ロークラス・5
「初めまして。俺は、植村ユウトです。今後とも、よろしく」
神坂さんに、こちらも自己紹介をすると、全く別の方向から反応が返ってきた。
「植村ユウト!?いたー!」
大声に反応して、俺らが一斉に視線を向けると、金髪ショートの快活そうな少女が、サングラスをおでこの上に掛けて、こちらを指差していた。
そのまま、ズンズンと近付いてきた彼女はなんと、
自動翻訳を開始します(日本語/英語)
これは、【虚飾】スキルというわけでは無い。
元々、我々に埋め込まれているチップに搭載されている初期機能だ。設定されてる母国語以外を感知すると、自動で相手側のシステムとリンクして相互通訳を開始してくれるという、とても便利なものである。
主要な国家の言語は全て対応しているほか、それぞれの声で再現してくれるという、まさに国境なき翻訳機能なのだ。
「あなたのお父さんから、預かってる物があるの。ここじゃ、あれだから……ちょっと、来て!」
返事をする前に、強引に手首を掴まれ、廊下へと連行されていく俺。この社交性、それに英語……俗に言う、帰国子女って、やつだろうか?
「なぜだ?なぜ、アイツばっかり!」
三浦の悲痛な叫びが聞こえたが、この状況に関しては、こっちが聞きたいくらいだ。
「あの……キミは?」
「私?私は、朝日奈レイ。昨日、サンフランシスコから、日本に来たばっかなんだけど。私のパパと、キミのお父さんはギルドの同僚なの!向こうでね」
「あぁ!父さんの、海外赴任先の!?」
「そーそー。んで、私も
一応、気にはかけててくれたのか。進学する報告をしても、何も音沙汰が無かったから、てっきり俺には興味が無いものだとばかり思っていた。
「わざわざ、頼まなくても。郵送とかで、いいのになぁ……なんか、ごめんね」
「多分、郵送は無理かな。一応、貴重な
「
実は、みんなの
しかも、“冒険王”とか“軍神”とか大層な二つ名があるほどの有名人なんだから、息子に渡せる
「うん。ちなみに、大・中・小あるけど、どれが良い?」
「え……なにその、舌切り
「三つも渡しちゃうと他の生徒に不公平だから、選ばせろって。ちなみに、私も中身は知らないから、顔色とか伺っても無駄だよー」
くっ!まあ、貰えるだけラッキーか。
今の彼女の持ち物はスクールバッグのみ。
あの中に、全ての
とはいえ、意地悪じいさんは「大」のつづらを選んで失敗している。ここは、無難に……!
「じゃあ……“中”で、お願いしやす!」
「はーい!ちょっち、待っててねぇ……っと」
自分のカバンの中身を覗き見ながら、手を突っ込んでガサガサと物色している朝日奈さん。あの中に貴重な秘宝が三つも入ってるなんて、誰も想像できないだろうな。
「“中”は、これだ!はい、入学おめでとー!!」
にっこにこの笑顔と共に、マジックで『中』と書かれた紙袋を差し出してくる彼女。色々と豪快だが、良い子なのは間違いないことだけは分かった。
「ははっ!朝日奈さんも、おめでとうでしょ。ありがと」
中身が気になりすぎて、受け取ってすぐに開封すると、そこには筒状の物体が入っていた。
いや、これは剣の
「中に、ソウイチロウからのメモが入ってると思うんだけど……なかった?」
朝日奈さんに言われて、よく紙袋の中を見ると、確かに
さらっと言っていたけど、父さんのこと名前呼びしてるんか。まぁ、海外だと普通なのかな?
『入学おめでとう、ユウト。お前が選んだ入学祝いは、レベル4の
色々と、気になるところはある……そっけないところとか、説明が面倒くさくなってるとことか。
だが、選んだ
これは、いよいよ本気で剣術を学んでいかねばならない時が来てしまったようだ。
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