蓮見エリザ・1
「やる気になったのかい?女の前で格好つけたいだけだったら、やめときな。こいつらと同じ末路を辿ることになるよ」
周囲に倒れていた挑戦者たちを親指で指して、不敵に微笑む“蓮見エリザ”。救急隊と思われる団員たちが、慌ててリタイアした挑戦者を持ち運んでは、部屋の端で介抱している。
白で統一された壁に、花や絵画など清廉なイメージの中で行われているのは、地獄のようなテストであった。
「納得する一撃を与えることが出来れば、合格……で、良いんですよね?」
「ああ。武器の使用は、自由。相手を殺さない程度なら、何でもアリだ……けど、ボウヤは気にしなくていい。殺す気でかかってきな、私は死なないからね」
「わ……わかりました」
全く、相手にされてない感じだな。それもそうか、こっちの肩書きは“養成所に通う見習い冒険者”なのだから。だが、舐められてるからこそ、つけいる隙もあるってことだ。
【虚飾】が、【近接戦闘(刀剣)】rank100に代わりました
俺がスキルを発動して、所持していた
「へぇ……珍しい武器を、持ってるじゃないか。けど、そんな貧弱な刃で、私の大剣を受け止められるかい!?」
そう言いながら大剣を振りかぶって、俺に向かって
ギィン!!
咄嗟に、光刃で敵が振ってきた大剣を受け止めるも、間近で見ると薄ら金色の膜で覆われていた“その一撃”に「抑えきれない」と感じた俺は、即座に【跳躍】rank100を発動させると、後方へとジャンプをして威力を軽減させた。
あの金色の膜……チャクラか?大剣に、“気”を纏わせているのか。あのまま受け止めていたら、光刃ごと俺の身体が潰されていたかもしれない。
向こうも、殺す気満々じゃないか!こっちは、来て早々に戦わされてるっていうのに。
しかし、警戒を強めたのは植村だけでなく、向こうも同じであった。
(大抵の奴は、まず私の【威圧】で動けなくなる。なのに、その一撃を受け止め、瞬時に後ろに飛んで威力を逃す……か。伊達に、三人から推薦されてるだけのことはあるってわけかい)
蓮見エリザの放った初撃は、“黒岩ムサシ”の得意とする『不可避の一撃』と酷似していた。高い【威圧】スキルで、敵を硬直させて必中の一撃を叩き込む。実際に、床に転がっていた挑戦者たちも、それに葬り去られていた。
しかし、通常時の黒岩が放つ『不可避の一撃』も通用しなかった植村に、彼女の【威圧】は効果を発揮しなかったのだ。
「七星剣術・一つ星……
接近戦は分が悪い……なら、中距離戦でアドバンテージを取る!
「“
ズドンッ!!
そう言って、彼女は金色に輝いた大剣を振り下ろすと、俺の放った衝撃波を断ち切って、霧散させた。
やはり、相手も“
【虚飾】が、【投擲】rank100に代わりました
ブンッと猛スピードで俺が投射した
真の目的は、距離を詰めることにあったのだから。
【虚飾】が、【近接戦闘(格闘)】rank100に代わりました
縮地の歩法で、一気に接近距離まで近寄っていく俺に、彼女は投擲を防いだ大剣をグルンと持ち替え、横薙ぎの斬撃を放ってくる。
それをスライディング気味に回避しつつ、相手の
「!?」
まるで、鎧の上にパンチを打ったような感覚。
彼女の肉体には、大剣と同じように薄らと金色の“
蓮見エリザのユニークスキル【闘気】は、自身のチャクラを増大させ、様々な形へと変容させる能力。
剣に纏えば、その斬れ味が増し、身体に纏えば、最軽量で頑強な鎧となるのだ。
「
持っていた大剣を彼女が放り投げると、その重量で近くの床に突き刺さる。そして、空いた右手を強く握り込むと、そのままパンチを俺に向かって突き出してきた。
ゾクゾクッと背筋が凍り、俺の身体は瞬時に大きく横へと飛んでいた。自動【回避】が発動したのだろうが、ここまで大きな動きをしないと避けられないと判断されたのかもしれない。
「
ゴウッ!!!
その真っ直ぐなストレートから、更に巨大な光の拳が放出されると俺の横を過ぎ去って、後方から大きな衝撃音が響く。振り向くと、その壁はくっきりと拳の形に
見た目通り、強化系のユニーク持ちか?それにしても、威力がエグすぎる。
だが、どうする!?通常の打撃では、彼女のチャクラ・アーマーにダメージを与えることは難しい。
何か、攻略法を考えなければ……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます