サイズ・ビル 最上階
俺が『
「最上階は丸々、団長のプライベートフロアになってるの。トレーニングジムに、サウナ、プールと……まぁ、分かりやすく成金が好きそうなもののオンパレードね」
「団長……黒岩ムサシさんだっけ。どんな人なの?そういえば、詳しく聞いてなかった」
「……かつて、伝説のギルドと呼ばれた『アルス・ノヴァ』の一員で、対人戦最強のスイーパーと
ジムの施設を横切りながら、七海さんが説明をしてくれている。団長のいる部屋は、また別の場所にあるのだろう。
それにしても、気になるワードが出てきすぎだ。
「伝説のギルド?」
「そう。日本で初めて公式にレベル5のダンジョンを攻略したギルド。今は解散して、ギルド自体が無くなっちゃったけど、所属していたメンバーが
「へぇ〜。かっこいいね」
素直に感心している俺の顔を、少し見つめてから、彼女は呆れたように首を横に振った。
「なにを、他人事みたいに……キミ、本当に何も知らないんだね」
「え、何が?」
「キミのお父さんが作ったギルドなんだよ、『アルス・ノヴァ』は。そんで、その団長も務めてた」
「え……えええええっ!?」
“冒険王”と呼ばれてたり、伝説のギルドの団長だったり、一体どれだけの逸話があるんだ?うちの親父は。母さんも、よく今まで黙ってたよな。そんな
「つまり、今から
複雑だ……仮に、倒せたとして、後から親父が怒鳴り込んできたりしないだろうな?
そんなことを話していると、目的の部屋に到着したようだ。部屋のネームプレートにも、ご丁寧に“団長室”と記されている。
ただ、その扉には指紋認証のロックが掛けられてるようだ。いちいち、セキュリティーの堅固なビルである。
七海さんの目配せを受けて、俺が指紋を読み取らせる。正式には、白浜ロウキに化けた俺が。
ピピピピ……ガチャ
小さなライトが赤から緑に変わり、解錠された音が聞こえた。どうやら、指紋認証は成功したようだ。
ぼんっ
ちょうど、その瞬間、俺の変身も解除されて、透明になっていた『変身マント』も可視化された。
「時間切れ……もう、二時間が経ったのか」
ミナミ先生から聞いていた『変身マント』の持続効果は二時間だった。しかし、このマントには回数制限がないため、連続使用も可能だ。
「どのみち、
「了解」
「……あと、植村くん」
「ん?」
満を辞して俺が扉を開こうとすると、直前に七海さんに呼び止められた。
「先に、謝らせて。その……ごめんなさい」
「な、何に対して?」
「私、本心では……あなたに、団長と
そんなの黙ってれば分らなかったことなのに、わざわざ言ってくれたのは、彼女が良心の
「七海さん……」
「正直、私や先生じゃ、まともに闘って勝てる相手じゃないのは分かってた。ただ、可能性があるとすれば……レベル6のダンジョンをクリアしたっていう、植村くんだけ。最初は、私も半信半疑だったけど、白浜くんとの戦闘を見て、確信に変わったの。キミになら、大事な勝負を託せる!って」
「あ……ありがとう」
「ううん。私は、ズルい。わざと、キミが名乗り出るしかないようなシチュエーションを作り出して、自分で闘うことを放棄した。これは、私たちの問題なのに」
いつもは自信に満ち溢れている七海さんが、俺の前では初めて申し訳なさそうな哀しい表情を浮かべている。
「大丈夫!実は、俺も……心のどこかでは、自分が
「……?」
「団長との闘いを見越して、今までの戦闘にも参加しようとしなかった。俺なら、きっと……黒岩ムサシに勝てる。そういう自信が、あったのかもしれない。ちょっと、自信過剰かもしれないけど」
「植村くん……」
「だから、気にしないでいいよ。安心して、俺を信じていて欲しい。勝てば、何の問題もないんだからさ」
「……うん、わかった。キミのこと、信じるよ。ありがとう、植村くん」
彼女と共に
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