LV3「ダンジョン・アイランド」・23

 四日目



 タイムリミットも、ちょうど折り返し地点を迎えた四日目の朝。寝床などはクラフト班の頑張りで、初日に比べると、かなり快適なものが出来ていた。


 しかし、食糧難は徐々に感じ始めてきている。

 当然、現実世界から持参していた食べ物は全て底をついていた。


 一クラス分の十分な食糧を島から調達してくることは、ほぼ不可能だ。何とか狩りの出来る生徒たちが魚や野生動物を捕まえてきて、それを均等に料理班が調理するといった感じで、飢えを凌いでいる状況だった。


 空腹は、身体能力にも影響を及ぼす。パフォーマンスが低下してしまう前に、早く島の謎を解いて攻略に乗り出したいところなのだが……。




「……来たか。喜べ、ビッグニュースだぞ」




 朝一で行っている、三浦が集めたローAの主力メンバーによるミーティング。俺が遅れて合流すると、待ってましたとばかりに悪友が声をかけてきた。




「ビッグニュース?何だよ」



「委員長が、ついに島の謎を解き明かしたようだ」



「えっ!マジで!?」





 期待を込めた眼差しを、その場にいた委員長に向けると、彼女は謙遜するように首を何回も横に振る。





「えっと、前も言ったけど……あくまで、可能性の高い解答を導き出したってだけで。それが、正しい答えかどうかの確証はないの。それだけは、覚えておいてね?」



「あぁ、うん!わかった。で、その……可能性の高い解答って?」



「島の地図を共有しながら、説明するね?それの方が、分かりやすいと思うから」




 そう言って、彼女は朝日奈さんが一日目に撮影した島の上空写真を、みんなから見えるよう宙に展開させる。そして、話を続けた。




「まず、これまでの調査で私たちが分かったことを、整理していくね。まずは、森の中は何も無かった……で、大丈夫かな?」




 委員長の問いに、一緒に森を調査した綾小路さんが腕を組みながら返事をする。




「大丈夫ですわ。そもそも、そんな簡単に見つかるようなら、とっくに見つけられてるはずですもの。先人の挑戦者たちに」



「そうだね。じゃあ、次は……周りを囲んでる海。ここは、どうだった?」




 委員長が森の部分にバツ印を指で描くと、タッチペンのように地図に記入される。

 そういえば、周囲の海も調べる必要があったのか。すっかり、頭から抜けていた。


 しかし、うちの参謀は手を回していたらしく。




「そっちも、うちの探索部隊が調査済みだ。簡易的なイカダを作成して沖へと出てみたが、途中で“見えない壁”にぶつかって、進めなくなったらしい」



「そう。つまり、海から脱出することも不可能。一応、海の中にも何かあるかもしれないけど、“見えない壁”のある海域までは海深が浅かったらしいから、あったとしても何らかのアイテムぐらいかな」




 今度は、海に三角マークを記入する委員長。

 いつの間に、イカダまで作って海に出てたんだ?


 やっぱり、ここは閉鎖された空間だったのか。

 まぁ、ともかく……これで残ったのは、例の山と二つの洞穴だけか。


 三浦も同じことを思ったらしく、彼女をかす。




「……で、肝心の山にある臓器のような物体の正体は?俺らは、それが知りたいんだ」



「それは……多分、だよ。この島のね」



「島の心臓……だと?この島は、生きているということか!?」



「うん。そして、多分……この島そのものが、秘宝の守護者。いわゆる、ボスなんだと思う」




 この島自体が、悪魔だってことか……さすがに、その発想は無かったな。言われてみれば、あの臓器も何かの心臓のようだった気もする。


 さすがに、驚いた様子の月森さんが会話に加わってきた。




「じゃあ……この島を倒せば、秘宝が出現してクリアできる?」



「私の【最適解】で導き出した解答では」



「でも、島を倒すって、どうすれば……あっ!心臓!?」



「そう。その心臓を攻撃するしか、倒す方法が思いつかない」




 黙って聞いていた霧隠くんも、ゆっくりと口を開く。




「なるほどな。が、自分たちが住んでる島のコアだとすれば、魔物連中が必死になって守るのも納得できる。だが、どうやって突撃する?」




 それなんだ。あの火口に入るには、また神坂さんの“光の足場”を使って行くしかない。しかし、一回に連れて行ける人数は限られている。何往復もすれば、さすがの彼女でも体力が尽きてしまうだろう。

 かといって、少人数で攻略できるほど心臓部の守りは甘くない。何とかして、ルートを確保したいところだが……。


 その答えは、委員長が提示してくれた。




「あのね。この島の形が小人に見えるって、誰かが言ってたこと……覚えてる?」



「ああ、言ってたような気がする……ん?もしかして、本当に体を表してたってこと!?」



「多分、そう。あの山のある場所は、ちょうどヒトの心臓部分。だから、推測できたの」



「なるほど……それなら!」



「うん。心臓部に中から侵入できるルートがあるはず。ここで、少し話が変わるんだけど。人体と置き換えられるんだとしたら、月森さんが発見してくれた二つの洞穴……それって多分、この島の鼻孔に当たる部位なんじゃないかな。位置的に見ても」








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