LV1「獅子女の大壺」・4
いよいよもって、手を伸ばせば天井に届く位置にまで水かさが増し、各自が準備に入る。
裏を返せば、かなりの深さに床の印が来ているということ。この激しい水流の中、潜っていくのだけでも困難を極めるだろう。
「各自、印に手を触れたら、親指を上げてハンドサインを出すように。それらを確認して、
先生の最終確認に全員が力強く
時間短縮の為に強くした水の流れは、かなりの激しさになっている。チャンスは一回と考えて、良いだろう。そもそも、この回答が外れているという可能性も残っていた。
ゴボゴボッ
複数の場所から水が流入していたせいもあって、水の中は複雑な渦を作り出していた。
それでも、さすがは冒険者。普段から、こういうダンジョンを想定した訓練も行っているのか、苦戦しながらも何とか、女性二人は持ち場に着くことが出来た。
(くそが!思ったより、キツいやないか。あと、ちょっとやのに……息が、漏れるッ)
一番深い底を目指すだけでも大変なのに、激しい水流に逆らって潜水してきたせいで、西郷の
その時、ふっと彼の顔周りの水が消え去った。
まるで、誰かに水中ヘルメットでも
「な……何や!?息が、出来る?」
息が整ったことで冷静になったのか、そのヘルメットの正体が、周防の発動させた【断絶】の小型結界であることが分かった。
苦戦している様子の西郷を見て、咄嗟に彼女が自身のユニークスキルを応用させ、彼の顔周辺の水だけを断絶する障壁を作り出したのだ。
「へへっ、恩に着るで!ホノカ!!」
西郷がチラリと彼女の方に視線を向けると、「いいから、早く行け!」と言わんばかりのジェスチャーを見せる。
そのサインをキッカケに、彼が最後のひと泳ぎで床へと辿り着くと、周防が太陽の印を、石火矢が雲の印を、西郷が月の印に手を触れて、一斉に水上にいる仲間へ向け親指を突き上げた。
そのサインを目が
「アスカちゃん、今や!!」
「オーケー!植村くん、ちょっと肩、借りるよ……っと!!」
比較的、小柄な体格の七海は必死にまな板にしがみついていた植村の両肩を手で押し込むと、その勢いで天井の星印にタッチした。
パアアアアアアッ
その瞬間、全ての印が
「なになに!?正解?不正解?どっちなの!」
その誰に向けられたか分からない七海の質問に、植村が答えようとすると、一気に壺が
「うわああああっ!?」
バシャアアアアアア!!!
幸い、水が衝撃を吸収してくれたおかげで、全員が地面に激突することなく、壺からの脱出を成功させる。
ミッション クリア
「げほっ、げほっ!クリアしたんなら、もちっと丁寧に脱出させんかい。ほんまに……また、間違えたんかと思ったわ」
空中に浮かんだメッセージを見ながら、西郷が皮肉を言う。壺の外は、石の壁で囲まれており、がらんとした吹き抜けになっていた。
彼らの視線の先には、宝箱が一つ置かれている。
「みんな、無事?よくやったわ、ミッションクリアよ」
先生からの投げかけに、服の
「これを、無事というなら……まぁ、無事です」
その様子を見て、宝箱を見るよりも目を輝かせている人物がいた。西郷マサキである。
「うぉっほ!眼福、眼福〜。神様、このダンジョンを作ってくれたこと、感謝しまーす!!」
彼が女性陣の水で透けた服を
西郷がボコボコにされてる間に、植村は逃げるように宝箱の前までやってくると……。
(やっぱ、こういうところから出てきた方が秘宝って感じするよな。アプリとかだと、ロマンがない)
初めての宝箱を目の前にして、植村が
「開けていいわよ、植村くん。鍵とかは、かかってないはずだから」
「あ……はい!それじゃ、失礼します!!」
ギイイイ……
重々しい蓋を開けると、そこに入っていたのは一枚の賞状のような紙切れだけだった。
『
この紙に任意の相手のことを思い浮かべながら、氏名を記入することで、その者に対して対戦を要求した場合、100%の確率で承諾を得ることが可能。
ただし、勝負の内容までは強制力が働かない。
使用できる回数は、三回まで。
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