緊急招集

「首都浄化計画」まで、あと2日




 ビーッ!ビーッ!!




 突如、耳をつんざくような警報音で目が覚める朝。

 今日は、午前から剣持さんの個人レッスンがあるが、その目覚ましアラームが鳴ったのか?


 いや、こんなボリュームには設定していなかったはず。今の音は、明らかに頭の外側から聞こえてきた。




 ドン!ドン!ドン!




「ユウト、起きてる!?緊急招集エマージェンシー・コールだよ!今すぐ、作戦会議室に集合だって!!」




 ドアを叩く音と共に、扉の向こう側からテンの声が響く。何か、緊急事態が起きたということなのか?

 わけは分からなかったが、急いだ方が良さそうだ。




「わ……わかった!準備して、すぐに行く!!」




 あまり目覚めは良くない方だったが、とりあえず最低限の準備だけ済ませて、作戦会議室へ向かうことにした。





 急ぎ、目的の場所に到着すると、そこには既に主要なメンバーたちが集まっていた。どうやら、俺が最後だったようだ。




「全員、集まったようですね。朝から、お騒がせして申し訳ありませんでした。皆さん」




 みんな、起きたてであろうラフな格好でいる中、一人だけカッチリとした服装を着た副団長が、いつものように壇上に立って、会議室に座っている面々に話し始めた。


 その落ち着いた様子とは対照的に、蓮見さんが切迫した様子で尋ねる。




「そんなことより、何の警報だったんだい!?もしかして、団長に関することかい?」



「……そうです。今朝、首都上空に大型の航空機の存在が迫っているとの情報が入ってきました」



「まさか……空中戦艦レギンレイヴ!?」



「大きさから推定して、恐らくは。そうだと考えて良いでしょう」




 ざわつき出すメンバーたちの中、すぐに手を挙げてテンが発言権を得ると。




「待ってください!でも、どうやって、空中戦艦レギンレイヴの位置を割り出したんですか!?確か、光学迷彩ステルスで姿を消していたんじゃ……」



空中戦艦レギンレイヴの位置を割り出したわけでは、ありません。正確には、首都上空に大型レーダーを張っておいて、あらゆる航空機の存在を監視していたんです。もしものために」




 そうか。全ての空を探知するのは時間も労力も必要となるが、目的地が首都上空と決まっているのなら、初めからで網を仕掛けておけば良いというわけか。

 そして、思ったよりも早くに目的が現れた。


 続けて、ライアン先生も質問をぶつける。




「それが、空中戦艦レギンレイヴだとして、首都上空に現れた目的は?」



「それなんです。首都上空は我々以外の機関からのセキュリティーも多く張り巡らされています。なるべくならば、作戦ギリギリまでは安全な空域で息を潜めていたいはず」



「作戦の準備が整った……思った以上に、ウイルスが早く完成したってこと!?」




 そこへ、ナギも自分の見解を述べる。




「罠……という、可能性はありませんか?私たちを、おびき出すための」



「その可能性も、少なからずあるでしょう。団長が、こちらに十分な準備を整えさせないように、ウイルスが未完成の状態で、わざと首都上空に姿を現した。彼女なら『ヴァルキュリア』が、首都全域をカバーできるだけの航空管制レーダーを所持してることは、当たり前に知ってるでしょうから」



「わざと、存在を感知させて、準備不足の私たちを迎え討つ……だとしたら、気にしなくても良いのでは?」




 大きな欠伸あくびをしながら、ようやく目が覚めてきたような剣持さんが話に割って入る。




「でも、もう私たちは行くしかない。もし、ウイルスが完成していたら?罠だとしても、を作り出したんだよ。団長は」




 なるほど。ここで、手をこまねいて、もしも完成していたウイルスが散布されたら……そこで、全てが水の泡となってしまう。




「剣持さんの言う通りです。例え罠だとしても、もう私たちは行くしかなくなりました。作戦決行を本日、十時ヒトマルマルマルに変更。総員、戦闘服に着替えて、装備を整えた後に中庭へ再集合して下さい。揃ったところで、空中戦艦レギンレイヴへの転移を開始します」



「「「了解!!!」」」




 みんなが一斉に返事をした後、颯爽と席を立ち、各自の部屋へと帰って行く。統率された行動力だが、もう少し初心者に優しくしてほしい。俺は行きかけたテンを呼び止める。




「テン!戦闘服って、何!?」



「ああ!『ヴァルキュリア』が開発した特殊素材の服でね、防弾や防刃加工が施されてるの。確か、客室にも用意されてるはずだよ。一緒に、見てあげる!!」



「あ、ああ……ありがと!」




 俺の手を引っ張って、一緒に客室へと向かってくれるテン。意外と、平然としている様子だ。


 大規模作戦、しかも予定が早まって、俺は結構な焦りを感じているのだが、さすがは冒険者の先輩である。色々な経験を積んできているのだろう。




「待ってー!私も、連れてってぇ〜!!」




 あ、初心者枠は朝日奈さんもいたんだった。


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