七海アスカ・7
バシュッ!!
追手のライダーの一人が、手にしていたハンドガンで空中に飛来してきたドローンを撃ち落とした。
「あいつら、銃を持ってる!それで……何か、撃ち落とされた?」
後部座席にいた俺が逐一、後ろで起きてる様子を七海さんに報告する。
「多分、監視用のドローンだね。怪しい動きをしてる車両がいたりすると、そのドローンが感知して、追尾するようになってるの。通報される前に、壊しておいたんでしょ」
つまり、これから違法行為をしますよという宣告のようなものか。まあ、ハンドガンを持ってる時点で襲撃者であることは確定したわけだが。
【虚飾】が、【鑑定】rank100に代わりました
「くっ……ダメだ。【鑑定】できない!」
敵の素性を知る為に、【鑑定】を試みるが、何のデータも読み取ることが出来ない。こんなことは、初めてだった。
「おそらく、あのヘルメット……ジャミング加工が、施されてるかも!」
「ジャミング加工?」
「相手の【目星】や【鑑定】系の介入を阻止する為のプログラム。対冒険者を
科学の進歩は、スキルに対抗できる手段まで開発されてるってことか。今後は、相手の持つ装備にまで気を配らないと、足を
そんなことを
「七海さん!撃ってくる!!」
「わかってる!操縦を、マニュアルに切り替えて……」
「マニュアルって……七海さん、運転できるの!?」
「本来、公道でマニュアル運転は厳禁なんだけど……監視用ドローンは、向こうが壊してくれたわけだし。ラッキーってことで!」
あ、今は禁止になってるのか。なんせ、うちは車を持ってないから、この時代の交通事情には
すると、七海さんはポツリと、かろうじて後ろにいた俺が聞き取れるくらいの声で
「シルエット・ワン……“
ギャギャギャギャ!!
次の瞬間、まるでバイクが蛇のようにうねりながら、前にいたトラック車の前に滑り込む。トラックの荷台が盾代わりとなって、敵からの銃弾を防いでくれた。
運転できるってレベルじゃない。まるで、生き物みたいにバイクが動いたぞ?今。
トラックの両脇から、バイクの駆動音が聞こえる。たまらず、追手が距離を詰めてきたようだ。
先に、右側からハンドガンを手にしたライダーが姿を現すと、待ってましたとばかりに、クルッと車体をターンさせ、その敵のバイクに自らのバイクを体当たりさせていく七海さん。
いや、メチャクチャだ。ワイルドすぎる。
ドンッ!!
ズザザザザッ!!
その衝撃で、敵のライダーはバイクごと派手に転倒する。襲ってきたのは向こうなのだから自業自得とはいえ、少し可哀想だ。
しかし、七海さんは止まらない。
そのまま道路を逆走したかと思えば、アクセルを入れたまま綺麗な弧を描くように再びターンを決めて、今度は左側の敵ライダーの背後へと回り込む。
そういえば……七海さんのユニークスキルは確か、【七変化】。変わったユニークスキル名だから、覚えていた。
もしかして、彼女は様々な
ちょうど、そんなことを考えていると、また彼女がポツリと呟きはじめた。
「シルエット・シックス……“
間違いない。やっぱり、戦況に応じて何かに変化しているのだ。【七変化】というぐらいだ、七つのバージョンがあるのかもしれない。
でも、“
そう言って、七海さんは一瞬、両手をハンドルから手放すと、前方にいる敵ライダーに向けて、
ドンッ!!!
その瞬間、まるで突風に吹き飛ばされたかのように、敵ライダーは車体から切り離されて、宙を舞いながら道路に叩き落とされる。
「な……何を、したの?」
「初歩の気功術……
「お、驚いた。色々と……」
なるほど。彼女が、なぜレベル6のダンジョンに挑まされたのか、少し分かった気がする。彼女も、俺と同じような
「さて、と。目立たないうちに、とっとと立ち去るとしますか!」
「う……うっす!」
二台のバイクの残骸を後にして、全速力でその場から走り去っていく俺たち。
何やら、後続車両がプチパニックを起こしてるようだったが、
七海さんの活躍で、何とか敵の第二波も退けることが出来たようだ。
(やっぱり、殺す気満々か。ハナから、約束なんて守る気なかったんだ……信じた私が、馬鹿だった)
アスカは、団長への一縷の望みさえ絶たれた気がして、心の中で、かつて憧れた者への最後の決別を誓ったのだった……。
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