ至高の道……それでも、あなたは進むというのですか?」




 めちゃくちゃ、念を押してくるんですけど!?

 あなたが、本音を言えっていうから……だけど、引き返すなら今しかないかもしれない。

 前世のことを考えれば、一人の女性がそばにいてくれるだけでも十分に幸せなことなのは分かっている。ただ、ハーレムなんて作れるチャンスが少しでもある人生なんて今後の転生で巡ってくる確率がどれだけある?


 うおおおおお!俺は、一体どうすればいいんだ!?




「なるほど。それでも、進むというのですね」



「へ!?ちょいちょい!まだ、何も言っておりませんが?」



「ならば!そんな、貴方にいくつかの助言を差し上げましょう……この恋愛神・マユロディーテが!!」




 この人、占い中は性格が変わるんか?

 完全に、スイッチ入っちゃってるんですけど。

 てか、恋愛神・マユロディーテって誰だよ!?


 だが、まあ……アドバイスは、確かに気にはなるか。




「じゃあ……お願いします、助言」



「ハーレムへの道・その一!S級冒険者を目指すべし!!」



「いきなり、難易度が高そうな条件きたー!」



「要するに、上級国民に選定されること。冒険者なら、S級認定……そうなれば、公的に一夫多妻の権限を手に入れることが出来る。堂々と複数の女子に手を出せるようになるでしょう」




 一夫多妻の権利か……都市伝説と思っていたが、ヒカルのパパによって本当にあることが証明されてしまったからな。確かに、ちゃんとしたアドバイスなんだけど女子が言うような助言ではない。

 普段は、ほんわかとしたお姉さんキャラだったはずなんだけど。




「ちなみに、S級って具体的に何をすれば昇格できるとか……知ってたりします?」



「冒険者協会のギルドに行けば有料で査定してくれて、公式のライセンスを発行してくれるよ。特殊な装置を使って、その人の脳内チップに記録されてる累計ダンジョンポイントの数値や各種スキルを調べて、それを審査して適正のランクを割り出してくれるらしいよ」




 急に、いつもの中条先輩に戻って普通に教えてくれた。二重人格なのか、それとも演技力が凄まじいのか。どっちにしろ、恐ろしい。

 ライセンスは、どのみち欲しいと思っていた。

 暇な時にでも行って、今の自分のランクを知ってみるのも良いかもしれない。そこで、S級になるにはどうしたらいいかの情報収集もしてくるのもアリか。有料ってのが、気になるけど。




「なるほど、ご丁寧にどうも……それで、二つ目の助言は?」



「あ、はーい。ハーレムへの道・その二!愛は均等かつ平等に分け与えるべし!!」



「均等かつ、平等……ですか」



「そうです!適度な嫉妬心なら愛情を深めてくれることもありますが過度な嫉妬心を生んでしまうと、それが原因でハーレムが崩壊してしまうこともあるでしょう。それだけ、女性の嫉妬というのは恐ろしいものなのです」




 もはや、占い師じゃなくて恋愛アドバイザーみたいになってる気もするが今は放っておこう。

 確かにゲームでもアニメでも、古来よりハーレム作りに失敗した者の末路は悲惨なものだ。

 ある者は刺され、ある者は首をねられ……いやいやいや!絶対、そうはなりたくない!




「しかし、女性も千差万別。非常に独占欲の強いタイプもいれば、寛容なタイプもいる……それぞれの特性を見極めて、好感度を調整していく必要があるのです。はっきり言って、これが一番の難関となるでしょう。あなたに、出来ますか?」





 いや、無理……と、言いたいところだが。

【精神分析】を使えば、いけるかもしれないぞ。

 それでも不安ではある。何か、恋愛においての補助系アイテムみたいな秘宝は無いのだろうか?

 今度、それも探してみようか。

 もちろん、媚薬びやくみたいなチートアイテムは抜きで。洗脳みたいなことをしてハーレムを作ったところで、個人的に何も楽しくはないからな。

 恋愛未経験者にだって、プライドぐらいはあるんだい。まぁ、そういうのが好きな男は数多くいるかもしれないが。




「やれるだけ、やってみます……それで、終わりですか?」



「いいえ、これがラストです。ハーレムへの道・その三!女子同士の友好関係を深めていくべし!!」



「と、言うと……好きな女の子同士を、仲良くさせていけ。って、ことですか?」



「ご名答!ハーレム内で絆を生んでおけば、ちょっとやそっとの嫉妬では崩れない……より、強固なファミリーが誕生することに繋がるからです」




 なるべく鉢合わせないようにする方が良いのかとか思っていたが、逆に会わせていって仲を深めさせろとは……さすがは、恋愛神。

 てか。ずっと聞いてるけど、本当に信じて良いのだろうか?この占いという名の恋愛相談。

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