漆黒の鎌・2
「アスカちゃんの復帰祝いや!いつも以上に、腕によりをかけて作ったで〜!!」
キッチンから、次々と多国籍な料理をリビングのテーブルへと運んでくるのは、まさかの西郷くんだった。これだけ、女性陣が揃ってて、彼が料理担当なのか。
すると、隣に座っていた七海さんが、俺に取り皿を渡してくれた。
「マサキは、ウチの料理担当も兼任してるの。性格はアレだけど、腕は一流だから!朝から、何も食べてないでしょ?遠慮せず、どうぞ」
「はぁ……それじゃ、いただきます」
これが当たり前なのか、既にテーブルを囲んでいた女子たちは、もう料理を口に運んでいる。
こちらへ新しい料理を運んでくるたび、シェフが
悔しいが……確かに、美味い。
前世で、軽くではあるが調理系のバイトに
「食べながらで行儀は悪いけど、時間が無いわ。アスカも揃ったことだし、改めて状況を整理しましょう」
真剣な眼差しで話しはじめたミナミ先生に応じて、食べながら他の女子たちが静かに
真っ先に聞いておきたいことがあったのか、食い気味に先生へ質問を投げかけたのは、七海さんだった。
「あの……ママは!?」
「それなら、安心して。腕っぷしの強い団員を厳選して、ボディーガードとして送り込んでおいたから。万が一、奴らが病院を襲撃してきたとしても、きっと守ってくれるわ」
「良かった……ありがとうございます」
そうか、入院中のお母さんを人質にでも取られたら、手も足も出ないもんな。あんな公道で、お構いなく銃をぶっ放してくるような連中だ。決して、病院も安全とは言い切れないだろう。
「とはいえ、いつまでも後手に回っていたら、団長の思う
「何か、良い手立てでも思いついたんですか?」
その質問に答えたのは先生ではなく、周防さんだった。ちなみに彼女の取り皿には、山盛りの揚げ物が積まれていた。痩せの大食いか?
「私たちだって、ななみんのいない間、ボーッとしてたわけちゃうよ?色々と話し合って、作戦を考えてたんやから!」
「どんな作戦?」
「団長に、“
つい、かっこいいワードに反応して「
「冒険者協会が作成した『決闘アプリ』を
「決闘……ですか。何のために?」
「話し合いで解決できないようなこととかを、冒険者らしく実力主義で決めよう言うて、作り出されたのが、そのデュエルシステムなんよ。お互いに、勝った時の条件を提示して、負けたら強制的にそれに従わんといけんようになる。アプリの拘束でね」
何だろう……従わないと、電流でも身体に流されるとか?物騒なアプリではあるが、使いようによっては便利かもしれないな。
俺が説明に納得したようなのを見て、七海さんが話を本筋へと戻し、ミナミ先生に尋ねた。
「団長に、
「おそらく向こうが要求してくるであろうものは、レベル6の
「それって……先生が、団長の座を取って代わる。って、ことですか!?」
「そうよ。今の、『漆黒の鎌』を根本から変えていく為には、今の団長に
複雑な表情を浮かべながらも、固い意志を感じる先生の口調に、ここにいる皆もその思いを汲み取った。
「先生の決意は、伝わりました。でも、その作戦を実行に移すには、いくつか問題があります」
「それも、分かってる。まずは団長に、こちらの
最後に自分用のチャーハンと一緒に、空いていた席に座った西郷くんが、しれっと会話に加わる。
「せやから、それは団長の弱みを握って脅すとか……催眠術をかけて、決闘させたくするとか。そんな感じで、いけんちゃうん?」
「団長の弱みを知ってるなら、教えて欲しいんだけど。それに、団長クラスの上位冒険者に催眠を掛けるとなると、洗脳系の強力なユニーク持ちでも連れてこない限り、通用しない。この短期間で、呼び出せる?」
「うぐ……久々の、論破王アスカちゃんや。くぅ〜、痺れるでぇ」
「黙って、チャーハン食ってろ。でも、現実味があるとしたら、弱みを握るとかなんですかね?ありそうにないけど、家族もいないらしいし」
ふと、俺はあることを思い出して、マイウインドウを開く。記憶が確かならば、あれが役に立ってくれるかもしれない。
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