作戦会議・2
「空中戦艦のあった格納庫に忍び込んだ際に、透明化させた偵察用ドローンを内部に
そう。彼女は、団長に声をかけられる直前、咄嗟にその行動を遂行していた。会話を長引かせたのも、ドローンの存在を気取られない為にという理由からだ。
副団長・黒宮ユウカは、優秀な頭脳だけでなく、豪胆な度胸も持ち合わせていたのだった。
「そのドローンは、今も中に?」
「いえ。すでに、敵艦のセキュリティーに発見されて、破壊されています。しかし、必要最低限の情報は転送済みです。セーブピンも極小サイズの物なので、あの広い戦艦内部で見つかることは、まず無いと考えて良いでしょう」
「なるほど。それなら……転送は、上手くいきそうですね」
「はい。仮にピンが発見された場合の
俺がした質問にも、素早く簡潔に答えてくれた。なるほど、序列は三位なのに彼女が副団長を務めている理由が、なんとなく分かった気がした。
そんな、黒宮さんが作戦概要の説明を続ける。
「無事に全員が転送できたら、その場に簡易シェルターを展開して、一時的な拠点とします。作戦途中で重傷者が出てしまった場合などは、そこに避難させて治療を施します。今回の任務はダンジョンでは、ありません。命に関わる怪我を負った場合は、決して無理をせず、各自が
「そうしたいところだけどねぇ。少数精鋭での作戦だし、一人の脱落でも大きな戦力ダウンに繋がりかねない。オマケに、回復役まで取られるとなると……残ったメンバーは、かなりキツくなるんじゃない?ユウカちゃん」
「ライアンさんの言うことも、その通りだと思います。ですが、私は……この中から、誰一人として戦死者は出したくないんです。理想論かも、しれません。私は後方支援が主な仕事だからか、最前線で戦う皆さんの気持ちが分からないところがあるので」
「そんなことないわ。私だって、その気持ちは同じよ。だから、回復役に負担をかけないように、最低限の治療キットを用意しとくのがベストかもね。動けるとこまではヒナノが回復させて、あとは自分で応急処置をさせるの。どうかしら?」
「うん、良いですね。その案を、採用させていただきます。確か、下位の回復系アーティファクトが、『ヴァルキュリア』の宝物庫にあったはず。いくつか見繕って、持っていきましょう」
さすが、新人の指導員もしていただけあって、ちゃんとした大人だ。ライアン先生は。
見た目とのギャップが、エグいけど。
「肝心の作戦ですが、今回は部隊を二つに分けたいと思っています。一つは、ナノウイルスを発見して、回収する部隊。一つは、団長を探し出して、確保する部隊です」
「良いと思うけど。その二つの居場所は、判明してるの?」
「いえ、そこまでは。ただ、団長の居場所は特定できます。私が、フレンド登録しているので、朝日奈さんがその経路を
「えっ!朝日奈ちゃん、そんなことできるの!?」
剣持さんが驚きの表情で見てくると、まんざらでもなさそうな顔で朝日奈さんが答える。
「ハイッ、できます!私のユニークスキル【
説明、途中で面倒くさくなったんだな……こんなに、堂々と自分のユニークスキルを白状する人も、初めて見たし。
てか、そんなに凄い能力を持ってたのか。確かにダンジョンでは、機械なんて滅多に出てこないし、使う場面が無かったのかもしれないけど。
「ですが、問題はウイルスの方です。団長と同じ場所にあると、部隊も分けなくて済むのですが……厳重に保管されているかもしれない。なるべくなら、先に回収しておきたいところです。何か、案のある方はいらっしゃいませんか?」
そうか。仮に団長を追い詰めれたところで、ウイルスをバラ撒かれたら、そこで一巻の終わりだもんな。何か、捜索系のアーティファクトとか、都合よくないものなのだろうか?
ん、待てよ……あったな。都合よく。
「あの……俺の【ナビゲート】を使えば、分かるかもしれません。ウイルスのある場所」
「【ナビゲート】……その基本スキルは、道案内などに使われるものでは?探し物に使う利用法なんて、聞いたことありませんが」
やっぱ、俺の【ナビゲート】って異質なんだ。俺のというよりは、“rank100”の【ナビゲート】となると、異常な効果を発揮するってところか。ただ、説明が難しいんだよなぁ……。
「ユウトの言ってること、ホントですよ!この前も、その【ナビゲート】を使って、ゲートの場所を特定してたし!ね!?」
おお、墓場ダンジョンの時か!そういえば、朝日奈さんも一緒にいたっけ。ナイスフォローだ。
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