LV3「ダンジョン・アイランド」・7
「オラ、どうした!?かかってこいよ!腰抜けの仲間は、腰抜けしかいないのかよ!!」
自動回避で柳生の斬撃を躱し続ける植村は、その一言に反応すると、持っていた武器をブラスターから
【虚飾】が、【近接戦闘(刀剣)】rank100に代わりました
ギィン!!
無言で柳生の剣を弾いた彼の光刃は、漆黒に輝いていた。それは“慈愛の白”とは真逆の、“殺意の黒”。
(ぐっ!コイツ……!?)
到底、技とは呼べない単純な斬撃。
しかし、その鋭さと重さは達人の領域。
普段の植村が使う【近接戦闘(刀剣)】rank100は、深層心理で“相手を傷つけまい”とする無意識の力の制御が行われていたため、その真価を発揮できていなかった。
それが「怒り」によって
柳生ムネタカも幼少期より研鑽を積んでおり、そこらの剣士に比べれば遥かに優秀だ。
そんな彼でも、【近接戦闘(刀剣)】rank78。
その技術差は、実際の経験値を差し引いても大きいものであった。
ギン!ギン!!
凶暴なまでの圧力の剣で、ジリジリと柳生を押し込んでいく植村。防ぐので手一杯の彼は、思わず舎弟たちに助けを求める。
「何を、ボサッとしてやがる!さっさと、加勢しろォ!!」
「「「は、はい!!!」」」
柳生の一声で、一斉に植村へと斬りかかっていく三人の舎弟たち。それを察した彼は、まず前蹴りで柳生を突き飛ばす。
「うおおおおおっ!!」
一気呵成に襲いかかってくる男たちに一瞬、
そして、次々と消滅していく舎弟たち。
これが、植村にとって初めてのダンジョン内PKとなった。
(くそ、くそっ!何なんだよ、コイツは!?まるで、師匠と手合わせしてるような感覚……この俺が、手も足も出ないのか?そんなこと、あってたまるかよ!!)
自らを奮い立たせ、特攻を仕掛けていく柳生ムネタカ。大きく上段に愛刀を振りかぶるも、その隙を突いた植村が一瞬にして目の前まで足を運ぶと……。
ザンッ
「あ……れ……?」
柳生の視界が、グランと歪んでいく。
そして、気付く。
自分の身体が真っ二つにされているという事実に。
斬られたことすら感じないほどの一閃。
その瞬間、柳生は“死の恐怖”よりも、“植村ユウトへの恐怖”を強く感じて、ダンジョンから姿を消した。
しかし、仇を討ったはずの植村の表情は浮かないものだった。そして彼は、静かに光刃にこびりついた返り血を地面に払った。
その戦闘を一部始終、安全な所から観察していた三浦カズキは、自身の考えを改めていた。
(あれが、植村ユウト……高く見積もっていたつもりだったが、予想以上だった。あの柳生が、あっさりと倒されるとは)
改めて、周囲の戦況を見回すと、飛び道具を持っていた生徒たちも綾小路のパワープレイによって、全滅に近い状況にまで気絶させられている。
だが、三浦カズキも用心深い男だった。こういった不利になる状況も見越して、次の一手を控えていた。
「植村!綾小路!!退がれッ!!!」
すぐさま、前線の二人に呼びかけるレイジ。渋々だが、綾小路は呼びかけに応じた。しかし、植村には声が届いていないのか、微動だにしようとしない。
「…………」
「ユウト!しっりしろ!!敵が、来てるぞ!!!」
「……はっ!」
珍しく大声を張り上げたレイジの叫びで、ようやく我に返った植村は、慌てて後退しようと駆け出すが、増援部隊も武器を持って追いかけてくる。
「逃がすな!奴らは、
植村によって、すでに四人が
この襲撃を収穫あるものにする為にも、疲弊しているであろう植村たちは絶対に逃すわけにはいかなかった。
「数が多すぎますわ!逃げ切ることなんて、出来ますの!?」
「くっ……」
慌てる綾小路の質問に、レイジは黙って植村が来るのを待っていた。
そんな弟の姿を見て、兄が挑発する。
「戦いとは、常に始まる前から勝負は決している!より、多くの準備をした者が勝つんだよ。散々、教えてやったはずだぞ!?レイジ!!」
「ああ。兄貴が用意周到な性格なのは、よく知ってるさ。だが、身近な弟の情報については、更新不足だったようだな」
「……何を、言ってる?」
三浦レイジは、ポケットから不思議なベルを取り出すとチリン、チリンと二回鳴らした。
「地の底より現れ出でよ!亡者の軍勢!!」
彼の前に、地の底から湧き出てきたのは、大量の
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