LV3「フォートレス・ジム」・3
『ハスター・リボン』を敵の足首に巻き付けて、月森がその俊敏な動きを止めると、そこへ鉄柵を鉄棒代わりにグルンと回転した神坂の遠心力が加わった蹴りが炸裂する。まずは、一体目。
一体目を蹴り飛ばした反動を利用して、今度は月森の背後にいたオニへ華麗なバク宙キックを打ち込んで叩き落とす。これで、二体目。
ラストの一体とは、『ハスター・リボン』で一気に距離を詰めた月森との接近戦による一騎打ちが始まった。何度か敵の斬撃を捌いて、その太刀筋を見切った彼女は『アルベリヒ・クラブ』から発生する衝撃でオニのソードを弾き飛ばすと、そのまま返しの一打でトドメを刺した。
【韋駄天】と【適合者】のスキル。
身につけた
そして何より、ぶっつけ本番とは思えないほどの息のあった連携プレーによって、上位の機械兵と思われる高機動型のオニたちを、瞬く間に撃破してしまう二人。
これで、どちらも初使用の
しかも、一人は戦闘職ではない“ランナー”だ。
驚いた。『ガチャコッコG』で排出されたガチャ武器が総じて優秀というのもあるだろうが、ここまで敵を圧倒してしまうとは。
そんなことを考えながら植村は淡々と一番下から、襲いかかるオニたちを排除していた。まるで、一人だけシューティングゲームをしているかのように。更には高層から落とされた機械兵たちも自己再生を終えたのか、地上からも攻撃を受け始めた。
「くっ!」
あらゆる方向から襲ってくる敵を、安全な場所に移動しながら精密な射撃で撃退していく。
防戦一方ではあったものの、幸いだったのは本命の二人が頂上に手が届く距離まで迫りつつあったことだ。
「よし!一番乗り!!」
「負けたぁ!やっぱり、ナオは速いなぁ……」
どっちが先に頂上へ着けるのかのレースでもしていたのか二人が一喜一憂していると、神坂が目的のフラッグとそれを守るように立っていた漆黒の
「また、色違いのオニか……気を付けて、ヒカル。多分、アイツが最後の砦っぽい」
「うん!時間もまだ、5分もある。慎重に、行こう」
二人の気配を察知したのか、黒いオニが起動音と共に動き出すと、足裏から強烈な風を巻き起こし、一瞬にして彼女たちのもとへ襲いかかってきた。
「ヒカル!!」
すぐに、危機を察知した神坂は月森の体を突き飛ばすと、自身もその場から距離を取った。
そこへ、オニの手にある機構から飛び出てきた鋼の爪が空を切る。神坂が押し込んでいなければ、月森の身体が切り裂かれていたところだ。
黒オニは、攻める手を休めようとはしない。今度は鋼の爪を振動させて、風の衝撃波を神坂に向かって放出する。
圧縮した空気を放出させ、爪と足裏からのソニックブームで攻撃と高速機動の両方を可能にする。
それが、このダンジョンが誇る最強のオニの特徴であった。
ゴウッ!!
生成した光の足場を利用して、間一髪のところで衝撃波を躱わすことに成功する神坂。
その隙に、体勢を立て直した月森は『バンシー・ロープ』で黒オニを捕縛しようと試みる……が。
反応速度も高い黒オニは瞬時に高くジャンプしてロープを回避すると、今度はソニックブームによる衝撃を月森に向けて放った
「ライトニング・ボール!!」
月森が対抗して撃ち込んだのは
それを掌から出現させて、高速で射出すると敵の
しかし安心したのも束の間、二つの技が衝突した煙の中から足裏の超噴射を使って黒オニが更なる接近戦を仕掛けてくる。
ブンッ
今度こそ直撃されたかと思われた黒オニの爪が、またしても空を切る。捉えたはずの“月森ヒカル”が霞のように消え去ると、そこに彼女の姿は無かった。
それは、『エアリアルドレス』第三の機能・
月森の挙動に、黒オニが翻弄されている隙をついて、神坂は一直線に守り手のいなくなったフラッグへと駆け出していた。
黒オニが如何なる強敵であったところで、どのみち完全に撃破することは出来ないというルールだったはず。
ともなれば、最優先で彼女たちがするべきことは、フラッグを獲得することなのだ。
「もらった!」
【韋駄天】と『スレイプニル・ブーツ』の相乗効果で、すぐにフラッグ直前まで接近することに成功した神坂だったが、あわやキャッチとなるかと思った瞬間、空から巨大な青色の機械人形が降ってきて、その間に立ち塞がる。
「なっ……また、新しいオニ!?」
そのまま、現れた青オニを蹴り飛ばそうとキックを繰り出した神坂だったが、まるでびくともせず巨体は微動だにしなかった。
圧倒的な装甲を持つ青い
フラッグを守る最後の砦は、他にいたのだ。
(正面突破は、無理そう……か。それなら!)
高速で敵の背後に回り込み、フラッグを奪い取ろうとする神坂。しかし、瞬時に青オニもその気配を感知して円を描くように、再び彼女の対面へと回り込んでいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます