ダンジョン・4
「で、どうする……入るんだろ?」
「そのつもりで、来たわけだからな。でも、本当にいいのかな?お前のお兄さんとかさ」
「気にすることはない。LV1くらいのゲートなら、頻繁に出現するらしいからな。一つぐらい先に奪ったところで、大したダメージにならんだろ。心配すべきは、ダンジョン内でかち合うことぐらいだ」
基本的にゲートは一度に入れる人数の上限こそ限られていることはあるものの、時間をあけてから入ることは自由だ。つまり、誰かがミッションクリアするまで
一番、早くに発見した者がクリアできるチャンスは高いが、それ相応の実力を持っていなければ、簡単に後から来た勢力によって、秘宝を奪われかねない。
「ダンジョンで揉めるのは、ごめんだな。こっちは、とりあえず本物のダンジョンの雰囲気を味わってみたいだけだ。チャチャっと済ませて、帰ってこよう」
例え、ダンジョン内で命を落とすようなことがあっても、記憶を消されて強制帰還させられるだけなのを知ってたのもあってか、この時の俺にそこまでの緊張感は無かった。
「そうこなくちゃな。では、先を譲ってやろう」
似合わない紳士風のパフォーマンスで、扉へと俺をエスコートする悪友。
「先にって、お前も来るつもりなのか?」
「ここまで来たら、見てみたいだろ。ゲートの向こう側の景色というヤツを。ついでに、お前が冒険者としての資質があるかどうかもな」
「ド素人が、偉そうに。危険な目に遭ったって、守ってやらんからな?」
「安心しろ。自分の身ぐらい、自分で守る」
まるでガンマンのように、ベルトの両腰から取り出したスタンガンをバチバチッと起動させ、したり顔を見せる三浦。怪物相手にも、護身用グッズとか効くのだろうか?
本人が自信満々っぽいし、そっとしておこう。
「やれやれ……じゃあ、先に入るからな」
とはいえ、俺も緊張してきた。もちろん、ゲートに入るのは初めてだし、入ったら即戦闘なんてこともあるらしい。足を踏み入れた瞬間、ゲームオーバーなんてことも気を抜いてれば十分に有り得ることなのだ。
改めて、ふっと息を吐きながら、いつもの精神安定剤“【精神分析】rank100”で心の安寧を取り戻す。地味なスキル
キイイイイイイン
「おっおっおっおっ……!?」
門の扉に触れると開くわけではなく、身体が吸い込まれるようにして、中の世界へと
友人の身体が全て、扉の中へと吸い込まれたのを確認すると、三浦も意を決してゲートに手を触れる。
《入場不可》規定人数の上限に達しました
「は?」
《入場不可》規定人数の上限に達しました
《入場不可》規定人数の上限に達しました
《入場不可》規定人数の上限に達しました
何度トライしても、表示されるメッセージに、ようやく三浦は観念した様子をみせた。
不思議に思い、先ほどユウトに送りつけたサイトの他ページを開いてみる。
『ダンジョンの見分け方講座・その2』
ダンジョンの人数制限
基本的に一度にゲートの中へ入れる人数は上限10名までとされているものが多い。
上位LVのダンジョンになると、超大型クリーチャーや軍単位のクリーチャーが現れることもある為、上限が50名〜100名までに増加する。このようなダンジョンをレイド戦と呼び、少人数でクリアするには難易度が跳ね上がると言われている。
上位ダンジョンに挑む際には、こうした上限人数もチェックしておくことで、中にいる難易度が分かることもあるので、覚えておこう。
「やはり、上限1名なんて、記載は無し……か。いくら、LV1のダンジョンとはいえ、ソロ攻略推奨?たまたま、レアなゲートに遭遇してしまったのか」
サイトを見ながら、三浦がぶつぶつと独り言を話していると、だんだんとゲートが消えていっていることに気付いた。
(なっ!?もう、誰も入れないから消えるというのか?)
下手に何かして、不具合を起こしたら、それこそ中にいる友人に何があるか分からない。心配な気持ちはあったが、三浦は冷静にゲートが消えていくのを静かに見守る。
(イレギュラーな事態が起きたな……でも、ま!アイツなら、何とかなるだろ。LV1だし。万が一、失敗しても戻って来れるんだから。俺が入れなかったのだけは、残念だが)
楽観的なのか、それだけユウトの潜在能力を買ってるのか、どちらかは分からなかったが、心配したのは一瞬で、すぐに気持ちを切り替えると三浦は、そそくさと廃ビルを後にした。
(待てよ。あの色……ユウトの言ってた通り、無色じゃなくて、白だったとか?まさかな)
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