入学前夜・1
「ほら、学園のパンフレット!表紙のモデルをしてた人。覚えてない?」
上泉くんに言われて、記憶が蘇った。確かに、表紙で剣を構えていた美少年が赤髪だった気がする。
「あぁ〜!有名人だから、表紙を任されたってこと?」
「それも、あると思うけど。パリのファッションショーに出たことがあるぐらい、モデルとしても一流らしいよ」
どんどん、出てくるよ。でも、アスカとの関係性は何なんだろう?まさか、そんな有名人がナンパとかしないだろうし。元々、知り合いだったのだろうか。
ふと見ると、三浦が天馬先輩が歩いて行った方向へ、両手を伸ばして“謎の念”を飛ばしている。
「……何、やっとんだ?」
「呪いに、決まってるだろ。そんな完璧超人が現実に存在して、たまるか!せめて追放系に出てくる勇者のように、性格破綻者であれ!!と、念を送っているのだ。ふはははは」
「分かる人にしか分からないネタは、やめろ。さっさと、帰るぞ」
「気にならんのか?今朝、女子の方と一緒にロープウェイ乗り場に来てただろ。知り合いだと思ったんだが」
よう、見とんなぁ。ホント、コイツの観察眼だけには頭が下がるわ。
「知り合いだからこそ、尾行なんて出来るか!彼氏でも、ないのに」
と、偉そうに言ってはみたものの、実際は気になってるんだけども。さすがに、ここは衝動を抑えて、寮に帰ることにした。
そんな注目の二人はというと、ディナーを終えて、噴水広場で別れの挨拶を始めていた。
「今日は誘ってくれて、ありがと。美味しかった」
「気に入ってもらえて、何よりだ。学生街では、一番人気の店なんだ。予約しといて、良かったよ」
「あれは、学生レベルじゃなかったわ。正直、なめてた」
「ははっ。最初は、あんなに二人で来るのを嫌がってたくせに」
七海アスカと、天馬カケルは
すると、自身のユニークスキルもあって、メキメキと頭角を現し、あっという間にアスカを追い抜き、史上最年少のスピードでA級冒険者にまで到達したのだった。
「そりゃ、イヤでしょ。幼馴染とはいえ、オシャレなレストランに男女二人でディナーとか……完全に、アレじゃん。予約しちゃったって言うから、仕方なく同行したけど」
「やれやれ。まだ、俺のことを、そういう目では見てくれないんだな」
「そうだね〜。カケルは、どっちかっていうと“弟”みたいな存在だから。私から、すると」
「年齢的には、俺の方が一個上なんだが?いつまで、子供の頃のことを引き
この会話を聞いての通り、カケルはアスカに恋心を抱いていた。それも、こうして積極的にアプローチしているので、気持ちは伝わってはいるのだが、良い反応が返ってくることは、今まで無かったようで。
「今だって、子供でしょうが。それに、今は色恋に浮かれてる場合じゃないんで」
「はぁ、そうですか……あ。そういえば、聞いたぞ?『白銀の刃』を抜けたんだってな」
「相変わらず、アスカちゃん情報の仕入れが早いね〜。ちょっと、色々とやりたいことがあってね」
「良い機会だ。良かったら、ウチのギルドに来ないか?オーナーには、俺から口利きする。アスカなら、すぐに契約してくれると思うぞ」
アスカは、ちらちらと周りの女子生徒からの視線が彼に集まっているのを感じながら、その幼馴染に返した。
「うーん……悪くない話だけど、パス」
「なんで!?ウチは、比較的に自由も
「カケル一人でも、目指せるって。レベル6のダンジョンも、五大ギルドで初めて攻略したし。カケルが、とどめの一撃を刺したんでしょ。王級のクリーチャーに」
「みんなと
三浦の呪いも虚しく、天馬カケルは性格すらも勇者然とした聖人のようであった。決して才能に
だからこそ、彼の人気は凄まじいものであった。
「この際だから、白状するけど……私、新しくギルドを立ち上げようと思ってるんだよね。だから、その誘いには乗れない。ゴメン」
「新しく……一人で、か?」
「ん〜。まぁ、それはね……いいじゃない」
分かりやすく挙動不審になる
「まさか……男と、か?」
「言い方!男だけど、そういうんじゃないから。冒険者としては、信頼してるってだけで」
「アスカが信頼するほどの実力者ね……強いのか?僕より」
「ちょっと。また、ちょっかいかけてくる気じゃないでしょうね?絶対、やめてよ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます