LV3「フォートレス・ジム」・2
先に神坂さんに辿り着けたのは、月森さんの方だった。
『ハスター・リボン』を手頃な高さにあったジャングルジムの鉄柵に巻き付けて、空中で神坂さんの体をキャッチしてみせたのだ。
そのまま親友の体を抱えた状態で、ビルでいう三階ぐらいの高さの足場へ着地する。
「大丈夫!?ナオ」
「ヒカル……あ、ありがと。焦ったぁ〜」
「いきなり、機関銃なんて焦るよね。やっぱり、外から攻めるのは難易度が高いかも……」
ハッと月森がジムの中を見渡すと、機関銃を構えた
すると、彼女は素早く右腰に携帯していた緑のロープを、まるでカウボーイのように先端に輪っかを作って投げ縄の要領で投げつけると、近くのオニの頭部へと鮮やかに巻き付けた。
実戦で動く相手に投げ縄を命中させることは、常人からすれば至難の業であろうが【
巻きついたロープは超高速で振動すると敵の固有振動数と共振して、ボンっと爆発を起こしながら地上へと落下していった。
グラスに高音の声を当てて割る映像をどこかで一度は見たことがあるだろうか?まさにその原理を使って攻撃するのが、この『バンシー・ロープ』の特徴だった。
それと、同時に神坂も別の一体に向けて行動を起こしていた。ジムの鉄柵を伝って、高速で敵に接近していく。『スレイプニル・ブーツ』による壁走りの特性が早速、役に立ったようだ。
柵の間をバウンドしながら、あっという間にオニの背後へと回り込んだ神坂が強烈な蹴りを見舞うと、その
ぐしゃっ!!
ただ一人、地上に取り残されていた植村の近くに撃破された二体が落下してくる。
しかし、そのオニたちはすぐに自己再生を始めて、故障した箇所が修復されていくのが見えた。
なるほど。これが、攻撃はできるが完全に破壊することは出来ないということか。
ただ、修復するには時間が掛かりそうだし、攻撃することで敵の行動を阻害することは無駄なことではなさそうだ。
ふと上を見ると二人の女子が一人はリボンを伸ばしながら、一人は鉄柵を走りながら、どんどんと頂上へと登っていた。
今回のミッション……俺、必要ないかも。はは。
二人が一流のアスリートということもあるだろうが、こういう純粋な運動性能が必要となる場面だと、俺は凡人のようなものだ。【跳躍】や【登攀】なども使えるがrank100に出来るのは、一瞬だけだ。
今の俺に、出来ることといえば……。
「ヒカル!また、来てるよ!!」
「うん!」
今度のオニは遠めの場所で立ち止まると、その場に仕込まれていた重機関銃の砲座を呼び出すと即座に乗り込み、そこから彼女らに撃ち込んでいく。
バババババババッ!!
「くっ!」
再びリボンを伸ばして、神坂の前に躍り出た月森は右手の掌を広げると、光のシールドを作り出す。
降り注ぐ無数の銃弾を防いだそのバリアは、彼女が纏っている『エアリアルドレス』の機能の一つだった。
「凄い……そのドレス、そんなことも出来るの!?」
「うん。でも、このままじゃ……」
途切れることない銃弾の雨に、少しずつ押されていく月森。その時……!
ドンッ!
地上から放たれた一閃の光条が、銃座ごとオニを撃ち抜く。それは、植村ユウトのマナ・ブラスターから放たれた雷気の一射・
「俺が、敵を牽制しておく!二人は、フラッグを!!」
植村の叫びに、二人は目を見合わせてコクリと頷くと、進行を再開させた。
俺が出来ることは、これぐらいだ。
一番下から、二人を邪魔するオニたちを片っ端から撃ち抜いていく。
rank100に代替させた【射撃(拳銃)】によって、下から次々と光線を当てていく植村。
そんな彼へ、オニたちも迎撃するように彼へ銃口を向けて応戦を始める。
どちらにせよ、オニたちのヘイトを彼が集めている間に、二人の女子たちは上層部まで到達しつつあった。しかし、そこへ今までの白い
すると、右腕からボウガンの
それを、またしても月森が光のシールドを発生させて防ぐ。だが更に、その隙を突いて背後に回り込んだ他の二体のオニが背中からソードを抜いて近接攻撃を仕掛けてきた。
赤いボディーのオニは、近〜中距離戦を得意とするファイター型の
今度は、その一体を神坂が蹴り飛ばして、友人のピンチを救うと、残りの一体を月森が『アルベリヒ・クラブ』を使って打倒する。
ところが、敵もさっきまでのオニとは違う。姿勢を崩されても、近くの鉄柵を掴んで即戦線に復帰してきたのだ。
そして、女子・二人と赤オニ・三体による激しい立体機動バトルが幕を開ける。
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