ルール

「まず、生徒の皆さんは一つだけアイテムの所持が許可されています。秘宝でも、武器でも、機械でも両手に収まるサイズの物ならば、基本的に制限はありません。その代わりに投擲武器とうてきぶきなどのサブ武器ウェポンは所持できませんので、気を付けて下さいね〜」



 まるでバスガイドさんのように爽やかな笑顔で、物騒な言葉をつらつらと発しているひじり先生が、実力テストのルールを説明してくれている。


 俺の手持ち武器は光剣クラウ・ソラスだけなので、問題は無いだろう。




「準備が出来たら、各小隊ごとに別々の入り口から、同時にダンジョンの中へと入ってもらいます。ゴール地点までの距離は、どこからも平等になってるはずなので、ご心配には及びません」




 順番にクリアタイムを競うわけじゃなくて、リアルタイムで競争させるわけか。姐さんがライバルチームに気を付けろと言ってたのは、これが理由なのかもしれないな。




「もし、別の小隊クランと遭遇してしまった場合、妨害行為をすることも可能です。私としては、クリーンに競い合って欲しいのですが、実際のダンジョンでも他ギルドとの戦闘は存在しますので、許可は下りてます」




 先生の言葉に、腕っぷしに自信のありそうな生徒が何人か嬉しそうに笑っている。早くも、やる気満々といった感じだ。


 なるべく、生徒間の戦闘は避けたいところである。




「最終的に、いち早くゴール地点にいる大型クリーチャーを撃破できた小隊クランがMVPとなり、そのチームには褒賞として、10万ハスタが贈呈されまーす!」




「おぉ〜っ!!」と生徒たちから歓声が上がる。

 小隊メンバーで均等に割っても、一万ちょいか。島内でしか使えないとはいえ、学生の身分からしたら大金だ。




「ダンジョン内の様子は、さっきの秘宝の鏡で監視することが出来るので、ルール違反は厳禁ですからね〜」




 モニター機能まで兼ね備えていたのか、あの鏡。

 ますます、トレーニングアイテムとして優秀だな。




「例え、MVPにはならなくとも、各生徒の皆さんのダンジョン内での活躍は、しっかりとチェックして、報告させていただきますので、手は抜かないように!」




 なるほどね。個人でも活躍すれば、後にクラスアップとかあるのかな?まぁ、無くても頑張るけど。





「簡単なルールは、こんなものですかね。他に、何か質問のある人はいますか〜?」




 ちょっと考える素振そぶりを見せて、委員長が質問をした。




「あの……何か緊急事態が起きた時、途中棄権とかって、出来るんでしょうか?」



「良い質問ですね!できますよ〜。本物のダンジョンですと、無理なんですけどね。この疑似ぎじダンジョンでは、小隊のリーダーがリタイア宣言してくれれば、その場で外に転送させてあげることが出来ちゃいます」



「出来るんですね、了解です。ちなみに、何かペナルティとかは……?」



「いいえ、特にはありません。本物のダンジョンのように、記憶が消されるということも無いですしね。もし、“解けない謎解き”や“勝てない強敵”に降参となったら、リタイアするのも勇気ある決断といえるでしょう。他に、質問のある人は?」




 全員が、反応を起こさないのを確認して、聖先生はうなずきながら続けた。




「無いようですので、これから実力テストに移ります。各小隊は、それぞれ一つの扉の前に一隊ずつ位置に着いてください。入口の扉は、ダンジョン外周に等間隔に五つ取り付けられているはずですので」




 ざわつきながら、それぞれの小隊が集結して、先ほど生成されたダンジョンへと武器やアイテムを手に向かって行く。


 いよいよ、実力テストが始まるのだ。




「いよいよだな」




 声を掛けてきた悪友に、ふとした疑問をぶつける。




「そういえば、お前は何を持って行くんだ?アイテム」



「俺か?俺の武器は、基本的になんだが……一応、護身用にコレを持って行く」




 そう言って、彼が取り出したのは何やらゴッツイ銃のようなものであった。




「拳銃……か!?」



「違う、テーザーガンだ。簡単に言えば、遠距離射撃用のスタンガンみたいなものだな。前世の頃より、遥かに進化しているが」



「あぁ、何か聞いたことあるかも!てか……お前、スタンガン好きだよなぁ」




 一緒にゲートを探しに行った時も、スタンガンを持ってドヤってたような気がする。まぁ、あの時よりは安全そうだけど……そういや、コイツのユニークスキルって何なんだろう?そのうち、分かるか。


 余談だが、俺は学園生活において、なるべく【鑑定】スキルの使用は控えていた。何となく、卑怯な気がして公平フェアじゃないと思ったからだ。


 あまりにスキル代替が優秀で、情報が分かりすぎてしまうというのも考えものなのだ。




「植村くん!三浦くん!行くよー!!」




 月森小隊のリーダーの呼び掛けに、俺たちは目を合わせて駆け寄って行く。


 

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