上泉マコト・1
「驚いたぜ。まさか、
彼の名は、
“お坊ちゃん”という呼び方に敬意は無く、
「ひ……久しぶり。みんなも、冒険者を目指してたんだね」
精一杯、
彼らは全て、同じ道場の門下生出身であり、影では上泉に嫌がらせを重ねていた、いわゆる“いじめっ子グループ”という奴らであった。
「当たり前だろ。こんな時代に古臭い剣術を習ってるのも、ダンジョンで
彼の言葉を聞いて、くすくすと笑う取り巻きたち。彼らは、いわゆる柳生ムネタカの子分的な存在であった。
「う、うん。でも、やっぱり、あきらめきれなくて……お父さんも、冒険者だったから」
「ふん。天国の親父さんも、今頃は
「そ、そうかもね……はは」
「けっ、相変わらずイラつく野郎だぜ。言い返すことも、出来ないのかよ!」
ドンッ!と、上泉の肩を突き飛ばして、校舎裏の壁にぶつけるムネタカ。一番弟子の息子が、その師範の息子に
「い、痛いよ……」
「わざと、痛がらせてんだよ。馬鹿なのか!?おい、今日から少なくとも三年間は、俺のパシリに決定だからな。また、痛い目に遭いたくないだろ?」
「そ、そんな……」
「何だよ、文句あんのか?」
凄みを効かせた彼の眼光と、後ろに控えている子分連中の圧に屈して、なくなく上泉が首を縦に振ろうとした、その時だった。
目標に到着しました。ナビを終了します
「いた!上泉くーん!!」
呑気な呼び声に、上泉含む全員が声の方に振り向くと、植村ユウトが手を振りながら、こちらへと駆け寄ってくるではないか。
彼の【ナビゲート】rank100は、捜索対象が人間であっても知り合いであれば、それは効力を発揮する。だからこそ、短時間で上泉が
「なんだ、アイツは?お前の、友達か!?」
「ち、違う!ただの、ルームメイトだよ。それだけ!!」
柳生ムネタカという人物を良く知っていた上泉は、友達と認めてしまえば、彼にも危害が及んでしまうと考えて、心にも無い嘘をついた。
「あの〜……俺、これから彼と約束があるんですけど。話は、終わりました?」
「いや、まだだ。ちなみに、聞くが……お前は、上泉マコトの友達か?」
植村が見ると、質問した男の後ろで上泉が必死に首を横に振っている。“否定しろ”というサインなのは、すぐに理解できた。
「うん、友達。なんなら、心の友まである」
まさかの返答に、困惑する上泉。自分のジェスチャーが伝わらなかったのか?という思いと、素直に嬉しい気持ちとがないまぜになって、自然と涙が溢れそうになってしまう。
「ハハッ!お前、空気が読めなさすぎ。さすが、ロークラスは一味違うぜ。なぁ?」
親分の問いかけに、子分たちも一斉に
「はは、ありがとうございます」
「はぁ?褒めてねーし、皮肉も伝わんねぇのかよ。類は友を呼ぶってのは、本当だな。マコトと釣り合うぐらいの馬鹿じゃねーか」
「あの〜。用事が済んでるのなら、上泉くんを借りていきますね?すみません」
半ば強引に、自分の横を通り過ぎようとする植村に、ついカッとなってしまうムネタカが、彼の背中に肘打ちを叩き込もうとすると……。
すかっ
寸前で彼は前に軽くステップして、その一撃を回避した。まるで、背中に目でも付いているかのように。
「ちょっ!急に、何するんですか!?危ないなぁ」
「て、テメー……恥を、かかせやがって。決めたぜ。お前がパシリ第二号に決定だ!三年間、コキ使いまくってやるよ!!」
「背後から不意打ちしてきた上に、避けられておいて、よくそんな大口を叩けますよね……
「こ……殺す!お前ら、やっちまうぞ!!」
事を荒立てることはしたくなかったが、さすがに植村も怒りを抑えていたのか、つい言葉に怒りがこもってしまう。こういうところは、まだまだ彼も精神的には幼いといえるのかもしれない。
ムネタカの合図を皮切りに、一斉に飛びかかってくる敵軍団の攻撃を、囲まれないように位置取りを変えながら、全て
「あ、当たらねえ!なんだ、コイツ!?」
「ええい、すばしっこい!スピード系のユニーク持ちか?」
翻弄される敵たちを
やるしか……ないのか?
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