ロークラス・6

「ふんっ!」



 試しに、光剣クラウ・ソラスつかを握ってみるも、一向に刃がつくり出せない。そもそも、チャクラって何なんだ?説明不足すぎる。



「なに、やってるの?」



「いや、なんか……“気”を込めたら、剣になるみたいなんだけど。どうやっていいか、分からないんだよね」



「おー。ちょっと、貸してみて?やりたい、やりたい!」




 まるで、新しい玩具おもちゃを買ってもらった子供のようにハシャぎだす彼女に、光剣クラウ・ソラスを渡してみる。




「どりゃあああ!うおおおおお!!」




 いや、同じく出せへんのかーい。なんか、やり方を知ってるのかと思ったのに、出せへんのかい!


 まぁ……めちゃめちゃ、気合いを込めてるのは伝わったけどさ。




「ね?無理でしょ」



「何これ……欠陥品じゃん!」



「いや!それは、無いかと。俺たちの問題だと、思うよ。うん」




 いよいよ、秘宝アーティファクトにケチをつけ始めた朝日奈さんをなだめていると、見るからにオトナな女性に声を掛けられた。




「あの〜。騒がしいけど、何かありました?」




 やって来たのは、黒髪ボブのスーツ姿の女性。学園の教官だろうか?手には、タブレットを抱えていた。見るからに豊満な胸の部分は、あえて注視しないように気をつける。それだけ、自然と目が行ってしまうほどの破壊力だった。




「あっ、いえ!何でも、ありません!!お騒がせしました〜」



「うん。何も無いなら、良かったんだけど……もしかして、君たちはローAの生徒かな?」



「えっ、あ!そうです、そうです」




 ローA……ロークラスAって、そう略すんだな。まさか、学園長に“変な子たちがいる”とか報告されたりしないよな?




「やっぱり、そっか!そろそろ、ホームルームを始めるから、教室に戻ってくれるかな?私が、担任のひじりマリアです。よろしくね」




 名前からして、ぐうせいだ。この人が、担任か……よし!




 教室に戻ると、俺ら以外の生徒たちは着席していた。朝日奈さんが、最後まで余っていた三浦の隣席になってしまい、少し可哀想な気もした。いや、一番可哀想なのは三浦か。ドンマイ!



 マリア先生の自己紹介と、クラス全員のアナログな出席確認が終わり、今後の予定についての話が始まる。心配していた山田くんも、特に大きなトラブルは起こさなかった。綾小路さんにやられたショックで、大人しくなっていたのかもしれない。




「えっと……授業の流れは今、説明した感じになります。午後のカリキュラムに関しては皆さんに一任されておりますので、島内に点在している講師陣の中から学びたい分野の指導を選択してください。どこに誰がいるかは、生徒手帳アプリ内の島内マップで調べることが出来るので、後で確認しておいて下さいね」




 そういや、今日から行けるんだったな。例の“七星剣術”だっけ?上泉くんと、訪ねてみなくちゃな。




「あ!あと、一週間後に実力テストがありま〜す。文字通り、今の皆さんの実力を知っておく為のテストなので、あまり気負わず挑んで下さいね」



「先生!実力テストというのは、具体的にどんなことをするんですの?」




 最前列に座っていた綾小路さんがビシッと真っ直ぐに挙手して、先生に質問する。高慢なのかと思いきや、ちゃんと真面目に話を聞いているようだ。




「は、はい!えっとですね。学園側が用意した模擬ダンジョンに、六人一組の小隊クランを組んで、実際に攻略してもらいたいと思います。一番早くクリアできた生徒たちには、特別褒賞のハスタが贈呈される予定です」




 凄いな、練習用のダンジョンまで作ったのか?道理どうりで、やたらと学園内の敷地も広いと思っていたら。




「このクラスは30名なので、ちょうど五組の小隊クランが出来るはずですね。誰と組むかは自由とするので、気の合う仲間と組むも良し、ポジションのバランスを考えるも良し、強そうな人をスカウトするも良し。当日までに、各自で作っておいて下さい」



 うわぁ、前世だったら一番イヤなパターンだよ。

 よく、班が組めなくて余り者になってたっけ。それで、余り者同士で組まされたり、陽キャグループに無理矢理ねじ込まれて、最悪の雰囲気にしちゃったりするんだよなぁ……うっ、トラウマが!



 キーンコーンカーンコーン



 今も変わらないお馴染みのメロディーが鳴り響き、最初のホームルームは終了した。今日は、午前の授業は無く、本格的な学園生活は明日からとなるらしい。



「さて、植村。他の4人は、どうする?」



 余り者になりたくない三浦やからが、早々に俺を仲間に引き入れて来たようだ。



「おい。俺と、お前が組むことは決定なのかよ!」



 まぁ、でも誘ってくれるだけで、ありがたい存在なのだけれど。調子に乗りそうなので、言わないが。


 そんな時、隣の美少女たちが会話に加わってきてくれた。



「ねぇ、植村くん。良かったら、私たちと組まない?」



 月森さんは自分自身と、前にいた神坂さんを指差しながら言った。この誘いを断る理由は、ない。



「俺たちなんかで、良ければ。こちらこそ、よろしく!」



 前世の俺よ、見てるか?なんと、開始数分も経たない間に、グループに入れたぞ!


 これで早速、もう四人。あと、二人か……。

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