ダンジョン・メーカー
それから、徐々に学園生活のサイクルにも慣れてきた俺たちは、いよいよ実力テスト当日を迎えた。
この中に、試験用のダンジョンが造られているのだろうか?
しかし、先生が大きな扉を開くと、そこには……何も、なかった。ただただ広い空間が存在するのみだった。
早速、山田くんが不機嫌そうに大声で発言する。
「んだよ。何も、ねーじゃねえか!どういうことだよ!?」
もしかして、AR技術を利用した
「ふぉっふぉっふぉ。焦るな、焦るな。すぐに、造ってやるから、待っておれ」
急に生徒たちの背後から響いた老人の声に、何人かが本気で驚いて振り向くと、そこにいたのは季節外れのアロハシャツを着たファンキーな
「
「この杖は、レベル5の
レベル5の秘宝だったのかよ!しかも、ダンジョンメーカーって、まさか……?
本田先生は、何やら鏡を指でなぞり始めた。
よく見ると、タッチパネルのように何かを操作しているようだ。魔法の杖のようなものかと思ってたら、機械の杖なのか。秘宝というのは、奥が深い。
「この杖の中には、過去に我々人類が攻略したダンジョン全てのデータが保管されておってな。その中から好きなように組み合わせて、カスタマイズした擬似ダンジョンを実際に生み出せてしまう!と、いう
自慢げに語るお爺さんの言葉に、ザワつく生徒たち。それも、そうだ。さすが、レベル5だけあって、スケールが違う秘宝のようだ。
ここでも、ずけずけと質問をぶつけていくのは山田くんだ。ある意味では、頼もしい。
「ダンジョンを造るだと?マジで、言ってんのかよ。ジジイ」
「マジじゃよ、小僧。ただし、いくつか条件はある。まずは、相応の
なるほど。だから、この何も無い多目的ホールというわけか。このダンジョンメーカーを見越して、設計したんだろうか?
「そして、造り出したダンジョンは24時間で消失してしまう。つまり、一日限定というわけじゃ」
次に質問をぶつけたのは綾小路さんだ。やはり、このローA・二大巨頭は先陣を切っていく。
「それは、
「無理じゃな。コイツが再現できるのは、ダンジョンの構造やトラップ、出現するクリーチャーのみじゃ。完全なる練習用ダンジョンってヤツじゃ。龍宝財団もギルドの訓練施設として、この秘宝を使用しとったらしいからの」
「あら、残念。ですが……それでも、十分に使える秘宝ですわね。さすがは、レベル5」
「今回、おぬしらに挑んでもらうのはレベル2を想定した複合型ダンジョン……名付けて、『試験迷宮クノッソス』じゃ!」
ゴゴゴゴゴゴ……!!
操作を終えて、彼が杖を天高く
「す、すごい……」
大人しいマコトですら、思わず感嘆の声が出てしまうほどに、それは圧巻な光景だった。
立派な建造物を、瞬く間に創造してしまったのだ。誰でも、そうなってしまうだろう。
完成したところで、担任の
「この中に、一歩でも足を踏み入れれば、そこは実際のゲートの中と同じです。怪我を負ったり、死に直面してリタイアすることがあっても、完全回復して入口に戻れます。なので、皆さんは勇気を持って、進軍してくださいね!」
いやいやいや。いくら完全回復するといっても、実際に痛みなんかは感じるわけだし、そう単純に思い切った行動が出来るわけでもないんだよなぁ。
そんな先生に、質問した三番目の生徒はウチのクラスの学級委員長・明智ハルカさんだった。
「あの、先生!攻略する班の順番とかは、あるんでしょうか?」
「いいえ。このダンジョンには、全小隊が一斉に攻略を開始してもらいます」
「い、一斉に……ですか!?」
「はい、そうです。では、そこら辺を含めて、今回の実力テストの簡単なルールを、説明していきましょうか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます