ルミナス・ブレード
「
アスカの生み出す竜巻が、グラシャラボラスの右翼を捻じ切ると、次いで一角のレーザーブレードの真っ赤に輝く刀身が残る左翼を斬り裂いた。
浮力をなくしたグラシャラボラスを、【剛体】のパワーを全開にした牛久が地面に叩き付ける。
「サクラ!」
「はいっ!!」
【虚飾】が、【跳躍】rank100に代わりました
植村が高く敵の頭上に跳躍すると、サクラに合図を飛ばした。
それは、この時の為に二人で密かに練習を重ねていた合体攻撃。
攻略したあとにオーナーから難癖をつけられないよう、サクラのアピールポイントを増やすべく、考案されたフィニッシュ技。
「高潔なる騎士よ、我が光刃をもって明日を照らす希望を示せ……」
サクラの詠唱が終わると、二人が同時に技名を叫ぶ。
「「聖光剣……ルミナス・ブレード!!!!」」
空中で植村が掲げた
その光に脅威を感じたのか、グラシャラボラスが暴れ始めて牛久を強引に身体から引き離すと、植村を叩き落とさん勢いで飛びかかり、両の爪を伸ばした。
しかし、彼の剣の放つ黄金光を目の当たりにしたグラシャラボラスは、それを見ただけで苦しみもがき始める。
サクラが植村の光剣に纏わせた光は、退魔の光。
その光を浴びただけで、悪しき魔物には影響を及ぼす、神聖なるものだった。
そして、怯んだ敵の眉間に二人の合体剣が突き刺さると、浄化の炎で焼き尽くされるかのように、グラシャラボラスは消し炭となって撃破された。
ミッション クリア
「ふぅ。や……やった!成功した」
光剣を納刀して、一息つく植村に駆け寄っていくサクラは、興奮のあまり思わず彼とハイタッチを交わすと、すぐに我に返り顔を赤くした。
「ご、ごめんなさい!つい、嬉しくって……」
「全然、良いんだよ!俺も、嬉しかった。頑張った甲斐があったね、うん」
照れくさそうに見つめ合う二人の間に、アスカとモモカが割り込んできた。
「ちょっと、ユウト。いつの間に、あんなの練習してたわけ?二人だけで、会ってたの!?」
「植村ユウト!お姉ちゃんを、たぶらかすような真似したら許さないんだからね!?」
なぜ、俺が責められているんだ……ボスを、倒したはずなのにぃ!
そこに助け舟を出してくれたのは、意外にも鳴海小隊の面々であった。
「見事な連携技だったよ。まさか、サクラさんにあれほどの戦う力があったとはね」
パワードスーツを解除しながら、“一角ツバサ”が爽やかに汗で濡れた髪を棚引かせて言った。
「サクラお嬢ちゃんなら、きっと良い冒険者になれるじゃろ。いつか、一緒に戦える日が楽しみじゃわい!がっはっは」
汗を拭いた手ぬぐいをバンダナのように額に巻きながら、豪快に笑い飛ばすのは牛久ダイゴだ。
そんな彼らに、アスカが心配そうに聞いた。
「でも、大丈夫なわけ?最後、私たちに協力したでしょ……アンタたち」
「ん!?ワシらは、ワシらでボスを倒そうと頑張っとっただけじゃ。協力する気なんぞ、さらさら無かったぞ?」
「白々しいなぁ。ごっさんたちは、そのつもりでも……この記録映像を見たオーナーが、どう思うか。それが、心配なんだけど」
そんなアスカに話しかけたのは、安全地帯に身を潜めていた“雪鐘ミク”であった。
「それなら、大丈夫だと思います……多分」
「雪鐘さん……それって、どういうこと?」
「最後の方は怖くて、ちゃんと撮影できていなかったんですよね〜……あ、でもフィニッシュはバッチリ記録に収めてあるので、ご安心を!」
「え、そんな都合の良いことある?あなた、まさか……!」
「どのみち、サクラさんに守ってもらわなかったら……今頃、とっくに死んじゃってたんで。私」
その言葉で、その場にいた誰もが雪鐘は、わざと証拠を隠蔽してくれたのだと気付いた。
彼女も冒険者である前に、人間だ。助けられた恩を返したいと思ったのだろう。
サクラが無言で深く礼をすると、雪鐘は恥ずかしそうにポリポリと頰を掻いた。
「どうやら、これで心配事はなくなったようですね。サクラさん、今回は
鳴海に促されて、サクラはトンネル内に出現した宝箱の前に歩み寄っていく。
慎重に蓋を開くと、その中に入っていたのは……。
『カドゥケウスの杖』
天使の加護を宿した魔法の杖。精霊に干渉できない者でも、この杖を使うだけで軽微な傷なら治癒することが出来る。
また、持ち主の神聖力を増福させて光を操る力が向上する効果も持ち合わせている。
「魔法の杖……」
「サクラに、ぴったりの秘宝じゃん?貰っておけば?」
「アスカさん。で、でも……」
「私たちが持っていても、使いこなせそうにないし……このダンジョンで、最も活躍したのはサクラなんだから。文句ナシでしょ?ね、みんな」
アスカが目配せすると、植村もモモカも互いに笑顔で同意を示したのだった。
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