LV2「合わせ鏡の回廊」・1
「……あった。ここだ」
次の日、すぐに集まった俺たちは『ダンジョン・サーチ』を頼りに、目的のゲートまで足を伸ばしていた。
そこは都内にある廃れた神社、後ろにある木々を挟んだ裏手に、その青色のゲートは出現していた。
「ありがたいけど、ホントにいいの?私たちが練習なんかに、使っちゃって」
「まぁ、大丈夫でしょ。レベル2のゲートだし、まだ誰にも発見されてないみたいだし?早い者勝ちって、ことで」
発見したゲートを覗き込んで、モモカちゃんが心配していると、アスカが適当にフォローを入れた。
『ダンジョン・サーチ』の存在は、二人には黙っているので、今回のゲートは知り合いから教えてもらったということになっている。
それぞれ、戦闘服を身に纏って集まった俺たち。
普段使いできそうなファッションとはいえ、これから冒険に行きます!と言ってるようなものなので、少し奮発して無人タクシーを使い、恥ずかしさは紛らわせた。
車中で色々と話して、多少は打ち解けることが出来たものの、それでも知り合って間もない女子二人がいるのは緊張する。
「ここに、入るんですよね……今から」
「そうだよ。緊張する?サクラ」
「はい。こんな少人数で、ダンジョンに入るのは、さすがに初めての経験なので」
レイド戦の時と同じ白いケープコートを着たサクラちゃんを、アスカが優しく励ましている。
やっぱり、彼女を妹のように可愛がってるのが垣間見えた。
「大丈夫だって。私も、いるし……こう見えて、コイツも頼りになるから」
俺の右肩を片手で揉みながら、アスカが目配せしてくる。すると、サクラちゃんも真っ直ぐに俺の目を見てきて、思わずドキッとしてしまった。
「はい!植村さんの実力は、この前の戦闘で拝見させていただきました。よろしくお願いします」
「あぁ、うん!こちらこそ、よろしく」
そんな会話を聞いて、アスカが「ん?」と首を捻りながら、苦言を
「ちょっと、待って。私のことは、“アスカさん”で、ユウトのことは、“植村さん”呼びなの……なんか、私の方が小物みたいでイヤだな」
「いやいや。普通に、関係性の問題でしょうが」
「だったら、せめて“ユウトさん”って、呼んで!そしたら、対等になるから」
なぜに、そこまで俺をライバル視してるんだ。
そんなアスカの謎の主張に負けて、サクラちゃんは慌てて首を縦に振った。
「わ、わかりました。じゃあ……ユウトさん、で」
あまり、経験したことのない呼ばれ方だが、可愛い子から名前で呼ばれるのは悪い気はしない。
少し、照れ臭さはあるけれど。
「なら、私も平等に“植村ユウト”って、呼んであげる!」
「……フルネーム呼び、大好きかよ」
ふんっと、鼻息荒く宣言したモモカちゃんに、アスカがボソッとつっこんだ。ホント、姉妹で全く性格が違う。
「呼び方も決まったところで……そろそろ、行きます?」
俺の言葉に、談笑していた三人も真剣な表情になってコクリと頷いた。
そして、アスカが入る前に最後の一言。
「レベル2だからといって、油断は禁物。細心の注意を払って、行こう」
かくして、一人ずつゲートに足を踏み入れていくと、何やら洞窟のような場所に飛ばされた。
LV:2 青色のダンジョン
ミッション
60分以内に、秘宝の番人を撃破せよ
「ここは……洞窟の中、ですかね?」
「そうみたいだね。バトルミッションらしいけど、いきなり戦闘ってわけじゃないらしい。ボス部屋を、探さなきゃいけないのかも」
中は真っ暗だったが、壁には所々に
周囲に、クリーチャーらしい敵は見当たらず、先の見えない一本道が伸びている。
「あ、あの!アスカさんと、モモカちゃんがいません!!」
「えっ!?」
サクラちゃんに言われて、ようやく気付いた。
この場所には、俺と彼女しかいない。他の二人の姿が、どこにもなかった。
すると、俺の耳元にアスカの声が届く。
どうやら、通話機能は作用してくれてるらしい。
「ユウト!無事?今、どこにいる!?」
「アスカ!?えっと……多分、洞窟の中。サクラちゃんと、一緒にいる!そっちは?」
「こっちも、洞窟の中……んで、モモカと一緒にいる。どうやら、二手に分けられちゃったみたいだね。私たち」
驚いた。“スタート地点が別の場所から”っていうパターンが、存在するとは。こういったケースのダンジョンに入るのは、初めての経験だ。
「どうする?まずは、合流しなきゃだよね!?」
「うん。とりあえず、こっちは道なりに進んでみるから……そっちが、私たちを探しに来てよ。確か、そんなスキル持ってたはずだよね?ユウト」
「あぁ、【ナビゲート】か……分かった、使ってみるよ。また、何かあったら連絡する」
「おっけー。じゃあ、また後で」
アスカとの通話を切ると、二人きりになってしまった不安そうなサクラちゃんと目が合ってしまう。
いきなり、こんな状況になってしまうとは……。
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