空中戦艦(艦長室)
自動で扉が開くと、そこはまるで城の玉座のような一室だった。広い空間の先で、派手な椅子に座る団長“黄河シオリ”の姿があった。
彼女の趣向なのか、荘厳なクラシックがBGMのように、部屋の中で流されている。
「来たわね。ほぼ無傷で、ここまで来るとは……さすがは、私の集めた精鋭たち」
真っ白なドレスを着て、優雅にグラスに注いだ赤ワインを一口含む団長は、まるで焦りの様子が見えなかった。
そんな彼女を一喝するように、蓮見が叫ぶ。
「ウイルスも回収済みだ。もう、計画は実行できない!大人しく、あきらめるんだね!!」
「あんなモノ……時間さえあれば、いつでも私が生成できるわ。あなたたちを排除したあと、ゆっくりと。ね」
「ほう。あくまで、私たちと戦いたいってわけかい。洗脳されて、随分と好戦的な性格に変わったじゃないか。アンタ」
くいっとワインを飲み干すと、彼女は玉座の隣に置いていた“蜂の巣”のような鋼の球体を手に取り、静かに
「お行きなさい……“
まるで、“蜂の巣”から飛び出すハチのように、一つ一つのピースが小型ドローンに変形すると、女王に仕える兵隊の如く、空中に隊列を形成させる。
その光景に、双剣を構えながら、“安東イブキ”は息を呑んだ。
「こうして、目の当たりにすると、めっちゃ多いッスね。いけそうですか?蓮見さん」
「誰に、モノを言ってるんだい。アンタこそ、足を引っ張るんじゃないよ?」
「はーい。がんばりま〜す……っと、その前に。どうも、クラシックとか聞いてると、リズムが崩れるんだよなぁ」
首にかけてたヘッドホンを耳につけ、お気に入りのバンドサウンドを大音量で流し始める安東。そんな、いつもの彼女の様子を見て、蓮見はふっと笑顔を見せた。実力を認めているからこそ、真面目にやれなどという野暮なことは言わないのだ。
一応、脳内で音楽を再生させることも出来るのだが、彼女はヘッドホンで聞く音質が好きだった。
「あらあら、気が早いのね。こちらの手札は、まだ全部じゃないわよ?」
パチン!と団長が指を鳴らすと、金色の
くる。
重騎士のようなアーマーに、左手には巨大な盾、右手には小振りなハンマーを携えた最後の
『私の名は、スクルド。母を守る者。主の
「ちっ。しっかりと、
そして、“黄河シオリ”は最後に、首のペンダントに軽くキスをすると……。
「……咲け、“
一枚一枚、
「行くよ!イブキ!!」
「うっす!!」
オーラ・アーマーを纏って、突撃していく蓮見。手首に巻いていた赤いスカーフが、ドローン軍団を誘い込む。
「
ドローンから放たれる無数の
後方では、リズムに乗った“安東イブキ”が、蝶のように舞いながら、ドローンを打ち落としている。
その周辺では、二つの剣が発する炎と氷が綺麗なコントラストを描いていた。
そんな二人が戦闘を開始したのを見計らって、朝日奈レイは自身が所持する三体のドローン『デルタ・ワスプ』を起動させる。
「アルファ、ベータ、ガンマ!敵の司令塔を、見つけ出して!!」
司令塔を見つけ出せなければ、そもそも“
『シールド・バッシュ!!』
「面白いねぇ!私と、力比べしようってのかい!?」
物凄い推進力で突進してきたスクルドを、真正面から受け止め、力尽くで食い止めてしまう蓮見。
オーラ・アーマーには、守備力だけでなく彼女のパワーも増加させる効果があった。
『……シールド・キャノン』
ズドンッ!!!
すると、スクルドは盾を彼女の胴体に密着させると、その盾から大砲の筒を出現させて、零距離で砲撃を繰り出す。
「……効かないねぇ。私に傷をつけたきゃ、ミサイルの一つでも持って来な」
凄まじい装甲。超至近距離で放たれた大砲ですら、彼女は無傷で耐えきってみせると……。
「
ドゴオッ!!
強烈なオーラの拳でスクルドを吹き飛ばすと、すぐさま大剣を振りかぶってジャンプする蓮見の狙いは、敵への追撃。
あわや、
黄河シオリが、ゆっくりと口を開いた。
「
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