ブリューナク
「下等生物どもめ……許さぬぞ」
ガチャコッコが進化を遂げる前に、体勢を立て直した邪神が怒りに肩を震わせながら、十本以上の触手を出現させる。顔を覆っていた仮面は、炎によって焼き焦げてしまったのか、口から無数の小さな触手を生やした、目も鼻も存在しない緑の皮膚の化物の素顔が露わとなった。
そのせいか、放たれる狂気の圧も強まり、それは冒険者として耐性を持っているはずの月森たちの体までも硬直させる。
「か……体が、動かない……っ!?」
「
月森一家が狂気に呑まれようとしている中、一人だけ何も影響を受けず、息を吹き返す者がいた。
【虚飾】が、【近接戦闘(格闘)】rank100に代わりました
「雷神八極拳……
ドンッ!!
壁に激突する瞬間、気の力を使って衝撃を緩和していた植村は、虎視眈々と好機を伺いながら“雷気”を溜めていた。
弾き出させれたように一瞬で
しかし、
だが、植村も無策で突っ込んできたわけではない。用心深い彼は、常に自分の弱点を分析して、それに対策する
それは、【虚飾】という想像力次第では無限の戦術が実現できるユニークスキルを使っていく上で、自然と身に付いていた習慣でもあった。
絶対無敵に思える強力な
ドンッ!!
「ウガアッ!!」
今度は強烈な拳を、露わになった顔面に叩き込まれた邪神は、堪らず自らの手で反撃を繰り出すものの、その時には植村の姿は既に無かった。
またしても、
そこへ、再び触手で追撃されたとしても、あとは一連の動きを繰り返せばいい。
それは、いわば超高速のヒット&アウェイ。
高速で突っ込んでダメージを与えては、高速で離脱することにより、狙いを絞らせない。
一方的に、植村のターンが続く怒涛の連撃。
彼は、この技を『
すると、蓄積していくダメージにより、邪神の放つ狂気も弱まったのか月森一家の萎縮も次第に
「植村くん……良かった。無事だったんだ……!」
「あれは……ヒカルの彼氏かな?」
「えっ!?ちちち……違うよ!まだ、そんなんじゃないから!!」
「ほう。“まだ”、違うのか」
わざとらしく「まだ」を強調しながら、顎に手を当ててニヤニヤと娘をからかう父親に、ヒカルが顔を真っ赤にしていると、ついに『ガチャコッコ』の進化が完了した。
すると、卵の代わりに今度は一枚のカードのようなものが鳥の嘴部分から排出される。
『ガチャコッコG』
ガチャコッコに「幸運のメダル」を投入することで、進化した姿。効果は従来のものに、インベントリから今まで引き当てた武器を召喚できる機能が加わった。
更に、インベントリから相性の良い武器同士を合成させて、新たな武器を生み出すことが可能。ただし、合成に使用した武器はインベントリから抹消される。
召喚は自由に出来るが、合成には使用者のダンジョンポイントを消費しなければならない。高レベルの合成になるほどに必要となる値は大きくなる。
「インベントリ……合成……!?」
「月森さん!!」
表示された秘宝のテキストに夢中で見入っていたヒカルの耳に、植村の声が届いた。
圧倒しているとはいえ、ここに来る途中で蓄えた人々の魂によってか、異常なまでの再生能力を有していた邪神には、肉弾戦におけるダメージだけでは致命傷まで至らないことは分かっていた。
彼は時間を稼いでいたのだ。月森ヒカルが、神坂ナオから『ガチャコッコ』を受け取って、起死回生の武器を引き当ててくれるまでの時間を。
そこへ、月森オボロが娘に助言する。
「奴を完全に撃退するには、一撃で消滅させるほどの威力が必要だ。基本的な使い方は、変わってないはず……そのカードは、私がメダルを投入して排出されたものだ。何か、良い武器が引けたかもしれないぞ」
慌てて、『ガチャコッコG』から排出されたカードをドローして、その絵柄を確認すると、そこには何も書かれておらず、
ブランクカード
等級:プロモーション
進化した際に排出される特殊なカード。敵の武器を奪って、自分のものに改良することが出来る。
ただし一度、奪ってしまった武器は二度と変更することが出来ない。
「これは……」
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