作戦会議・1
「私たちの団長は、他のダンジョンを攻略中の為……今回、団長代理としてミッションを指揮することになりました“天馬カケル”です。若輩者ゆえ、舐めていただいて大いに結構。信頼は、現場の活躍をもって勝ち取っていきたいと思ってます」
今回、『エクスプローラー』の団長は参加しないのか。どんな人かは、興味があったけど。
しかし、俺たちと変わらない年齢で、こんな大規模ギルドの団長代理とは。
「では、まずはモニターをご覧ください。これらが偵察部隊によって、割り出された今回のダンジョンに現れる
天馬カケルが視線を送った先にいたのは、モニターの端っこで、資料を手にした眼鏡を掛けた知的な女性だった。俺たちと同年代ぐらいだろうか、彼女が“鹿沼レナ”だと思われる。
「それでは、説明させていただきます。まず、今回の秘宝の番人たるボスは、侯爵級悪魔・キマリス。槍と盾を装備した人型であり、漆黒の馬に騎乗しているのが特徴です」
モニターに一体の悪魔が拡大される。骸骨のような顔をしていながら、肉体は屈強で部族の戦士をイメージされる。馬の方も筋肉隆々で、競走馬というよりは荷馬車を引きそうなパワー系といった感じだ。
補足のように、天馬先輩が説明を加える。
「残念ながら、偵察部隊は交戦できずに終わった為、キマリスに関しての詳細な攻撃方法は明らかになっていません。予想できるのは武器を使った肉弾戦ですが、特殊な攻撃も備えているかもしれないので、そこは注意していただきたい」
彼の説明に一人の傭兵が、手を挙げながら質問した。
「交戦できずに終わった……ってのは、どういうことだ?戦うまでにも、障害があるってことか」
「ええ、その通り。キマリスは、侵入してきた冒険者を探知すると真っ先に四体の使い魔を召喚し、自身は後方に下がって様子を伺います。つまり、この使い魔をどうにかしないと、ボスとの戦いにすら持ち込めないということです」
「なるほどな。だから、俺たちが呼ばれたわけか」
「偵察部隊は、使い魔と交戦して全滅してしまいました。その代わり、全ての使い魔の攻撃パターンは把握することが出来た。それを、これから説明していきます。レナ、よろしく」
再び、鹿沼さんにバトンが渡されると、今度は別の悪魔がモニターに拡大された。
「一匹目は、『ギゾ』と呼ばれる蜘蛛の使い魔。その姿の通り、攻撃方法は蜘蛛そのものです。糸を吐き行動阻害させるほか、高い跳躍力を利用して直接攻撃を繰り出してきます。糸を避けるため、なるべく敵前方には行かないように注意してください」
「巨大な図体だが、敏捷性も高い。同じ場所に固まっていると、ジャンプ攻撃で踏み潰されてしまう可能性が高い。散開気味に戦うのが、ベストだろう」
天馬先輩の補足が終わると、すぐにまた別の魔物が映し出されて、説明に移る。
「二匹目は、『イェロー』と呼ばれるハイエナ型の使い魔です。四足歩行で、非常に俊敏。しかも、嗅覚が鋭く
「オマケに顎の力が強く、噛みつかれれば普通の装備じゃ一瞬で骨まで粉々にされるレベルだという。たった一噛みが、命取りになると考えてくれ」
次に映った三匹目の使い魔は、全身を炎で纏った怪物だ。
「『バ・トイェ』……見ての通り、炎の使い魔。強力な火炎ブレスを、頻繁に吐いてきます。炎への対抗策を用意しておかなければ、一方的に蹂躙されてしまうことでしょう。たまに繰り出す物理攻撃にも、炎が付与されています」
「幸い、コイツにとっての天敵のようなユニーク持ちがウチにいてね。その冒険者を中心としたチームを作って、対抗していくつもりでいる」
天敵……炎に対抗するなら、水か?水を扱うユニークスキル持ちでも、いるのだろうか。
そして、最後に映った四匹目の使い魔は、これぞ悪魔といったような、虫歯のバイ菌イラストで描かれてそうな出で立ちであった。
「病気の使い魔・『ジゴ』。様々な状態異常を仕掛けてきて、じっくりと相手の動きを止めてから、確実に一人ずつ仕留めてきます。四体の使い魔の中では戦闘力は低いですが、最も知性が高いと思われるので、油断は禁物です」
「ある意味では、一番厄介な使い魔だ。今のところ、明確な状態異常に対抗できる防衛策が見つかっていない。受けてしまった者を、迅速にヒーラーが治療に回るぐらい……かな」
「この四体の使い魔は、一体一体が特位級の魔物以上、総裁級悪魔と同等の戦闘力を保有しています。これらを同時に迎え討つとなると、我々は非常に不利な戦況となるでしょう」
「しかも、ダンジョン内は広い荒野になっていて、遮蔽物が少なく安全な場所が確保しにくい。こいつらの特殊攻撃を複合して喰らえば、ここにいる全員が一瞬で半壊するほどの威力だと想定している」
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