ロークラス・3
すぐさま、第二ラウンドが始まりそうな勢いだったので、俺は慌てて二人の間へ仲裁に入る。
「もう、やめよう!お互い、冒険者を目指す仲間同士なんだしさ?」
「邪魔すんな!この
「モブキャラは、引っ込んでなさいな。ケガしますわよ」
ダメだ、話が通用しそうな人達じゃねえ。
すると、俺がいることなどお構いなしに、山田くんが再びパンチを、それに反応するように綾小路さんが相手の襟を掴もうと手を、互いに伸ばしてきた。やれやれ、血気盛んなのにも程がある。
【虚飾】が、【組み付き】rank100に代わりました
俺は、瞬時に二人の腕をキャッチすると、綾小路さんを合気道の要領でバランスを崩して
「きゃあっ!?」
「いででででで!痛えええッ!!」
「「こ、この……!!」」
二人の鋭い眼光が、俺に集まる。大人しくさせるつもりでやったことが、逆にヘイトを買う行為になってしまったようだ。やはり、
いよいよ、どうしたものかと困惑していた俺を救ってくれたのは、すでに教室の中にいた幼馴染の女神であった。
「生徒規則・第3条!正式な“
月森さんの言葉に、二人は苦虫を噛み潰したような顔になる。さすがに、笑い者にはされたくないらしい。プライドが高そうな両者にとっては、かなり効いた一言だったようだ。
「ふん!そうですわね。こんな、つまらないことで罰を受けたとあっては、お爺様に合わせる顔がありませんわ。このへんで、許してやるとしますか」
「ちっ。最後まで、気に食わねー女だぜ。この借りは、正式な場で必ず返す!覚えときやがれ!!」
互いに
月森さんのおかげで、なんとか台風は過ぎ去ったようだ。俺は、礼を言いに彼女のもとへ駆け寄った。
「ありがとう、月森さん!助かったよ」
「はぁ……怖かった。実は、内心ドキドキだったんだ。上手くいって良かったぁ」
力が抜けたように、ストンと椅子に座り込むと、安堵の息を吐きながら、彼女は机に突っ伏した。
「ははっ。でも、かっこよかったよ」
「植村くんこそ、あの二人の間に割って入るなんて、凄い勇気だよ。あそこまでは、私にも出来ないもん」
「いやぁ……でも、結局は止められなかったから」
まぁ、そこまでの恐怖を感じなかったのは確かだ。俺も、そこそこの修羅場はくぐってきてるからな。今までの相手と比べれば、あの二人なんかは可愛いものだった。
「ううん!変わってなくて、安心した。そうだ!もう、どこにするか決めた?席」
「いや、まだなんだよね」
「よ……良かったら、隣に座る?空いてるけど」
恥ずかしそうに、上目遣いで聞いてくる彼女。
この誘いを断れる男子が、この世にいるのだろうか?いや、いない。
「じゃ……じゃあ、お言葉に甘えて。お隣、失礼します」
「うん!知ってる人が、近くにいると安心する。私も」
知ってる人……か。喜んでいいのかどうかは微妙だが、とりあえず最高の席は確保できたといえる。
その瞬間、すぐ後ろの席から聞き覚えのある声がした。
「俺も、同感だ。なので、ここに座る」
振り向くと、
「お前、いつの間に……」
「くっくっく。さっきは、災難だったな」
「くっ。見てたなら、助けに来いよな」
「俺が出て行ったところで、何も出来ん。過ぎた正義は、身を滅ぼすからな」
コイツに、月森さんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわ。いや、何か喜びそうだから、やめよう。
ふと、教室の隅に目をやると、上泉くんが挙動不審に立ち尽くしていた。どこに座るか、決めかねているのかもしれない。
「上泉くん!俺の前、空いてるよ〜!!」
「あっ、うん!ありがとう!!」
俺に気付くと、パッと不安な表情が晴れて、こちらに歩いてくる。声をかけて、正解だったようだ。
なんか、彼は小動物感があって放っておけない。
前の席に着いた上泉くんは、机のフックに持っていた紫色の刀袋を固定させる。
「それ、上泉くんの武器?」
「うん。戦闘の授業もあるから、武器持ちのスイーパーは常に常備するように……って。生徒手帳に、書いてなかった?」
「あぁ〜……書いてあったね。うん」
正直、ちゃんと目を通してなかった。月森さんといい、上泉くんといい真面目だなぁ……見習わなくては。言うて、俺は基本的に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます