冒険者・5

 ホワイトボードに、先生が細かく各ポジションの特徴を書いてくれる。見た目に反して、字が綺麗だ。



 スイーパー

 戦闘を得意とする冒険者。敵の殲滅や、戦闘能力の低い仲間の護衛が仕事。


 ランナー

 走力や跳躍力など、アスリート的能力が高い冒険者。アスレチックミッションには欠かせない専門職。


 アンサー

 知恵やひらめきの高い冒険者。エスケープミッションには欠かせない専門職。


 シューター

 遠距離攻撃を得意とする冒険者。主に後方支援が仕事だが、あらゆるミッションで活躍できる。


 サポーター

 治療や料理、記録などサポート技能を得意とする冒険者。長時間攻略において、必要とされる。


 サバイバー

 登攀や水泳など、極地行動を得意とする冒険者。活躍の場は少ないが、特定の場面で力を発揮する。


 バーサトル

 三つ以上のポジションをこなすことができる万能型。様々な場面で臨機応変に活躍することができ、希少な存在でもあるので、ギルドなどでは非常に重宝される。



「……と、主にこんな感じかしらねん。ユウトは、どれに当てはまりそう?」



 俺のユニークスキル的には、バーサトルなのかな。ただ、専門的な技術には適応できない問題があるからな……だとすると。



「スイーパー?とか、ですかね。希望的観測も込めて」


「身体能力D、近接戦闘・格闘がrank11……一般的な中学生の中では、動ける方だと思うけど。冒険者になるには、物足りないね」



 ジッと俺のことを目を凝らすように見てきながら、クソガキ……もとい、テンちゃんが鼻で笑った。


 まさか?と思い、確認してみる。



「キミ、【鑑定】が使えるの?」



「んぇ……【鑑定】?そんな、高度な技能もってないって。【目星】だよ。ある程度の武術を習得すると、【目星】で相手の大体の強さが分かるようになんの。確かに、高位の【鑑定】クラスになると人の詳細なスキルとかまで分かっちゃうらしいけど。そんなん持ってる人、冒険者でもまれだから。私が分かるのは、身体能力レベルと戦闘スキルのrankくらいかな」



 まぁ、その稀なスキル使えるんだけど。


 なるほど。確かに、強い格闘家とかは相手の力量とか対峙しただけで分かっちゃうとか聞いたことはあるけど、それがスキルにも反映されてるわけか。



「それだけで、相手の強さを判断するのは早計よ?テン」



 横から釘を刺してくるライアン先生に対し、テンちゃんは不満げに反論した。



「わかってますよ。戦闘系のユニーク持ちも、いますからね。ユウト、ちなみにどんなユニークスキル持ってる?」



【目星】では、相手のユニークスキルまでは分からないのか。俺のは、戦闘系か?と言われたら、微妙な感じだが。



「えっと。俺の、ユニークスキルは……」



「ストップ!言っちゃダメよ、ユウト」



 少しばかり声を荒げて、俺の答えを制止する先生。

 慌てて口を閉じたのを確認して、話を続ける。



「赤の他人に、おいそれと自分のユニークスキルを教えるもんじゃあないわ。冒険者になりたいなら、尚更ね」



「す、すみません。聞かれたので、つい……」



 チラッとテンちゃんの顔を見ると、引っ掛からなかったかーとばかりに悔しそうなプークスクス的リアクションを見せている。知ってて、わざと聞いたな。



「ユニークスキルは、冒険者にとっての切り札みたいなものだから。仲間なら、まだしも……敵対するかもしれない同業他社の冒険者に口を滑らすなんて、もってのほか。もちろん、聞くことだってマナー違反よ」



 チラリと質問したワルガキを先生が一瞥いちべつすると、少しは反省したのか悪戯っ子は口を尖らせながら、ちょこっと頭を下げた。



「それって……他のギルドとは、戦う可能性がある。って、ことですか?」



「下位のゲートだと、鉢合わせることは少ないけど……上位のゲートだと、同じダンジョンで攻略が被ることも珍しくないわ。ダンジョン内で命を落としてしまったら、どうなるかは知ってるかしら?」



 それは、母さんから聞いたことがある。



「確か、中での記憶を消されて元の世界に戻されるんでしたっけ?多少のペナルティ付きで」



「そう。つまり、ダンジョン内で殺人行為を犯したとしても、罪に問われることはない。だって、生き返れるんですもの」



「……殺そうとしてくるってことですか!?他のギルドの冒険者が」



「中には、そういう野蛮なギルドもあるってこと。うちらみたいな善良なギルドは、そんなことしないけど……襲ってくるんだったら、迎え撃たないといけない。ダンジョン内において、敵はクリーチャーだけじゃないってことね」



 いくら中での記憶は消えて無くなるとはいえ、殺されるのは勘弁願いたいものだ。やっぱ、冒険者って危険な職業なのかもしれない。



「あらら、ちょっと怖がらせすぎちゃったかしらねん。ごめんなさいネ」



「あぁ、いえ……大丈夫です。ちなみに、その野蛮なギルドって?具体的には」



「そうね、じゃあ次は日本の代表的なギルドについてレクチャーしてあげようかしら!」




 一人、黙って椅子に座っていたナギは、密かに思う。



(……長い。早く、終わんないかな。「魔女っ子☆

 ミラたん Revolution」リアタイしたいのに間に合わんだろ!これじゃ)

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