下剋上・2
「一応、俺も一生徒なんですけどね。殺す気ですか?学園長」
「何でもアリのルールに設定したのは、キミだろう?それに、この程度の攻撃でどうこうなるほど、ヤワじゃあるまい。実際、ピンピンしてるようじゃないか」
まるで映画のワンシーンでも見ているかのような、ド派手な戦闘の連続に、観客たちは息を呑んで見守っていた。
そんな中、月森さんが静かに感想を呟く。
「凄い戦い……剣も、術もハイレベルすぎる」
感心する彼女に、上からレイジが補足説明を加えた。
「学園長め。複数の精霊の術式を、使いこなしていた……戦士タイプかと思っていたが、さすがだな」
「それって、珍しいことなの?」
「術自体、使える者は
“属性”か。俺だと「雷」、アスカだと「風」みたいなものだな。自分の場合は、術というよりは技って感じで使ってるけど。
「学園長は、属性が多いってこと?」
「いいや、属性は一人に一つと決まっている。あれは、才能だ。ときたま、現れるらしいぞ。多数の
「なるほど……あれって、何の術式か分かる?」
「あの印の結び……道術の類だ。忍びの者が好んで使う、いわゆる忍術に酷似した術式。忍術も複数の精霊に干渉して、多彩な術を繰り出すのが特徴だからな」
言われてみれば、忍者のテンも色々な精霊に干渉していたな。と、いうか……本当に、冒険者の知識が豊富だな。レイジの奴。
俺らが戦闘術を磨いてるように、悪友も“知識”という武器を磨いていたというわけか。
そんなことを話していると、リング上も次なる展開に動き出そうとしていた。
「ならば、こちらも。遠慮なく、やらせてもらいましょうか!幸運もたらせ、銀腕の王……“ヌアザの剣”!!」
“天馬カケル”が手を振り上げると、宙に無数の光の剣が出現する。
「ふっ……本当に、遠慮なしか。生意気な
「さぁ、学園長!これが、避けられますか!?」
彼が、学園長に向かって腕を振り下ろすと、セットアップされた光刃が一斉に彼女に向かって、発射された。
「七曜術が、ひとつ……
瞬時に印を結び、次に彼女が出現させたのは黄金の盾の形をした巨大なバリア。それによって、飛んできた光刃を次々と防いでいく。
相手の光術は一直線に飛んでくる性質だった為、前面に強固な守りを敷く“
しかし、それは天馬の想定内だった。
元々、“ヌアザの剣”で学園長を仕留めるつもりはなかった。それは、次なる大技を仕込む為の時間稼ぎ。
その大技とは、天馬が有する中でも最大級の威力を誇る“三種の奥義”の一つ。
「海王剣……オルカ・ドライブ!!」
本来、光属性を持つ天馬が、“水”の精霊に干渉して放つ必殺の剣。そういう意味では、彼もまた複数の
ようやく、全ての光の剣を防ぎきった学園長に、音も無く一瞬で間合いを詰めてくる天馬。剣を構えた全身には、巨大なシャチの姿をした青いオーラが纏われていた。
まるで、海中で獲物を見つけたかのように、その一撃は“白鷺マイア”という餌に狙いをつける。
「くっ……やむを得ん!」
回避行動を取る暇は無いと判断した学園長は、強引に左眼を隠していた眼帯を外すと、それは青い右眼とは異なり、神々しい
美しい彼女のオッドアイがモニターにアップにされると、観客席もどよめく。
そこへ、天馬の『オルカ・ドライブ』が炸裂する。
ブンッ
空を切った剣の感覚。命中すると確信していた一撃だけに、動揺しつつも相手の様子を確かめる為に技を解き、彼が振り向くと……。
ズドドドドッ!!!
突如、全身のあらゆる個所に打突を打ち込まれた激しい痛みが襲う。天馬は苦しみながらも、すぐにそれが学園長による攻撃だと察知した。
「ぐはっ!こ、これが……あなたの、ユニークスキル……か」
「ああ、そうだ。この【魔眼】が発動してる間だけ、私は周囲の動きをスローモーションに感じ取ることが出来る。これが、時を操る秘術……“タキサイキア”だ」
ユニークスキル【魔眼】とは、その名の通り特殊な超常的能力を秘めた眼球を有する者に与えられるスキルであり、単に【魔眼】と言っても人によって、その得られる効果はピンからキリまであるとされている。
彼女の【魔眼】は、発動することで知覚を加速して、周囲の景色をスローに見せるという強力な
「やはり、
「ダンジョン以外で、この
ズドッ
加速された学園長による木刀の一振りが、彼の
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