エクスプローラー・2
渋々と近くに座るモモカを、保護者のように見守ってから、天馬カケルは知り合いの顔を見つけると、颯爽と挨拶に向かう。その様子を、モモカが獣のような眼光で後ろから見送った。
そう、その知り合いとは《《あの幼馴染》のいる場所だったからだ。
「やぁ、アスカ。来てくれたんだね」
「おいっすー。まあ、古巣から頼まれちゃあね。決して、アンタの誘いだから来たわけじゃないんで。そこんとこ、よろしく」
「ふっ。そういうことに、しといておこう」
すると、二人の会話を横でコッソリと覗き見ていた俺と、彼の視線が合った。
「お……お久しぶりです」
「久しぶりだね、植村くん。キミの戦いっぷりは一度、近くで見てみたいと思ってたんだ。期待しているよ」
「は、はい!足を引っ張らないよう、頑張ります」
天馬先輩が『白銀の刃』の面々とも会釈を交わしていると、アスカのクラスメイトたちも会話に加わってきた。
「お嬢も、参加しとったんか!こりゃ、ハイクラスAの主力が勢揃いじゃのう!!がっはっは」
アロハシャツに、額にサングラスを掛けたバカンス気分満載の大男が高笑いを部屋に響かせる。
そんな彼に、アスカは笑みを浮かべて返した。
「ごっさんたちは、カケルと同じ班で行動すんの?」
牛久ダイゴ。通称“ごっさん”は、腕を組みながら爽やかに質問に答える。
「そうだ。今回のミッションチームは『エクスプローラー』の中でも若いメンバーで構成されとるんじゃ。経験を積ませる為だ……とか、言っとったのう」
「なるほど、そういうコンセプトね。あ、あと……一応、自己紹介してあげて。こっちの人たちとは、初対面っしょ?」
「良いだろう。ワシの名は、牛久ダイゴじゃ!お初にお目に掛かる!!ほれ、お前らも続かんか」
牛久さんは他のハイクラスAの面々にも、自己紹介を促す。体育会系の熱血お兄さんといった感じだ。
「僕の名前は、一角ツバサだ。植村くんは、棒倒しでファイトしたよね。覚えてるかい?」
「ああ!覚えてます。俺が、一瞬でコテンパンにされたやつ……はは」
「ははっ!ごめん、ごめん。けど、あの時は本気じゃなかっただろうからね……お互いに」
こっちも、手の内は見せてないぞとばかりに不敵に微笑むツバサくん。何か、試されてるようで怖い。
「……烏丸クロウ」
ボソッと自分の名前だけ呟いたのは、迷彩柄のパーカーを羽織った暗めの男子。
すかさず、青い長髪を後ろで一つに結んだ美青年がフォローを入れる。
「すまないね。クロウは、人見知りなんだ。私は、鳴海ソーマ。よろしく頼むよ」
ハイクラスというから、勝手にプライドの高い高圧的な性格を想像していたが、多少は変わった人がいるものの、みんな良い人そうで安心した。
やはり、固定観念はよろしくないな。
こちら側も、一人ずつ簡潔な自己紹介を済ませていると、いつの間にか周囲の助っ人たちも増えているように感じた。そろそろ、会議が始まりそうだ。
なんか、緊張してきた。先に用を済ませておこう。
「ちょっと、トイレ」
「行ってらっしゃーい」
みんなの会話の隙を縫って、会場の外に出る。
出たものの、中が広くて分からない。トイレ、どこだろう?
ちょうど良いところに、顔の下半分を白いマスクで覆った女の子が、静かに部屋の前で立っていた。
「あの〜」
「……は、はいっ!何でしょう!?」
「自分、ここに来るの初めてでして。トイレの場所とか、分かったりします?」
「え……ああ〜!ご案内しますよ、こっちです」
大人しそうな彼女は、わざわざ俺に先導してトイレまで案内してくれる。初々しい感じがしたけど、この子も助っ人の冒険者なのだろうか?
礼を言って、さっと中で用を済まし出て行くと、まだ先程の彼女が立って待っていた。
わざわざ、ちゃんと出来たか心配してくれたのか?いやいや、わしゃ幼稚園児か。
「あの……どうかしました?」
「あっ、すみません!私、一人で参加するのは初めてで……正直、心細くって」
「あぁ〜……良ければ、一緒に入ります?」
「よろしいんですか!?ありがとうございます!」
深々と礼儀正しく頭を下げてくる彼女。ソロ参加らしいが、会議室に入るのも怖がっているようで、大丈夫かな?
まぁ、あんなコワモテの冒険者たちが多くいれば、確かに怖いか。しかも、女の子だしな。
そんな二人で中に入ると、既に俺たちが最後だったようで、みんなの視線が集まる中、揃って一番後ろの席にちょこんと座る。
流れで一緒のチームみたいになってしまった。
アスカが遠くから、不可解そうな顔で俺を睨んでいる。ナンパした感じに、思われてそうで怖い。
「よし。これで、全員かな?それでは、作戦会議を始めよう」
全体を見回して、会議室にある大モニターの前に立ち、天馬さんがマイクで皆に話し始めた。
モニターには、五体の大型魔物のシルエットが映し出されている。
あれが、今回のダンジョンに現れる
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