LV3「ダンジョン・アイランド」・10
「さて。明日からの、方針だが……まずは、探索部隊の人数を増やす。効率は悪くなるが、また兄貴のミドルクラスが待ち伏せているかもしれんからな」
三浦の言葉に、神坂さんが反応する。
「まさか、三浦くんのお兄さんも
「兄貴自身は大したユニークスキルは、持っていない。簡単な幻を作り出せる程度のものだ。だが、綿密な情報収集力を見込まれて、ギルドにスカウトされるほどの冒険者となった。いわば、戦場のアナリストみたいな人間だな」
「
「おそらくな。だから、上泉に苦手意識を持っている敵をぶつけてきたんだ。敵に回すと、厄介な男だよ……我が兄ながらな」
マコトの名前を聞いて、一瞬だけスプーンを持っていた手が止まってしまう俺に、月森さんが優しく背中をさすってくれる。
そうだ。いつまでも、くよくよしているわけにはいかない。外で待っているであろうマコトの為にも。
「でも……確かに、本人には戦う力が無いのに、ミドルクラスの指揮を完全に
「どうだろうな。兄貴は独学で心理学も学んでいたからな。学生連中をコントロールすることぐらい、持ち前の人心掌握術をつかえば造作もないように思えるが」
さすがは兄弟。どことなくレイジに、似ているような気がする。強いて言えば、兄貴の方が冷徹に自らが勝つ方法を遂行しているであろうところが違う部分か。
「また、仕掛けてくるつもりかな?PK行為」
「可能性は、大いにある。だから、明日から探索部隊の人数を増やすんだ。その上で、入念に索敵しながら進んでいけば、甚大な被害に遭うリスクは下げられるだろう」
「そう……だな。俺なら、【隠密】スキルも使えるから、安全に索敵できると思うし」
「やる気になってるところ、水を差すようで悪いが。お前は、明日は留守番だ」
三浦も俺のことを心配してくれてるのだろうか?
とはいえ、少しは立ち直れたつもりだ。
「気を遣ってくれてるなら、大丈夫だぞ?」
「いいや。お前は、残るんだ。留守番だって、大事な仕事だぞ?奴らが、ローAの拠点まで奇襲を仕掛けてくることだって考えられる」
「そ、それは……そうかもだけど」
「お前は、ウチのクラスのエースだ。いざという時にはイヤでも働いてもらうつもりでいる。休める時に、しっかり休むこともエースの仕事と思っておけ」
周囲を見回すと、その場にいた女子たちも俺を見つめながら強く頷いてくれた。
ここまで言われたのなら仕方ない。明日は、大人しく留守番して、英気を養うことにしよう。
俺が納得した様子を見て、朝日奈さんが三浦に質問を投げかけた。
「それで、肝心の謎解きは?何か、収穫とかあった!?」
「いいや、全く。どのチームも、有益な情報を持ち帰ることは出来なかった。やはり、すぐに足を伸ばせるような場所には、ヒントは残されてないのかもしれん。朝日奈のドローンは、どうだ?」
「それが、上空からの映像は撮影できたんだけど、島近くの高度になるとノイズが走って、ドローンが機能しなくなるの。もしかしたら、電磁波みたいなものが流れているのかも」
「そうか。と、なると……ドローンでの探索も、不可能か。本当に、一週間で解明できるのか?一介の学生たる俺たちだけで」
糸口すら掴めない島の謎。そして、ミドルクラスの妨害。希望の見えない現状に、みんなが落ち込んでいると、神坂さんがパンパンと手を叩いて鼓舞してくれた。
「まだ、一日目だよ!?あきらめるのが、早いって!力を合わせれば、絶対に攻略できるよ!!がんばろ?みんな」
さすがは、一流のアスリート。メンタルも強い。
いや、速水さんとの対決を経て、更に強くなったのだろう。
その励ましに、もう一人のアスリートも反応を示す。
「そう、だね!ナオの言う通りだよ、まだ一日目だもん。ローAのみんな、凄い人ばっかりだし。協力すれば、絶対いける!!」
俺を挟んで、力強く目を合わせた親友同士はハイタッチを交わした。それを見て、朝日奈さんも「よし!やろーう!!」と勇ましく立ち上がる。
ウチのクラスの女性陣はハートが強い。
彼女たちと一緒なら、何とか乗り越えられそうだ。
俺は、三浦とふっと笑みを見せ合うと、再び気合を入れ直したのだった。
こうして、
初日から、色々と心が揺さぶられることが起きたが……もしかしたら、こういう経験を積ませる為に、このダンジョンに俺らを送り込んだのかもしれない。
だとするのなら、乗り越えなければならないだろう。一人前の冒険者になる為にも。
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