LV2「試験迷宮クノッソス」・15
「ウソ……公爵級を、たった一撃で!?」
ダンジョン・メーカーのモニターから、一部始終を見守っていた
そんな彼女へ、まるで自分の手柄のように勝ち誇った顔で本田スエキチが声をかける。
「ふぉっふぉっふぉ!どうじゃ?やって、正解だったじゃろ!?ブネを召喚しとらんかったら、この逸材の存在に気付けんかったかもしれんぞ」
「えぇ、まあ……そうですね。“チャクラ”は一定以上まで練り上げると、“オーラ”へと変化して目に見えるほどのエネルギー体となり、視覚化されるんです。我々、教師陣の中でも、その領域まで扱えるのは
「ほう。そういえば、去年の天馬カケルも獅子の形をした波動で
「はい、そうです。彼の創り出した竜型のオーラも、天馬くんの“それ”と匹敵するほどの……いや、単純な威力だけでいえば、それ以上かも」
いまだ、驚いたままの聖教諭を放っておいて、本田スエキチは杖に付いているマイクの部分で、ダンジョン内へアナウンスを始めた。
『あっぱれ、見事じゃ!ボーナスチャンスを成功させた“月森小隊”には、特別報酬として20万ハスタを贈呈しよう。それでは……これにて、実力テストを終了とする!!』
ブンッ
本田先生のアナウンスと共に、一瞬にして『試験迷宮クノッソス』は消失した。残された俺たちのダメージは、全回復している。これが、ダンジョン・メーカーの能力なのか。
ロークラスAの面々が、何もない多目的ホールで再び一同に会する。こうして、実力テストは幕を閉じたのだった。
・最終成績
第一位 六文銭(霧隠シノブ班)
最終フロア到達
ハーゲンティ撃破→報酬 10万ハスタ
第二位 月森小隊(月森ヒカル班)
最終フロア到達
ブネ撃破→ボーナス報酬 20万ハスタ
第三位 少年少女探検団(明智ハルカ班)
第二フロア到達
第四位 ペリドット(綾小路レイカ班)
第一フロア脱落
ミミックの罠によって、リタイア
第五位 天上天下唯我独尊(山田ジュウゾウ班)
第一フロア脱落
謎解きが難航して、タイムオーバー
聖先生によって、各順位が発表されていくと、霧隠くんが不満げに苦言を呈した。
「ちょっと、待ってくださいよ!いくら、ボーナスステージをクリアできたからって……一位の俺たちより二位の報酬が上なんて、納得できません!!」
その言葉に反論したのは、聖先生ではなく本田先生の方だった。
「ブネは、ハーゲンティよりも格上のクリーチャーじゃ。それを撃破したんじゃから、順当な報酬だと思うぞ。おぬしが、そのチャンスを譲り渡したんじゃろ?」
「そ、そうですけど……でも!」
「確かに、おぬしは優秀じゃ。卑怯な戦術かもしれんが、ルールの範囲内で見事に敵対チームを出し抜いたのじゃからな。しかし、実際のダンジョンでは常に他のギルドが攻略しているとは限らん。いざという時には、やはり自分たちの手で困難を切り開いていかなければならん時があるんじゃよ」
「くっ……自分は、やるだけのことはやったんだ!他の奴が、もっと使えれば、俺だって!!」
仲間たちをギロリと見ながら、そう吐き捨てる霧隠くんに、黙っていた聖先生が怒気を含んだ口調で釘を刺した。
「確かに、あなたは軍師としては優秀でした。しかし、小隊のリーダーとしては0点です。厳しい言い方ですけれど」
「なっ!?なぜです?」
「リタイアするなら、仲間たちに危害が及ぶ前にするのがベストの判断でした。しかし、あなたは自分の身に危機が迫るまで、その判断を下さなかった。しかも、苦しんでいる仲間を助けようともしない。使えなかったのではない、あなたに仲間の力を引き出す度量が無かったのです。そんなことも、分かりませんか?」
「……っ!!」
何かを言い返したくて仕方ないような表情の霧隠くんだったが、相手が教師ということもあってか、唇を噛み締めて怒りを抑えているようだ。
それを見て、俺も少しだけ胸につかえていた溜飲が下がった気がした。
「すみません、少し言い過ぎてしまいました。いくら、再生可能のダンジョンとはいえ、人の命を軽んじては欲しくなかったのです。頭の良い貴方なら、今は理解できなくとも、いつか分かってくれると信じていますよ。霧隠くん」
「…………」
いつもの優しい口調に戻って
アメとムチの使い方が絶妙だ。もしかしたら、聖先生って意外と優秀な教師だったりするのかもしれない。
結局、トップ通過は叶わなかったが、報酬の額だけでいえば一番の稼ぎをあげることが出来た。試合に負けて、勝負に勝ったというところか。とりあえずは、良しとしておこう。
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