交換条件・2
アスカもお母さんの病を治す為に、秘宝を探していたはずだ。念の為、確認を取ってみる。
「この秘宝って、アスカのお母さんには効かなそうかな?」
彼女に『ダンジョン・サーチ』の画面を共有させて、詳細を見てもらう。
「う〜ん……レベル2だから、私の探してるものじゃないかな。多分、これは外傷全般にのみ効く低ランクの回復薬だと思う。それでも、十分に凄いけどね」
「そっか。アスカの探してる秘宝は、もっと高レベル帯にあるんだ?」
「おそらくね。それこそ、不治の病と言われてるものまで取り除いてしまうような霊薬は、少なくともレベル4以上……かな」
ある意味、ホッとしたような残念なような。神坂さんの足と、アスカのお母さんの病を、天秤にはかけたくなかったからな。
「一応、そのダンジョンは明後日から出現する予定なんだけど……どう思う?」
「レベル2のバトルミッションってことだから、私とユウトがいれば問題は無いとは思うけど、イレギュラーな事態も想定するなら、確実に攻略する為に、あと2〜3人は欲しいところかも」
「あと2〜3人か……誰を、誘おうか?」
「せっかくだし、この人たちに協力してもらお」
そう言って彼女は、割り箸箱から新しく一膳を引き抜くと、それを何も無い宙に向かってポーンと放り投げた。すると……。
コンッ
何かに当たったように、投げた割り箸が弾き飛ぶと、その何も無かった空間に丸い機体が出現した。それは、俺も見覚えのあるフォルムだった。
「朝日奈さんの、ドローン……!?」
そのドローンから、操作してるであろう彼女の声が響く。そんな機能もあるのか。
『あちゃ〜……バレちゃったみたい。どうする?レイジ』
『馬鹿ッ!名前を呼ぶな、バレるだろ!?』
『もう、バレてるよ。ほら』
朝日奈が指差す方向に三浦が目をやると、ニコニコした七海がこちらへ向かって優雅に手を振ってるのが見えた。観念した二人は席を立って、自首を決意したのだった。そう、犯人たちは同じ食堂、しかもすぐ近くのテーブルにいた。
「ドローンを、
俺が、感心したようにアスカに尋ねると、彼女がネタバラシをしてくれる。
「風の流れが、あそこだけ変だったから、おかしいと思ったんだよね。八卦風神掌を習ってたのが、役に立ったのかも」
「八卦風神掌?」
「
「へぇ……古来からの武術も、ちゃんと進歩してるんだなぁ」
「良かったら、紹介してあげようか?せっかく、良い先生からタダで学べるチャンスがあるんだから、色々と学んでおいた方がいいよ。あんまり、手をつけすぎてもアレだけど。2〜3個くらい、掛け持つぐらいがベストかも」
「なるほど……わかった。考えてみる」
七星剣術の訓練も慣れてきたし、そろそろ一個ぐらいは増やしてもいいのかもしれないな。アスカがいるなら安心感もあるし、習ってみようか。
そんなことを考えていると、盗撮犯たちがフランクな感じで俺らのテーブルまでやって来た。ちゃっかり、ランチのトレイまで持ってきて、同席するつもり満々である。
「えっと……ごめんなさいっ!!」
おもむろにトレイをテーブルに置くと、両手を合わせて謝罪してくる朝日奈さん。
「とりあえず、どういう理由かだけ教えてくれるかな?」
「えっと〜……ユウトが、めっちゃ美少女と一緒にランチしてるから、どんな関係なのか探ってみよう!って、レイジが」
急に売り渡されて、隣にいた三浦がシンジラレナイ!といったリアクションを見せている。まあ、タレコミがなくても、コイツが黒幕だろうとは思っていたが。
「仕方ない、せめてもの罪滅ぼしだ。そのダンジョン攻略、我々も手を貸してやろうじゃないか」
「ちゃっかり、会話も聞いてるし!まず、謝罪せいよ。お前は、ホントに」
悪友に説教している俺を、アスカが
「まぁまぁ、話が早くて良いじゃん。ちなみに、二人のポジションは?」
「俺は、アンサー。朝日奈は、サポーターだ」
「アンサーと、サポーターか。どっちも、バトルミッション向きじゃないなぁ……」
「安心しろ。俺には戦略家としての知識もあるし、朝日奈のドローンは偵察だけでなく、戦闘補助も可能な
それは、アスカも一緒だったようで。
「そこまで言うなら、良いよ。アテにしてあげる。ちなみに、報酬は無いけど大丈夫?」
「大丈夫だ。本物のダンジョンを経験できるのは、それだけで貴重だからな。朝比奈は?」
「おもしろそうだから、それだけでよし!」
はやっ!かるっ!!
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