契約の儀・2
「七星剣術!?何で……っ?」
「ワシは、代々の主が使った剣術を再現することが出来るのじゃ。お主の技はもちろん、先代の技も……な!」
一転して、攻勢を仕掛けてくるフルカスの太刀筋は、マコトもよく知る剣型のそれだった。
「新陰流……!」
「七星剣術・一つ星!
通常の一振りに、さらっと
それだけ、フルカスの剣士としての素養が高い証である。
(つ、強い……!)
「さすがに、良い目をしておる。どれどれ……こちらも、段階を上げていくとするかの」
「させないっ!」
これ以上、相手のペースで攻めさせてはなるまいと、マコトも反撃の手を出そうとするが……。
「甘い!」
ブンッ!!
マコトが手を出そうとした瞬間に、それを遮るようなフルカスの突きが飛んできて、マコトは紙一重で回避に成功したかと思いきや、首筋が浅く斬られていたことに傷が遅れて開いたことで、ようやく気付かされる。
「くっ!」
反撃の一撃を出そうとするも、またしても攻撃の出鼻を
(まさか、僕の攻撃が読まれてる……!?)
警戒心を強めて、間合いを広げるマコトに、フルカスは深追いしようとはせず、余裕の笑みを向けながら、地面に突き刺された槍を手に取り、背中に戻す。
「良い判断じゃ。今のは、“対の先”……相手の動きの起こりを瞬時に捉え、先に攻撃を仕掛けることで、それを制す。特殊技能と言うよりは、剣の道における高等技術よ」
「……随分と、余裕だね。技術の解説まで、してくれるなんて」
「悔しいか?それならば、ワシから余裕をなくしてみせよ。まさか、持てる技全てを出し尽くしたわけではあるまいて」
「そう、だね……出し惜しみしてる余裕なんて、無いみたいだ」
そう言うと、彼はきゅっと目を
「ほう。二刀流か……面白い!」
一般的なイメージでは、同じ長さの剣を両手に携えることが“二刀流”と思われがちではあるが、剣道や、かの宮本武蔵の“二天一流”では、長短一本ずつの刀を右手と左手に携えるのが
式守の【鑑定】によって、短剣の扱いにも才覚があることを知り、両利きだった自分の長所を最大限に活かす為に行き着いたのが、このスタイルだった。
幸いなことに、身近な姉弟子に“二刀流の使い手”がいた為、彼女の教えのもと、短期間でも実戦で通用するぐらいには仕上げることが出来たつもりだ。
「いくよ……その余裕、なくしてあげる」
『銘刀・残光』を振りかぶりながら、間合いを詰めるマコトに、再びフルカスの“対の先”の一撃が襲いかかるも、彼は残った左手の『
「ぬうっ!?」
そして、大太刀から“
しかし、マコトも身体を回転させて、その勢いで今度は『
「やった!?」
「まだまだ!!」
普通のクリーチャーなら終わっているほどの直撃だったが、敵は
「七星剣術・三つ星……
「七星剣術・三つ星……
まるで、示し合わせたかのように同時の技を放つ二人。どちらも高速の踏み込みで再接近すると、共に繰り出された居合で、
その威力は拮抗していたが、マコトには残る一太刀があった。
同時に鞘に納めていた、二つの刀。
鍔迫り合いを繰り広げていた剣の交差点に、背中から抜刀した銘刀を勢いよく振り下ろす。
「十文字……斬り!!」
ドンッ!!!
「ぐおおっ!!」
重なる十字の衝撃波によって、後方に吹き飛ばされたフルカスは、妖刀を地面に突き刺しながら勢いを殺すと、追撃に迫ってくるマコトへ向けて、素早い動きで背中の槍を投擲した。
ギィン!!
しかし、それをマコトは軽々と弾き飛ばす。
だが、それで良かった。
一瞬の時間だけでも、稼いでさえくれれば。
「七星剣術・七つ星……」
それは、“植村ユウト”の上段スタイルとも、“上泉マコト”の居合スタイルとも違う、脇構えスタイルの七つ星。
いつの間にか、地面から引き抜いていた妖刀からは
「くっ!七星剣術・七つ星!!」
その姿を見たマコトは、慌てて急制動して『
「「
そして、互いに放たれる七星剣術・最大の型。
しかし、それは同じくして全く異なるモノ同士の激突。
植村が“津波”、上泉が“凪”とするならば、フルカスの“
放たれたオーラは螺旋を描きながら、マコトの“
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