朱雀
激しい
ここ、19階では“赤井シン”と“七海アスカ”による激しい闘いが繰り広げられていた。
「やるな。この私の剣を、ここまで
「そりゃ、どうもっ!」
一見、互角の争いかに見えたが、七海の中国刀は刃こぼれを起こし、今にも砕けてしまいそうなほど、耐久性が低くなっていた。
その最大の理由としては、やはり赤井のユニークスキル【朱雀】の力だろう。その効果は、触れた物に熱を与える能力。
赤井シンの持つ日本刀の刀身は熱を帯び、
「
ズバアッ!
炎が発生するほどの一振りで、ついに七海の持っていた中国刀は砕かれてしまう。しかし、彼女もまた次の一手を用意していた。
「操演舞!!」
くるっと回転しながら、彼女は床に転がっていた別の剣を操って、一本を敵に向かって放ち、一本を自身の新たな武器として確保する。
キンッ!
飛んできた一本の剣を、軽々と打ち落とすと、赤井は
「
投射された三本の苦無もまた赤く染まって、まるで火の矢のように変化して、七海に襲いかかる。
「
その投擲を、ふわりとジャンプして回避する彼女。
その滞空時間は非常に長く、跳躍というよりは、まるで空の上を歩いているかのようにして、後方へと退がっていく。
さらに宙にいたまま、くるんと回転し、再び床に転がっていた無数の武器を浮き上がらせると、その全てを赤井に向かって突撃させた。
しかし、今度はそれを着ていたジャケットを脱ぎ、まるで風呂敷のようにして、飛んできた武器群を包み込みながら、後方に投げ捨てる赤井。
この
「ここまで、全力で戦うのは久しぶりだ。礼を言おう」
「あなたも、四天王最強と
「ふっ、いいだろう。確かに、
そう言って、赤井は自らの太刀に大量の熱を送り込んでいく。下手したら、その武器ごと燃え尽きてしまいそうな熱さだったが、彼の刀には特殊な加工が施されていたようで、刀身は変わらぬまま保たれている。
「
「
それを避けるどころか、自ら迎え撃ちにいく彼女は、武器とする刀に“気”を通すと、その炎を真っ二つに切り裂いた。
しかし突然、切り裂かれた火の鳥の間から、刀を突き出しながら赤井が姿を現す。
『鳳凰斬空閃』とは、その技単体にあらず。
火の鳥が破られたとしても、攻め終わりの隙を狙って、赤井自身が高速の突きを放つ二段攻撃こそが、彼の奥義『鳳凰斬空閃』のあるべき姿であった。
「……もらった!」
ドスッ!
その突きは、硬直していた七海の身体にズバリと命中し、赤井は勝利を確信する。一部始終を見守っていた植村でさえも、彼女がやられたと思い、声なき声をあげたほどだ。
だが、その七海の姿は、まるで
それは彼女の技『
(……後ろか!!)
自身が貫いたのが幻であったことを驚くよりも早く、背後に気配を察知して返しの太刀を繰り出す赤井。こうした対応力の高さも、彼が四天王最強といわれる
ギィン!!
その一撃を、何とか自身の刀で防ぐ七海。そう、赤井が察知した通り、彼女は背後へと回り込んでいた。
(くっ……完全に、取ったと思ったのに!まさか、ここまで反応してくるなんて)
「今度は、本物のようだな!!」
もはや、それは技ではなく、純粋な力。
【朱雀】によって熱を帯びた赤井の刀が、ジリジリと七海の刀を押し込んでいく。
ジュウウウウ
自身の刀身が腕に当たり、【朱雀】の熱が伝導されていく。肌から焼け焦げる匂いがして、痛みも伴ってきた。
「は……
彼女は、賭けに出た。
一瞬、自身を守っていた刀を手放すと、肩や腕を回転させ螺旋状に放った突きを赤井の心臓にヒットさせる。そこへ、大地から練り上げられたエネルギーが一点に集中していく。
ドクンッ!
強烈な衝撃を直で受けたことで、赤井の心臓は一瞬だけ止まってしまう。だが、体感では永遠にも感じられる一瞬。まるで、自分だけ時間が止まってしまったかのように。
「気功掌!!」
どんっ!!
その機を逃さず、彼女は
頑丈に作られてるのか、ガラスにはヒビが割れる程度だったが、赤井は力なく刀を落とすと、その場にガクンと崩れ落ちていった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます