合同演習・2

金城鉄壁ゴールデン・キャッスル!!」




 テンの順番が終わり、次に名乗り出たのは蓮見さんだった。彼女が叫ぶと、その名の通り金色の光が鎧のように全身を包み込む。


 それは、チャクラ・アーマーの上位互換、オーラ・アーマーと呼ばれる“闘気の鎧”であった。




 そこへ、周囲を取り囲んだドローンによる光線銃レイガンの一斉射撃が襲いかかる。



 キンキンキンキン!!!



 だが、オーラ・アーマーは全ての光線を跳ね返す。




「ぬぅん!!」




 そして、持っていた大剣を勢いよく一回転させると、強烈な風圧と共に周囲のドローン軍団を薙ぎ払ってみせた。




 やっぱり、テストでは本気を出していなかったんだ。あの時、この鎧を使われていたら、結果は変わっていたかもしれない。




「お見事です。できれば、もう一人……盾役がいると、助かるんですが」




 副団長の言葉に、真っ先に反応してみせたのは“剣持アイリ”さんだった。




「この中で、耐えられそうな手段を持ってるのは……私ぐらいかな。やっとく?」



「はい、助かります。アイリさん」



「はいよ〜」




 軽いノリで、蓮見さんからバトンタッチを貰うと、おもむろに手首に付けていた白いブレスレットの紋章エンブレムを指で押し……。




「着装!」




 すると、今度は純白の騎士甲冑が、彼女の全身を包み込む。まるで、幻獣・グリフォンを想起させるようなスタイリッシュなフォルム。

 さながら、ヒーローが変身でもしたように一瞬で姿を変えるのも含めて、かっこいい。厨二心をくすぐられる。


 思わず口を開けて、その様子に見入っていた俺に、ふっと笑いながら、お馴染みのナギの説明が入った。




「あれは、剣持さんが所有しているレベル3の秘宝アーティファクト・『アイギスメイル』。物理攻撃への耐性はもちろんのこと、あらゆる属性攻撃の耐性も兼ね備えてる。なら、間違いなく最強クラスの鎧だよ」



「防御力だけ……鎧なら、それで十分なんじゃないの?」



「その代わりに、とんでもない重量なの。アレ。着れば間違いなく、いかなるダメージも遮断できるけど、一切の動きを封じられてしまう」




 なるほど、呪いの鎧ってわけか。だから、そんなに凄い鎧でもレベル3に位置してるんだな。じゃあ、剣持さんは、盾役タンク専門ということなのだろうか?


 そう思っていると、すぐにナギが話を続けた。




「……ただし、剣持さんが使った場合のみ、『アイギスメイル』の短所は長所へと変わる」



「……え?」




 次の瞬間、純白の甲冑を纏った女騎士は、これまた重量感のありそうな十字の剣を使って、目にも止まらぬスピードでドローン軍団を叩っ斬っていく。


 テンも速かったが、彼女のスピードも同等……いや。下手すれば、ありそうな気さえした。


 驚くべきは、あの重い鎧と剣を持っている状態で、あの速さを体現していることだった。その、カラクリはナギがすぐに説明してくれた。





「あれが、剣持さんのユニークスキル【重速じゅうそく】。“重さ”を“速さ”に、変換する能力」



「“重さ”を、“速さ”に……つまり、鎧や剣の重量を、速度に変換させたってこと!?」



「そう……しかし、相手には“重さ”は、そのまま伝わる。つまり、今の剣持さんは凄まじいスピードで、重量級の武器を振り回してるってこと」




 マジかよ。そりゃ、強いわけだ。しかも、鉄壁の装甲を着たままだ。攻守速、全てをカバーしてるじゃないか。




『オーラ・アーマー』の蓮見エリザ、『アイギスメイル』の剣持アイリか……『ヴァルキュリア』のツートップ、堅すぎるだろ。




「よし。まぁ、こんなところかな」




 団長より授かった錬金兵装、並行世界で最重量を誇る未知の合金“アダマンタイト”で全てを構成された十字剣『アダマントソード』を鞘に納めると、再びブレスレットの紋章エンブレムを押して、剣持アイリは着装を解除した。




「決まりですね。では、三人には……この、秘宝を授けます。『マタドール・スカーフ』です」




 そう言って、副団長は“赤のスカーフ”を蓮見さんに、“青のスカーフ”を剣持さん、“緑のスカーフ”をテンに渡していく。


 最後に受け取ったテンが、副団長に尋ねた。




「これって、確か……ヘイトを集める秘宝アーティファクトでしたよね?」



「ええ、そうです。これを身に付けている者は、敵からの標的ターゲットにされやすくなります。全てとはいきませんが、これで大体の敵の攻撃が御三方に集中するようになるでしょう」



「この色には、何か意味が?」



「僅かではありますが、“赤”は“攻撃力”。“青”は“敏捷性”。“緑”は“防御力”が上昇します。ですが、気持ち程度の上昇値なので、メインは標的タゲを取ることにあります」




 三人には負担が掛かるが、これで俺たちにまわってくるドローンが減ってくれるのなら、ありがたい。

 さすがに、千機のドローンから集中砲火を浴びれば、自動回避も意味は為さないからな。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る