LV3「ダンジョン・アイランド」・13

「ウマイ!こんなに、まともな食事は久しぶりデース!!」




 俺たちの拠点に戻り、昨晩の残りカレーをアレックスさんに分け与えると、無我夢中に食らい始める。


 とりあえず、嘘は言ってなさそうだったので連れてきたわけだが、クラスメイトたちに説明する時は苦労した。見た目が、怪しすぎたからなぁ。




「アレックスさんは、どれぐらい前から、ここに?」



「ン〜、よく覚えていませんが、一年ぐらいは経つかもしれませんネ」



「一年!?な……なんで、リタイアしなかったんです?」




 死に戻りすれば、いつでも現実世界には戻れるはずだ。よほど、このダンジョンに執着する理由でもあるのだろうか?




「……単純に、私のプライドでーす。自分から、リタイアするのは納得がいきませんデシタ」



「プライド……ですか」



「ハイ、そうです。アナタたちは、どうしてココへ?他の場所にも、同じジャージを着た子供たちを見マシタ。何かの行事デスカ!?」



「行事……まぁ、そんなものです。冒険者を養成する学園の生徒なんです。俺たち。多分、他の場所にいた子供たちも」




 一応、林間学校の経緯を、簡単にアレックスさんへ説明する。それを聞くと、彼は驚いた表情を見せて。




「ゲートブレイク!?ココが……デスカ?」



「そうです。そろそろ、ゲートブレイクを控えてる危険指定のダンジョンになってます。ですから、早く攻略しないといけないんです」



「ナルホド。まさか……私が長居してる間に、そんな事態になっていたとは」




 空になったアレックスさんのカレー皿を、委員長が回収しに受け取ろうとすると、彼は感謝の気持ちを述べた。




「ホントに助かりマシタ!何か、お礼をさせてクダサイ!!何でも、やりマース!!!」



「いえいえ、そんな!困った時は、お互い様ですから……」



「何でも、言ってクダサーイ!私の気持ちが、おさまらないのデス!!」




 グイグイ来るアレックスさんの圧に、委員長が困ったように俺の方へ助けを求める視線を送ってきた。




「それなら……俺たちの、ダンジョン攻略に協力してくれませんか?」



「協力……デスカ?何をすれば、いいでショウ!?」



「その前に、あの……英語で話してもらっても、大丈夫ですよ?自動翻訳できるので」




 外国人にしては日本語が上手い方だが、母国語で話した方がアレックスさんも楽だろうし、コミュニケーションも取りやすくなるだろう。




「イイエ!私は、ニッポンの言葉が大好きなんデース。迷惑でなければ、このまま日本語を話させて欲しいデス。聞き取れませんカ?」



「あ、いえ!そういうことなら、そのままでいきましょう」




 日本を愛してくれてるんだな。だから、日本のダンジョンに挑戦してるのか?

 ともかく、日本語じゃなくて英語で話してくれ!とか、日本人として恥ずかしいことを言ってしまったかもしれない。




「一年間、ここにいて分かったことを提供してください。俺たちには期限が一週間しか与えられていないので、アレックスさんの経験は貴重な情報源なんです」



「分かったコト……何も分からないコトが、分かりまシタ!」



「はぇ?」




 なぜか、言ってやったぜ感でドヤるアレックスさん。何も、分かってないんかい!いや、だからこそ一年間も脱出できてないわけだもんな。


 そこへ、委員長も質問を続ける。




「この島については、全て調べられたんですか?」



「私の力で行ける場所は、全て探索しマシタ。ただ、この島の山だけは傾斜がきつすぎて、私の【登攀とうはん】スキルや装備では、調べることが出来ませんデシタ」



「つまり、何かあるとすれば……あとは、その山だけ。って、ことですね」



「そうなりマスネ。ですけど、あの山には強力な魔物クリーチャーがウヨウヨいるんデース。ちなみに、さっきのハイオークも山のふもとにいた奴なんデスヨ」




 きつい傾斜で、更にはハイオーク級の魔物クリーチャーが徘徊してる山……か。確かに、危険指数は高そうだが、何かありそうな気配もプンプンするな。どうにかして、調査する必要があるだろう。




「ありがとうございました。参考に、なりました」



「イエイエ。あまり、お役に立てず申し訳ナイ」



「アレックスさん。良ければ、俺たちと一緒に行動しませんか?」



「エッ!?」



「ここがゲートブレイクするまで、時間もありません。ソロで攻略するより、ここは協力するべきです。どうしても、秘宝を自分のものにしたいのなら、止めませんけど……」



「いえ!秘宝に、それほど興味はアリマセン。一緒に、協力シマショウ!!私も、助かりマース!!!」




 彼の経験は役に立つし、戦闘能力も高い。一人で徘徊させておけば、さっきのような危険に晒される可能性もあるし、共に行動した方がお互いの為になるだろう。


 でも、秘宝には興味がないのか。だとすると、経験を積むために、このダンジョンを攻略してる感じなのだろうか?何にせよ、アレックスさんを仲間に引き入れられたのは、他クラスより大きなアドバンテージを取れたのかもしれない。




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