空中戦艦(カタパルト)
転送は成功した。
到着したのは、戦艦内部と思われる発射台のような場所だった。小型の航空機も何機かあるので、それ用のカタパルトなのだろう。搭載機も積んでいるとは。
「無事に、成功したようですね。では……ここを、とりあえずの拠点としましょう」
そう言って、副団長は大きめなテントぐらいの光ドームを展開させる。これが、簡易的な拠点となるわけか。
「あれも、
隣にいたナギを見て俺が尋ねると、まだ彼女と手を繋いでいたことに気付いて、慌てて離す。
その様子を見てクスッと笑うと、何事も無かったかのように答えてくれた。
「あれは、ただの文明の力。“インスタント・ドーム”っていう最新鋭の軍用テント。中は温度調節されてるし、壁はシールド仕様で安心安全」
「あぁ、そうなんだ。てっきり、秘宝か何かだと思ってた」
こうして考えると、科学技術もレベル1の秘宝に迫るレベルぐらいには、上がっているということなのかもしれない。
ブーッ!ブーッ!!
『艦内ニ、侵入者ノ熱源ヲ感知シマシタ。セキュリティーシステムヲ作動シマス』
赤く点滅するライトと共に、館内に警告音が鳴り響いた。早速、俺たちの侵入が勘付かれてしまったようだ。
「これより、部隊を二つに分けます。早めに別ルートに別れて、オートマタの戦力を分散させましょう!団長部隊は、私の後をついてきて下さい!!」
そうして、副団長を先頭にして団長捜索部隊の面々が先にカタパルトを抜け出していく。
それを見て、ライアン先生が俺の肩を掴んで言った。
「こっちも、行きましょう。ユウト、ウイルスの位置を特定して?」
「あっ、了解です!」
【虚飾】が、【ナビゲート】rank100に代わりました
「この戦艦内にあるナノウイルスのある場所まで、案内してくれ」
目標を発見しました。ナビを開始します
「ヒットしました!こっちです。行きましょう!!」
表示された矢印を追って、俺が先導を切る。
副団長が向かった扉とは、別の扉を指していた。きっと、団長がいるエリアとは別の場所に保管されているのだろう。
「ユウトが、ナノウイルスの場所を検知したみたい。どうやら、ここからは別行動みたいねん。幸運を祈ってるわ、副団長」
通話機能で、副団長と連絡を取っているであろうライアン先生の声が後ろから聞こえた。こうやって、互いに状況を報告しあう段取りのようだ。
それを横目に、我らウイルス回収部隊のリーダーが、感心しながら俺に話しかけてくる。
「すっご〜。ホントに、ナビできるんだ。失敗したこととか、ないの?」
「はい!これまでのところは、失敗したことはないですね。ただ、あまりに情報が少なかったり、範囲が広かったりすると、そもそも検知が出来ないことはあります」
「ほうほう。なるほど〜……それでも、便利だけどね。十分」
閉まっていた扉の前にやって来ると、人感センサーが働いて、自動で開いてくれる。ロックが掛かってなくて助かった。戦艦の扉なんて、どうやって開けていいか分からないからな。
「随分、あっさりと開いたと思ったら……ちゃっかり、お出迎えされてたってことね」
ライアン先生が、扉が開いた先に待ち構えていたオートマタ軍団を目にして、ぼやいた。
先程の警告音で集まったのか。それにしても、思った以上に数が多い。
「全員、戦闘準備を。私が先陣を突っ込むから、ライアンとユウトくんは一緒に前線の
「「了解!!」」
さっきまで、ふにゃふにゃしていた剣持さんが急にキリッと指示を飛ばす。本番では、人が変わるタイプなのか。かっこいい。
敵陣の構成は最前線に
「……着装!」
真っ先に敵陣へと駆け出し、剣を鞘から抜き出しつつ、手首のブレスレットを起動させ、『アイギスメイル』を装着していく剣持さん。
青色の『マタドール・スカーフ』が首に巻かれ、まるで王道ヒーローのマフラーのように棚引いている。
「“戦い”の
ゴウウウウッ!!!
加速しながら、敵陣の先頭に『アダマントソード』を勢いよく横薙ぎに振り払うと、その凄まじい風圧が着弾した
「ユウト!アタシたちも続くわよん!!アタシは左、アナタは右よ。いい?」
「了解です!!」
中央部のオートマタを根こそぎ刈り取った剣持さんの左右に分かれて、俺とライアン先生が敵陣へと突っ込んでいく。
ジャキン!
チラリと左側に行った先生の姿を見ると、ハイテクそうなブーツを両脚に装着していた。その足首の後ろから、湾曲した仕込み刃が飛び出す。
「アウーシバータ!!」
ぐるっと縦回転しながら、
多目的戦闘用ロングブーツ『FANG』。それが、巻島ライアンが団長から譲り受けた錬金兵装だった。
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