LV3「ダンジョン・アイランド」・17
三日目
「二つ並んだ
「中には、入ったりしました?」
「実は、私……暗いところと、狭いところが大の苦手なんデース!動物の巣穴か何かだと思って、スルーしてたかもしれまセンネ。ソーリー、ソーリー」
翌日、目的の山まで一緒に向かっていたアレックスさんに、昨夜の洞穴について聞いてみる。
ダンジョンって基本的に暗所や閉所が多いような気がするのだが、どちらも苦手って大丈夫なのか?
ともかく、中には入ったことがないらしい。動物の巣穴という可能性はあるが、調べてみる価値はありそうだ。
「デスガ、私が通った時は、そんな音は聞こえてなかったような気がシマース。不思議デスネ〜」
「アレックスさんが、その穴を見た時は何時ぐらいでした?」
「ン〜……正確には覚えてませんケド、日中だったコトは確かデース!」
と、なると……あの音は、夜中にしか鳴らないってことなのか?熊とかの寝息とか!?いや、あんなデカい音は立てないか。やはり、魔物なのかも。
すると、先頭を歩いていた三浦が急に足を止めて、こちらへ振り向くと。
「着いたぞ。この山だ」
目の前に現れたのは、ほぼ垂直に感じるほどの岩の壁。相当なロッククライミングの技術でも持ってない限り身一つでは到底、登りきることは不可能に思える傾斜であった。
「真近で見ると、えげつないな。こりゃ、確かに探索したくても出来ないわ」
「だが、神坂の【韋駄天】があれば、空中から光の階段を登って、上の様子を伺い知ることが出来る。頼んだぞ、二人とも」
結局、神坂さんの護衛役には俺が行くことになった。イップスの件があったので、最初は躊躇していたのだが、彼女から直々の指名が入って腹を
万が一の為に、二人の体をロープで結ぶ。長さには、ゆとりを持たせてあるので動きが制限されることはない。あくまで命綱的な役割だ。
「怪しい所がないか、見てくればいいんだよな?」
「ああ、そうだ。今日のところは、あくまで下調べ。上位種の
「わかった。なるべく戦闘は避けて、探索に専念するよ。安全第一でね」
敵から、やり過ごすスキルなら何個か【虚飾】で代替できる。こちらも、不安定な足場で神坂さんを守りながらの戦闘となると、十分に力が発揮できないかもしれない。なるべくなら、戦わないに越したことはないだろう。
命綱を結び終えると、アレックスさんが俺を呼び止めた。
「ユウト!チョット、イイデスカ?」
「はい!何でしょう?」
「イイですか?敵と対峙したら、どうやって倒すかだけを考えるのデス。雑念は、捨てなサイ」
「あ……は、はい!肝に銘じておきます!!」
アレックスさんも、俺のことを心配してくれていたのだろう。そうだな、余計なことは考えず、どうやって神坂さんを守れるかだけを頭に置こう。
「植村くん……それじゃ、行こう!」
彼女の手を握り、俺たちは光のステップを踏みしめながら空中を上に向かって歩いていく。
ここまで一緒に来てくれた三浦たちの姿が、段々と小さく見えていった。
「行ったか……あとは、あいつらを信じて、待つのみだ。俺たちは一度、拠点に帰ろう」
「ホワット!?レイジ!アレを見てくだサーイ!!」
「ん、どうし……た!?」
植村たちを見送って帰還しようとした時、アレックスの指差す方に視線を向けた三浦は、拠点の方からモクモクと煙が上がっているのを発見する。
「火事でしょうカ!?」
「いや、違う!あれは、朝日奈に俺が渡した発煙筒だ。もし、拠点に襲撃者が現れたら、天に向かって焚くように指示しておいたんだ!!」
「……ト、言うことハ!拠点が、襲撃されてイル!?」
「そうじゃないことを、祈りたいが……とにかく、急いで戻るぞ!今、拠点でまともに戦えるヤツは、月森と綾小路ぐらいしか残ってない!!」
慌てて、拠点へと駆け出す三浦たち。
一方、空の上の二人も、拠点の異変に気付いていた。
「あの煙……私たちの拠点の方だよ!どうしよう?戻った方が、いいかな!?」
「確かに、心配だけど……今からじゃ、行ったところで間に合わない。ここは、クラスメイトたちを信じて、俺たちは探索を続けよう」
「で、でも……!」
「大丈夫。月森さんの強さは、知ってるでしょ?それに、ああ見えて三浦もやる時はやってくれる男だ。きっと、何とかして助けてくれるはずだよ」
「う……うん、わかった。信じるよ、みんなのこと」
本当は、俺も戻って駆けつけたい気持ちはあったが、もし神坂さんに何かあったら、この山を調べる
俺たちは、俺たちのやるべきことに専念しよう。
頼んだぞ、レイジ。お前なら、何とかしてくれるだろ?
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