謎の男
「ユウト!これ、サンキュ!!」
テンから、
『爆発まで、あと10分です』
「ダッシュ!ダッシュ!!時間ないよ!?」
テンの声に押されるように、全員が急いで拠点へと走り出す。蓮見さんを抱えてる二人は大変そうだったが、10分間あれば何とか間に合いそうな距離ではあった。
しかし、中間地点ぐらいまで来たところで、俺は気付く。とっくに抜かれててもおかしくないはずの彼女の姿が見えないことに。
気になって振り向くと、そこには誰もいなかった。いつからだ?もしかして、最初から!?
「副団長!テンにトラブルがあったかもしれません。俺が、確認に戻ります!!」
「えっ!?で……ですが、もう爆発まで時間が!」
「拠点に着いたら、先に転送を開始してください!
俺たちは、別の脱出方法を探します!!」
「わ……わかりました。ご武運を!」
苦渋の決断を下してくれた副団長との通信を切って、俺が来た道を引き返すと、次にナギから通信が掛かってきた。
「ユウト、お願い……テンを、助けて」
「……わかった。任せてくれ!」
親友の危機なのだ。ナギも気が気ではないだろう。とはいえ、別の脱出方法なんて、本当にあるのかどうかは不安ではあった。
そして、艦長室まで戻ってくると、テンがポツンと体育座りで座っていた。よく見ると、彼女の右脚は負傷しているようだった。きっと、終わり間際に飛び込んできた“
それを悟らせない為に、わざと俺たちを焦らせて先に行かせたのだ。
「テン!」
「ちょ……戻ってくんな!今なら、まだ間に合うよ。みんなのところへ、戻って!!」
「今更、戻れるわけないだろ!何で怪我したこと、言わなかったんだよ!?」
「お荷物になりたくなかったの!今は、立つことも無理っぽいし……私を抱えてたら、脱出できなくなると思ったんだよ!!」
彼女のそばまで来ると、確かに思ったより彼女の脚は重傷のようだった。
時間が無い。俺は急ぎ、動けないテンを背中に背負おうとすると、まだ抵抗心があるようで。
「いいってば!置いてってよ。ユウトだけなら、まだ拠点まで間に合うでしょ!!」
「嫌だね!置いていくもんか。絶対に、一人にはさせないからな!!」
「……!」
俺の強い口調に、ようやく観念してくれたのか、大人しくなってくれた彼女を背負うことが出来た。
だが、問題はここからだ。
【虚飾】が、【ナビゲート】rank100に代わりました
脱出艇は、あったとしても拠点を設置した
「パラシュートの場所まで、
この周辺には見つかりませんでした。再検索してください
ダメか。緊急避難用に常備してあると思ってたんだが、どうする?考えろ、考えろ……。
『爆発まで、あと3分です』
艦内が危機感を煽るように、赤い照明に変わる。
さすがに俺も焦りを隠せなくなってきた。
「三分以内に行ける脱出艇の場所まで、
脱出艇は検知できましたが、三分以内には辿り着けません。条件を再設定してください
やっぱり、脱出艇があるのはカタパルトだけか。
他に、脱出できそうなものはないか!?
すると、背中のテンが珍しく弱気な声で謝ってくる。
「……ごめんね、ユウト。私のせいで……本当に、ごめん」
「困った時は、助け合うのが仲間だろ?それに、まだ終わったわけじゃない。必ず、脱出できる方法があるはずだ!俺を、信じろ!!」
「……うん」
正直、虚勢を張っていた。だって、最後の会話が謝罪だなんて寂しすぎる。
神様がいるのなら、どうかテンだけは助けて欲しい。俺は、前世で一生涯は生き抜いている。
でも、この子はまだ十数年しか生きてないんだ。何とかして、救ってあげたい。
俺が他人の為に、ここまでの気持ちになるなんて前世から考えたら、思ってもみない心境の変化だった。それだけ、友人と呼べるような存在が出来ていたということだろう。
それだけでも、俺の二度目の人生は有意義なものだったと言える。だから、せめて
「まだ、残ってるのがいると思えば……まさか、お前とはな。植村ユウト、逃げ遅れたのか?」
「だ、誰だ!?」
そこに現れたのは神ではなく、フードを被ったパーカー姿の男だった。奇妙な仮面を被っており、顔は見えない。
「俺の名は、マモン。世界を再生させるもの……『
「『
「ふっ。黒岩ムサシに続いて、またしてもお前に邪魔されることになるとはな。これも、因果というヤツか」
やはり、そうだ。黒岩さんも、黄河さんもコイツらによって洗脳されていたんだ。聞きたいことは、山ほどあるが……今は、そんな時間の猶予は無い。
「もうじき、この船は自爆する!アンタが何者かは知らないが、命が惜しかったら、さっさと脱出しろ!!」
「冒険者も、しょせんは人間だよなぁ。このような大きな災害が相手では、どうすることもできない。スーパーマンじゃないってことだ」
「何を言ってる?もう、三分も無いんだぞ!?早く、行け!」
「この状況で、敵の心配とは……とことん、お人好しな奴だ。ま。だからこそ、多くの人間がお前に惹かれていくのかもしれないな」
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