奪取
「さて、と……ここからは、若い二人に任せるとしよう。あとは、任せたぞ?ヒカル」
「はい!」
妻をお姫様抱っこで担ぐと、娘に後を託して立ち去ろうとするオボロ。その腕の中で、静観していた彼女が必死に止めた。
「待って、あなた!ヒカルを、置いていくの!?」
「大丈夫だ、母さん。キミが思っているより、あの子は強いよ。それに……頼もしいボディーガードも、いるようだ」
その姿を見て安心した彼は、近くの扉へと駆け出していく途中で、呆然としながら立っていた娘の友人にも声を掛ける。
「外にまだ、逃げ遅れた人たちがいるかもしれない!一緒に来て、保護するのを手伝ってほしい……キミも、冒険者なのだろう?」
「は……はい、そうです!手伝います!!」
神坂ナオの気持ちいい返事に、オボロはニコッと笑顔で頷くと、クイッと手招きして共に扉から外へと出て行った。その姿が見えなくなる直前、ヒカルの母親はあらん限りの声で叫ぶ。
「ヒカル!そんな化け物……さっさと、倒してしまいなさい!!あなたなら、出来るわ!!!」
その言葉は、間接的に冒険者を目指すことを認めてくれたように思えて、ヒカルは嬉しさと共に勇気を貰う。そして、強い意志を持って“ブランクカード”を、邪神に向けて掲げた。
「お願い、ブランクカード……あいつの武器を、奪って!!」
キイイイイイイン!!!
カードが輝くと、何も描かれていなかった紙面に、黄色いリボンのイラストが浮かび上がった。
そして、テキストも武器の説明に変化する。
ハスター・リボン
等級:ウルトラレア
邪神ハスターの黄衣を奪い改良した特殊武器。使い手の意思を感知し、自在に伸縮し動かすことの出来るリボン。布のように柔らかいが、敵に触れる瞬間だけ硬化する神秘の素材で出来ている。
攻撃・防御・捕縛など、戦闘における用途は広い。
その代わりに、邪神の全身を覆っていた黄色のローブは消え去り、全身が緑の醜い異形の怪物がそこにいた。それこそが、ハスターの真の姿であった。
「本当に、奪っちゃった……の?」
「返せ……我の法衣……!!」
奪った
今度は、実際に背中から本物の触手を、ウジャウジャと出現させながら。
その勢いに、さすがの植村も追いつくことが出来ず、咄嗟に彼女に向かって叫んだ。
「月森さん!!」
「……ハスター・リボン」
月森が武器名を声に出すと、持っていたカードが消えて、代わりに彼女の両腕に黄色いリストバンドのようなものが巻きつかれる。
「しね!シネ!!死ね!!!」
そんな彼女に、強烈な殺意を放ちながら無数の触手を伸ばして、襲いかかる邪神。
またしても凶悪な狂気が彼女の足を震わせるが、今のヒカルもさっきの“新体操選手”ではなく、“冒険者”へと変わっていた。
強い意志を持って、すぐに手足は自由を取り戻す。
ズバババババババ!!!
すると、彼女の両腕に巻きつかれていた『ハスター・リボン』が両手から一本ずつ伸びて、向かってきた邪神の触手たちを自由に動きまわりながら、全てを迎撃し切り裂いていく。
「す……凄い」
「貴様アアアアア!!!」
ことごとく自分の触手を切り落とされた邪神は、仕方なく自らの体ごと当たってこようとする。
「くっ!」
あわや、衝突かと思った直前で、彼女は『ハスター・リボン』をアリーナの天井にある支柱に巻きつけると今度はそれを縮めて、まるでターザンジャンプのようにして、敵の頭上を飛び越えていった。
更に彼女は、空中で初の“インベントリ”をオープンした。
まるで、ゲームの倉庫のような画面が映し出されると、そこには今まで自分が『ガチャコッコ』で引き当てた
「植村くん!これを、使って!!」
彼女が選択したのは、ダンジョン・アイランドで引き当てた一撃必殺のナイフ『デスブリンガー』だった。
本当に無償で、以前に引き当てた武器を手元に呼び寄せられたことに感動しながら、月森は『ハスター・リボン』の先端に結びつけた即死の短剣を、植村ユウトのもとへ伸ばして、送り届けた。
「あ……ありがとう!月森さん!!」
【虚飾】が、【近接戦闘(刀剣)】rank100に代わりました
通常の太刀やソードに比べると、短剣に対する植村の熟練度は低かったものの、基本的には前の二つと要領は同じ。rank100の技能を使えば、思いのほか応用するのは簡単だった。
「七星剣術・一つ星……
何より、
放たれた気の衝撃波が、邪神に向かって飛んでいくが、敵は意外な方法でそれを無効化する。
背中から生えた触手を一斉に前方に集め、一瞬のうちに螺旋状にすると即席の肉の盾を作り出したのだ。その“肉の盾”はギュルンと回転して、簡単に植村の
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