決闘・2
数分後、遅れて団長室にやって来たのは、無事に逃げ出してきた仲間たちだった。
部屋の前で合流して、石火矢の指紋認証で中へと入って来たのだ。
「えっ、うそやん!団長と、植村くんが闘ってる!?」
疲れて眠っている西郷を背負いながら、周防が衝撃の光景を目にして、驚いている。
「アスカ!遅れて、ごめんなさい。無事?」
「ええ、何とか。先生たちも元気そうで良かった」
「若干一名、ギリギリの子もいるけど。元気は、元気かな」
周防の背中にいる“ギリギリの子”をチラッと見ながら、石火矢は七海に笑ってみせた。
その二人の会話に、目の前で繰り広げられている激闘に視線を向けながら、京極が割り込む。
「“
「うん。正確には、そうなるように私が追い込んだのかもしれない、けど。彼は、
「ベットしたんは、
「それと……私たちの、永久服従権。ごめん」
その言葉に、一瞬だけ皆の表情が
が、すぐに石火矢が口を開いた。
「今の団長が、言ってきそうなことね……覚悟は、出来ていたわ。アスカの謝ることじゃない」
「ですが……」
「どのみち、このままじゃ団長の奴隷のようにされるのは時間の問題だった。それが、早いか遅いかの違いよ」
気休めかもしれないが、その言葉は七海の心の負担を
「でも、ほんまに植村くんで良かったん?確かに、強いとは思うけど、ななみんの方が……」
「それは……見たら分かると思うよ」
心配そうな周防に対し、無言で“
轟音と共に放たれる、どれもが必殺級の威力を秘めてそうな団長の
一見では、団長が押し込んでいるように感じるかもしれないが、上位の戦闘者が見れば、どちらが優勢かは一目瞭然であった。
「どっちが、勝ってるん!?植村くんが、押されてるように見えんねんけど……」
「確実に、攻撃を当ててるのは植村くん。だから、押してるのは、彼のほう」
この展開には正直、七海も驚いていた。
威力もさることながら、団長の一撃一撃には常に恐怖が付き
それは、石火矢も同じだったようで。
「驚いたわ、これほどとはね。避けるだけなら、まだしも……ほぼ全ての攻撃に、
「はい。団長が人類最強クラスのフィジカルだとするならば、植村くんは人類最強クラスのテクニック。と、言ったところでしょうか」
ブンッ!
全く攻撃が当たらない黒岩も、いよいよ
(俺の攻撃には、【威圧】が込められてる。普通の相手なら、大体が初撃でビビッて動けなくなるんだが……コイツは、どうだ?初撃どころか、全ての攻撃を避けてきやがる)
ドスッ
腹部に、植村が放ったカウンターの拳が入る。
(これが、地味に厄介だ。回避特化のユニークかと思えば、確実にカウンターも打ってきやがる。しかも、ずしっと体にダメージが残るような嫌なタイプの打撃だ。これを喰らい続ければ、あとあと支障が出てくるかもしれねぇ)
しかし、昔から今まで彼の戦闘スタイルは、これしかない。接近して、強引に打倒する。シンプルゆえに、彼の最強さが
たまに、タックルも仕掛けてみようともしたが、確実に反応してくる相手に、それすらも出すことが出来なかった。
寝転がしてマウントを取ることが出来れば形勢逆転となるだろうが、タックルに行くことは、それ自体がリスキーな行動でもある。
これだけ、確実にカウンターを打って来れる相手だ。高確率で、突進にも対応してくるだろう。
そこで、ようやく黒岩は認めた。
(なるほどな。俺の【威圧】は格下の相手を、確実に足止めさせる。これが効かねーってことは、すなわち。このガキが、俺と同等……もしくは、格上ってことだろう)
明らかに不利な状況でありながら、戦闘中にニッと笑みを見せる黒岩に、植村は謎の恐怖を感じた。
(おもしれぇ……コイツ、本当にレベル6を単独踏破した男なのか。久々だ、タイマンでこんなに気分が高揚するのは!)
強すぎて、まともに闘える相手すら存在しなかった黒岩にとって、植村ユウトは畏怖する対象ではなく、待ち
根っからの闘い好き。そんな性格も、彼が【闘神】と呼ばれる
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