サイズ・ビル 1F
ピピピピッ
自動ドアの前で全身にセンサーのようなものが照射されると、どうやら通過審査をパスしたようで、閉じたままだったドアが、ようやく反応してエントランスへの道が開いた。
「お帰りなさいませ!白浜様!!」
ドアをくぐると、門番のように二人の守衛らしき人物が俺を出迎えてくれる。正確に言えば、白浜ロウキの姿に変身した俺を。
やはり、このギルド内での四天王の地位は、相当に高いようだ。
「頼まれていた捕虜を、連れてきた……と、団長に伝えてくれ」
自動ドアの前で待機させていた、手首に
もちろん、手錠は自作自演で用意したものである。
「はっ!かしこまりました!!」
何やら通信機能で、上と連絡を取り始める守衛。今のところ、バレてる気配は無いが緊張感が走る。
しかし、生体認証まで通過するとは。それだけ、この変身マントの精巧さが高いということだろう。変身後の姿に、チェックしてもらった七海さんたちも驚いていた。ちゃんと、変身中はマントが消えてくれるのも、ありがたい仕様だ。
余談だが、西郷くんが可愛い女子に変身してみたいというようなことを言って、ドン引きされていた。本当に、余談だが。
そんなことを考えていると、守衛が通話を終えたようで。
「お待たせしました、許可がおりました。一度、センサーを解除するので、捕虜を中へ。すぐに、
は?青柳様って、誰!?こんな展開、予想してなかったんだが。せめて、主要人物の名前ぐらいは事前に教えておいて欲しかったよ。ミナミ先生!
外にいた七海さんたちに、センサー解除の
「なんか、青柳さんって人が、引き取りに来るって言ってました。誰ですか?」
その答えを、いち早く教えてくれたのは京極さんだった。
「……青柳リョウマ。四天王の一人。ウチの同期やね」
出た。また、『漆黒の鎌』四天王か。
みんなを連れて、無事に中に入ると、エレベーターから、スキンヘッドの男が黒いパンクジャケットを着て、颯爽と降りてきた。背中には、何やら太い刀のようなものを背負っている。
「白浜、ご苦労だったな。お前じゃ、ちと荷が重いかと思っていたが、お手柄じゃないか」
おそらく、彼が青柳さんなのだろう。
こういう普通の会話で、ボロが出てしまう可能性もある。慎重に返さなくてはならない。
「俺を、甘く見るな。簡単な任務だったぜ」
「ふっ、そうか……団長も、お喜びになるだろう。七海アスカ以外の身柄は、こちらで預かろう。お前は、直々に手柄を報告してくるといい」
なるほど。確か、白浜くんも七海さん以外は必要ないみたいなことを言っていたな。
団長のもとへ連れて行くのは、
だが、どうする?このまま、先生たちを引き渡していいのか!?だけど、下手な交渉をしてしまえば、怪しまれてしまうリスクもある。
ふと、ミナミ先生と目が合うと、小さくコクリと
「……おい、白浜」
ドスの効いた青柳さんの声に呼ばれ、俺の心臓が跳ね上がる。何か、おかしい言動をしてしまったか?
「な-…なんだ?」
「冒険者を
「あ、ああ……すまん。うっかり、忘れちまってな」
「やれやれ。相変わらず、詰めの甘い奴だ……ほら、使え」
そういって、青柳さんは俺に黒色の手錠を一つ、投げ渡してきた。これを、七海さんに着けろということだろうか。
見ると、先生たちの手首にも新たに、その黒い手錠をはめていっている。封印錠という名前から察するに、スキルを封印するような特殊な手錠なのかもしれない。
とりあえず、七海さんには手錠をかけるフリをした。今後の展開を考えても、スキルが封印されるのは厄介だ。
すると、下のボタンが押されたエレベーターが開き、青柳さんに連行されて先生たちが中へと入れられていく。地下に牢獄のような施設でもあるのだろうか?だとしたら、恐ろしい。
「……では、またな」
そう青柳さんが言い残し、エレベーターの扉は閉じていった。スキルが封印されてるとしたら、いくらミナミ先生がいたとしても、心配だ。
そんな俺の気持ちを察してくれてのか、七海さんが小声で話しかけてきた。
「先生たちなら、きっと大丈夫。私たちは、私たちのやるべきことをしよう」
「七海さん……」
「団長がいるのは、最上階。このまま、エレベーターを使って、向かいましょう」
「うん……わかった」
とりあえず、潜入には成功したものの、いきなりパーティーが分断されてしまった。先行き不安だが、ここまで来た以上、もう引き返すことは出来ない。
俺は決意を固め、七海さんと共にエレベーターの中に足を踏み入れた。
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