空中戦艦(第一艦橋)

一網打尽オール・アット・ワンス!!」



 ゴウッ!!



 もう何度目の戦闘か。


 いくつかのエリアに足を踏み入れるたびに、待ち受けていたオートマタの軍勢を、彼女たちは疲弊しながらも、そのことごとくを退けていた。



“蓮見エリザ”が横薙ぎに振るった大剣が、闘気の衝撃波を巻き起こし、目の前にいたオートマタたちを文字通り、一網打尽いちもうだじんにしていく。



 ガシャーン!!



 その横を、大足級ビッグフット兵士級ポーン盾型タンクを踏み潰しながら、進行する。なぜ、敵同士で潰し合っているのか?


 それは、朝日奈レイのユニークスキル【魔術師ウィザード】の能力だった。


 あらゆる機械に干渉し、侵食ハックする力。


 彼女は、大足級ビッグフットのシステムを掌握し、自分の手駒に変えてみせたのだ。

 ハッキングして動かせるのは一機までだったが、戦力としては十分だった。



 バババババババッ!



 頭部からはバルカン砲、そして両脚の踏みつけで小兵たちを蹂躙していく朝日奈の操り人形。

 例え、破壊されたとしても、代わりの大足級はいくらでもいる。



 その二人が大体の敵を倒し、残党はのご馳走だった。




「七星剣術・一つ星、“貪狼ドゥーべ”……五連撃!『ポラリス』!!」




 ズバババババ!!!




“双剣”のイブキが、右手に持つは赤い直剣『炎剣スルト』、左手に持つは青い直剣『氷剣スカジ』。

 共に、レベル3の秘宝アーティファクトである、その剣を交互に“貪狼ドゥーべ”を放ちながら、敵陣を斬り裂いていく。


 その際に『炎剣スルト』は、斬った敵たちを炎で燃やし、『氷剣スカジ』は、斬った敵たちを氷で凍結させるという、それぞれの付与効果によるオマケ付きだ。


 あらゆる技を複合させて、オリジナルのムーブとすコンボ攻撃。双剣で放たれる、彼女の連続技はスピードもバリエーションも段違いだ。




 バシュ!バシュ!!




 そして最後方に、副団長・黒宮ユウカが錬金兵装である光線銃レイガンを使って、回復役ヒーラーである“雲雀ヒナノ”と、オートマタを遠隔操作中の“朝日奈レイ”を守っていた。


 彼女の【罰則】は、艦内全ての広さには適応できず、かつ機械相手には効果は無かったようで、こうして護身程度に習っていた射撃で応戦している。


 それでも、彼女のところまで辿り着いてくるオートマタは数少なく、それだけ前衛を張っているが、ほとんどの敵を殲滅しているということなのだろう。




「よし。ここも、片付いたみたいだね」



「本当に、ご苦労様です。いよいよ、次の扉の先が団長の生体反応があった部屋です。最後の準備を、整えて下さい」




 多少は傷を負っていた蓮見に近寄って、雲雀が回復を施してゆく。


 彼女のユニークスキル【修復】は、正確には治療ではなく、触れたものの時間を巻き戻す能力。

 つまり、元通りの状態に復元することだった。

 触れた一部分、しかも外傷にしか効果は無かったが、それでも十分に奇跡の力と呼べるものである。




「ありがとうよ、ヒナノ。さぁて、いよいよ最終局面か……アタシたちの騒ぎっぷりを聞いて、団長も手薬煉てぐすねを引きながら、待ち構えてることだろうからねぇ」



「ウイルス回収部隊の方は、上手くやってるんですかね?」




 赤と青の双剣を背中の鞘へと収納しながら、安東が尋ねると、代わりに副団長が答えた。




「連絡が無いということは、順調なのでしょう。異常があったら、一報が届くはずですから」



「それって、全滅してて連絡が無いパターンも……いや、ないっスね。すみません」




 自分で言って、縁起が悪いと感じたのか、すぐに前言撤回する安東。


 比較的、戦闘経験の浅い者たちが多いウイルス回収班だったが、よくよく考えてみれば、そんなヤワな連中ではないのは、自分もよく理解していた。




「では、改めて。段取りを、確認しましょう。朝日奈さん、確認しますが……本当に、大丈夫なんですね?」



「はい!おそらくですが、“騎兵槍姫ゲイルスコグル”のような自律型ドローン集団の場合、司令塔となる一機が全機を統制する必要があるんです。蜂で例えるなら、いわゆる女王蜂みたいなヤツが」



「その一機を、ハッキングできれば……全てのドローンが、機能を停止する」



「ただし、長くて数分間が限界です。あれだけの高性能AIとなると、自身に異常を検知した時点で、強制リセットを掛けてしまうんです」



「なるほど。つまり、動きを止められる時間は、その再起動が終了するまでの数分間だけ……と、いうことですね?」




 力強く頷いてみせる朝日奈。彼女自身が提案した、この作戦は“騎兵槍姫ゲイルスコグル”、しいては“七層盾姫ブリュンヒルデ”攻略においても、重要な鍵となるものだった。




「数分間もありゃ、十分さ。その間に、バリア破壊役の三人が、団長との距離を詰め……各自の持つ大技で、“七層盾姫ブリュンヒルデ”を叩き割る!それで、良いんだろ?」



「はい、そうです。しかし、司令塔のドローンを発見するのにも、ある程度の時間が必要なので……その間は力を温存しつつ、朝日奈さんを“騎兵槍姫ゲイルスコグル”から護衛していかなければなりません」



「心得た!お嬢ちゃん、安心しな。アタシたちが、しっかりアンタを守ってやるからね」




 そんな蓮見のイケメンっぷりに、ムフーッと鼻息を荒くした朝日奈が、元気良く「ハイッ!!」と返事をした。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る