大罪スキル

 俺のことも、調べられてる?そりゃあ、敵の計画を二回も阻止したら、警戒もされるか……けど、奴らの目的が謎だ。

 世界を再生させるとか言ってた気がするが、そもそも世界は壊れてなんかないし。


 そして、マモンと名乗った仮面の男は話を続ける。




「だが、安心しろ。この艦は、爆発しない……俺が、既にシステムを停止させた」



「えっ!そんなこと、本当に出来たのか?この空中戦艦は、黄河団長以外でも操作できる……って、ことか!?」



「確かに、オーバーテクノロジーの船だけあって、この船のセキュリティーは厳重だ。所有者以外では、簡単に中枢システムにハックすることすら、ままならない」



「なら……アンタは、どうやって!?」




 会話をしながらも、周辺を警戒するが敵の仲間と思われる存在は感知できなかった。一人で、乗り込んできたのだろうか?何かしらの転移系アーティファクトでも使って来たのかもしれない。




「俺のユニークスキル【強欲】には、他人の所有物を奪うことができるという特性がある。つまり、“黄河シオリ”から空中戦艦レギンレイヴのさ」



「他人の所有物を奪う……ユニークスキル?」



「もちろん、いくつか条件は必要だがな。それさえ満たすことが出来れば、如何いかなる人間の、如何なる物でも強引に俺のモノにすることができる。どうだ?素晴らしいスキルだろう」



「何だよ、それ……チートだろ」




 それが超希少な宝石だろうと、それが強力な秘宝アーティファクトであろうと、自分の物にしてしまえるってことだろ?それなりに、厳しい条件は必要なんだろうけど……それを差し引いても、余りあるメリットのユニークスキルだ。




「ふっ、よく言う。お前も、俺と同等……いや、それ以上のチートスキルを持っているはずだぞ。植村ユウト」



「……!?」



「何の役にも立たんようなゴミスキルが、ある条件を満たすことで進化する転生スキル……と呼ばれるを、お前も所有しているだろう」



「大罪……スキル?」




 奴の言ってることは、当たっている。俺の【虚飾】は、【妄想】がrank100に到達したことで進化したユニークスキルだ。もしかして、奴の【強欲】も進化したスキルということなのだろうか?





「“七つの大罪”の名を冠した、強力なユニークシリーズのことだ。俺たち、七人だけの特権だと思っていたが……まさか、が存在していたとはな」



「…………」




 実際、気になって調べたことがある。


 俺の【虚飾】は、“七つの大罪”の前、元となった八つの罪の中に含まれていた、いわばである。

 もしかしたらと思ってはいたが、本当に他の“大罪の名を持つスキル”も存在していたとは。


 しかも、どれもが俺と同じような進化を遂げたものならば、全てがチート級の性能を有しているのかもしれない。そんな奴らが七人も所属してるとなると、相当に厄介な組織ということになる。




「まあ、いい。実はルシファーから、お前と遭遇しても手は出すなと忠告されていてな。それは、いずれ……我らが同胞として、迎えることになるかもしれん存在だからだ。植村ユウト」



「俺を、俺たちを……どうするつもりだ!?」



「我らがアジトに連れ帰ってもいいが、まだ時期尚早だろう。かといって……ここに、ずっと居座られても邪魔だ。特別に、脱出艇まで運んでやる」



「た……助けてくれるって、いうのか?お前たちの計画を、潰した相手だぞ!?」




 いくら俺が、同じ“大罪スキル”を所持している同胞とはいえ、ここまで敵に塩を送ってくれるものなのか?




「勘違いしてるようだが“黄河シオリの暴走”は、我々からすれば単なるオマケに過ぎん。本当の目的は、この空中戦艦レギンレイヴを手に入れること……つまり、我々の計画は成功しているのさ。すでに、な」



空中戦艦レギンレイヴを手に入れることが……真の目的?」



「正確に言えば、“船”というより“召喚器”としての空中戦艦コイツに価値がある。並行世界から、無限に自動人形オートマタを呼び出せる機構……更に改良できれば、世界を支配できるほどの機械軍団を造り出すことも夢ではなくなるだろう」



「なっ!?」




 こいつらの目的は、世界征服?“万魔殿パンデモニウム”は、国際級のテロリスト集団ってことなのか!?

 そんな奴らが、もし自動人形オートマタ軍団を大量生産して、自由に扱うことが出来たら?

 それこそ、人間と機械の戦争が始まるぞ。




「さて、どうする?今、俺を止める為に、戦いを挑むか!?“手を出すな”とは言われたが、そっちから“手を出してきた”なら、話は別だ。こちらも、相応な防衛手段を取らせてもらう」




 戦って止めたい……ところだが、こっちには手負いのテンがいる。それに、敵の情報が少なすぎる。

 しかも、こっちは“七層盾姫ブリュンヒルデ”を破るために、大技は出し尽くしてしまっていた。




「お……俺たちを、脱出艇に送ってくれ」

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