LV3「ダンジョン・アイランド」・2

「ドローンを上空に飛ばして、この島の全体図が分かったよ。大体、こんな感じ!」



 彼女が画面共有で、上空から撮影したと思われる島の全景写真の画像を俺たちに見せてくれる。

 相変わらず色々と役に立つドローンだが、冷静に良い仕事を素早く遂行する朝日奈さんも、意外と出来るタイプなのかもしれない。


 それを覗き込んで、三浦が話し出す。



小人こびとみたいな形の島だな。中心部は、ほぼ森林地帯。あとは、小高い山があるぐらい……か」



 同じく画像を見ていた“上泉マコト”が、珍しく意見を発する。



「何か、設営してるような場所があるよ」



 マコトが指差した浜辺には、確かに何人かの人影と野営地のようなものが小さく写り込んでいた。

 それには朝日奈さんも気付いていたようで、説明を補足する。



「多分、それが他クラスの拠点だね。ちょうど、東西と南の浜辺に一つずつ見つけたもん。ちなみに、私たちが今いるのは北側ね」



「いい感じに、拠点が離れているのか。近いと、気も休まらんからな。他の連中も、なるべく敵対クラスとは距離を取ろうとしたのかもしれん」



「じゃあ、私たちは……ココに、拠点を作る?」



「それで、いいだろう。では各々、さっき言ったスキルを持つ者は名乗り出てきてくれ。それを元に、こちらで班を振り分けたいと思う」




 その呼びかけに、サバイバルスキルのある生徒たちが挙手しながら三浦に近寄っていく。

 そんな中、クラス一の問題児が大声を出して。




「ケッ!やってられるか。団体行動なんて、かったるい。俺は、一人で自由にやらせてもらうぜ!!」




 そう言って、彼は地面に置いていた自分のドサ袋を持って、ズカズカと森の中へと歩いて行ってしまう。




「待って、山田くん!一人じゃ、危ないよ!!」




 追いかけようとする委員長を、三浦が声を掛けて制した。




「放っておけ。不穏分子がいても、チームの輪が乱れるだけだ。アイツは、一人で好きにやらせておけばいい。やられたら、自業自得だろ」



「で、でも……」



「心配するな。一応、身体能力フィジカルだけなら、ローA最強クラスの男だ。心配しなくても、そう簡単に死にゃしないだろう」



「……う、うん」




 渋々、納得した様子の明智さん。相手が不良でも、ちゃんと心配してあげるのは彼女の優しさだろう。

 しかし、三浦の言ってることも一理ある。彼がいたら、みんなが萎縮して伸び伸びと出来なくなるかもしれない。難しいところだ。


 そして、三浦は淡々と申請してきた生徒を、適材適所の班へと振り分けていく。

 思ったより、サバイバルスキルを持っている生徒は多かった。こういうミッションがあるからか、冒険者はサブ的にそういう技能を学んでいるのかもしれない。





「よし。あらかた、振り分けが終わったな。残った人間は、探索班に回ってもらう。重要なのは、アンサーだが……この中で、ポジションについている者はいるか?」





 その質問に対して、手を挙げたのは……委員長ただ一人であった。




「えっ!私だけ!?」



「希少なポジションだからな。むしろ、一人でもいただけラッキーだ。しかし、委員長が“アンサー”だったとはな……ふむ、似合ってはいるか。それで、どういった系のスキル持ちだ?言いたくなければ、ざっくりとした説明だけでも頼む」



「別に言っても、大丈夫。私のユニーク【最適解】は、何かトラブルがあった時、解決する方法を頭で並行処理して最善となる方法を最速で導き出す……っていう、地味なやつなんだけど。役に立てそうかな?」




 つまり、頭の中で高速シミュレーションをして、トライ&エラーを繰り返し、最適となる答えとなるものを提示する感じだろうか?使いようによっては、化けそうなスキルだ。




「なら、“この島から脱出する最適解”も、すぐに導き出せるということか?それが可能なら、最速で攻略できるぞ」



「それは、無理。そもそも、“どうすれば脱出できるか?”が分からないから。“この島の謎”についての最適解というなら出来そうだけど、ヒントが少なすぎて、膨大な量の試行錯誤をしなくてはならなくなるから、それすら難しそう」



「なら……いくつかヒントを手に入れて、その量を減らすことが出来れば、最適解を導き出せるかもしれない。で、合ってるか?」



「う、うん。あんまり、こういうことに使ったことがないから、自信はないけど……いくつか、ヒントがあれば」




 彼女のスキルを聞いて、月森さんも感心しながら、意見を述べた。




「なら、やることは決まったね。私たちが島を探索して、謎を解くヒントを一つでも多く見つけてくる。それを材料にして委員長が、この島の謎についてを導き出せれば……!」



「一応、断っておくけど、私が導き出せるのは、可能性が高い解答ってだけで、それが必ずしも正しい答えとは限らない。結局は、私の持ってる知識や情報を元に試行錯誤トライアンドエラーを始めるから……」



「それだけでも、十分だよ。可能性を瞬時に厳選してくれるだけでも、かなりの時間短縮に繋がる。私たちには、一週間しか猶予が無いから」




 確かに、月森さんの言う通りだ。もちろん、俺たちでも謎解きは考えるが、今まで幾度となく冒険者たちが挑んできて失敗してきたミッションだ。正攻法では、攻略できない。

 明智さんのスキルが、間違いなく重要になってくるだろう。


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