LV1「獅子女の大壺」・1
俺が最後に扉を
LV:1 無色のダンジョン
ミッション
30分以内に、壺の中から生還せよ
「やっぱり、エスケープミッションか……!」
宙に表示されたメッセージを、全員が確認すると、『30:00』のタイマーがカウントダウンを開始して、更に壺の中でも異変が起こった。
ドボドボドボドボ……
「何や、何や!?」
どういう仕組みなのか、急に四方から水が流れ込んできて、俺たちの立っていた地面を侵食していく。
西郷くんをはじめ、みんなも動揺を隠せない様子だ。
「なるほど……時間以内に脱出できんと、全員溺死ってわけやな。はよ、せんとあかんなぁ」
こんな場面でも、一番冷静さを保ってる京極さんが、状況を簡潔に伝えてくれた。
「脱出って、どうすんねん!?この壺、内側から叩き割ったらええんか?」
どこから取り出したのか大きなフライパンを構えて、壁を叩き割る仕草を見せる西郷くん。あれが、彼の武器なのだろうか?なかなかに特殊だ。
しかし、その行為は七海さんによって素早く制される。
「そんな脳筋ゲーなわけあるか!よく見てみなさい、壁に色々と描かれてるでしょ!?」
七海さんの言う通り壺の内側、俺らから見た壁には壁画のような絵や古代文字のようなものが、四方八方に描かれている。
「ほんまや!これが、何か関係あるんか?アスカちゃん」
「分かんないけど、謎を解くヒントとか、書かれてるんじゃない?脱出ゲームって、そういうもんでしょ」
「ヒントやったんか!あぶな〜……危うく、ぶっ叩いて壊してまうとこやった」
西郷くんも、冒険者としての経験は浅いのだろう。こういったエスケープミッションは初めてなのかもしれない。
七海さんが呆れて
「東側の壁には、太陽と四本足で歩く生き物。西側の壁には、雲と二本足で歩く生き物。床には、月と三本足で歩く生き物が描かれていますね。あとコレは、象形文字やろか?ウチには、ちょっと読み取れませんけど」
その言葉に、さっぱり分からん表情を浮かべていた周防さんが、ここぞとばかりに手を挙げる。
「はい、はい!象形文字の翻訳アプリ、ダウンロードするから待っとって!!」
意気揚々とマイウィンドウを開いた周防さんだったが、無情にもミナミ先生がその出鼻を
「その必要は、ないわ。簡単なヒエログリフなら、少しは勉強してるから。えっと……正しい順番で、天候に触れよ。さすれば、出口は開かれん」
「がーん!」
せっかくの見せ場を取られて、効果音が口から出ちゃってる周防さん。事態は一刻を争う、こればっかりは仕方ない。
「スフィンクスのなぞなぞ?」
何か気付いたように、七海さんが
「スフィンクスのなぞなぞ?何や、それ?」
「スフィンクスが出したと言われてる有名なナゾナゾだよ。『朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か?』って、やつ」
「……知らん。なんや、その奇怪な生き
「
七海さんと西郷くんって、絶妙に漫才っぽいやり取りになってるよな。でも、さすがに俺もスフィンクスのなぞなぞは知っていた。
「人間の成長過程?ん……どういうことや?」
いまだにピンときてない西郷くんに、ミナミ先生が業を煮やしたように話し掛ける。
「なら、実際に説明しながら押していきましょう。マサキにも、分かるようにね」
「了解です。天候の部分に触れればいいんですよね?」
七海さんの質問にコクリと頷いて、ミナミ先生が太陽の位置に立つと、指示されるまでもなく、雲の位置に七海さんが、月の位置に京極さんが持ち場に着いた。
まずは、ミナミ先生が太陽の印に手を触れる。
「四本足は、四つん這いで歩く赤ちゃんの頃の人間を表している。だから、成長過程の一番最初」
次に、七海さんが雲の印に手を触れる。
「二本足は、普通に歩く成人の時代を表す。だから、二番目」
最後は、京極さんが水中に手を伸ばして、月の印に触れた。
「三本足は、杖を持った老人の姿を表す。せやから、晩年……成長過程の最後やね」
三つの印に触れて、しばらく待機していると、何やら壺の中に異質な音が響き始めた。
ゴゴゴゴゴゴ……
「ほえ〜。さすが!うちの女性陣は、かしこ揃いやなぁ……一人を、除いて」
チラリと見てきて嫌味を吐いてくる西郷くんに、間髪入れずツッコミ返すのは周防さんだ。
「アンタだけには、言われたないわ!でも、これでクリアってことやんな!?」
ドドドドドドドドド!!
しかし、水の流れは止まるどころか、更に激しさを増して中へと入ってくる。
「は!?どういうことや?正解したら、脱出できるんちゃうんか!オイ!!」
誰に対して叫んでいるのか、宙に向かって激昂する西郷くん。確かに思ったより簡単にクリアできた感じはあったが、レベル1なら、このぐらいの難易度が妥当なのかと思っていた。だが、この状況は……?
すぐに七海さんが、俺の心の声を代弁してくれた。
「間違えてたんだ……だから、水の流れが激しくなった。誤答のペナルティーとして」
壺の中の水深は、一気に俺たちの足首まで高くなっていた……。
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