ユニークスキル・2
“強くなりたい”というのは、男のロマンだ。
強くなったところで、競技選手でもなく、普通に生活している限りでは、一生のうちに一度も誰かと戦うことなく終わってしまうのが当たり前だろう。
ただ強くなれば、自分に自信が持てるかもしれない。困難にも立ち向かっていける後押しになってくれるかもしれない。いわば、心の保険というやつだ。決して、力を誇示したいが為ではない。
そして、やっぱり男として強くなってみたいのだ。
そこで【近接戦闘】のスキルなのだが、このスキルも多岐に細分化される。(空手)(ボクシング)(中国拳法)(相撲)などなど。
その中で、俺がコピペとして使えたのは(格闘)のみだった。
おそらく、前世での格闘技好きが役に立っているのだろう。実際には何の武術も習っていなかったが、見る専門として色々な試合や、武術の専門チャンネルなどを見て、知識だけは一丁前に蓄えていたのだ。なので、初期値でも転生ボーナスがそこそこ高かったのかもしれない。
ただ一つの道に精通するほどの知識には至っておらず、だから(格闘)といった総称なのだろう。様々な武術の良いとこ取りといったところだ。
効果としては、一度見た動きは完璧に再現できるようになり、それを適材適所のタイミングで身体が勝手に動いてくれるもので、正に自分が達人になった気分が味わえる。
しかし、大変だったのは練習相手を見つけることだった。他のスキルは、何とか身一つあれば効果を実証することが出来ていたので、助かっていた。
街の不良に喧嘩を売る度胸もなければ、ジムや道場に看板破りに行くような根性もない。かといって、さすがに三浦を練習台にするのも可哀想だ。
そこで、俺が考えついたのがこの方法だった。
【虚飾】が、【ヒプノシス】rank100に代わりました
持続効果 1分
クールタイム 60分
自己暗示で、自身に幻影を見せる。今日のメニューは、アマチュア級を5人だ。
ボウッ
すると、実際に人の形をした幻影が五つ、俺の周囲を取り囲むようにして出現した。いや、実際には俺にしか見えてない幻影だ。
敵の影をイメージしながら、一人でトレーニングするシャドーボクシングに着想を得て、独自に編み出した練習法だった。
その上で、【鑑定】を使い幻影の力量をチェックする。
幻影
身体能力 C
【近接戦闘(格闘)】rank30
よしよし、ちゃんとイメージした通りの幻影だ。
rankの目安としては、どのスキルにも当てはまることだが……
rank1〜5 素人クラス
rank6〜19 初心者クラス
rank20〜49 アマチュアクラス
rank50〜74 プロフェッショナルクラス
rank75〜89 エキスパートクラス
rank90〜99 マスタークラス
rank100 グランドマスタークラス
といった具合に、分類される。
今回、生み出したのはアマチュア級の対戦相手を5人。日常でも、ギリギリ遭遇するかもしれない状況である。
この自己暗示が便利なのは、敵のレベルや人数も自由自在だというところだ。デメリットは、俺の想像できる範囲の攻撃しかしてこないことぐらいか。
ちなみに、身体能力も通常に設定してある。例え、rankが低くても異常に身体能力を高くした場合なのでは、鑑定値以上のパフォーマンスをしてきたりするところもリアルだった。
「こっちの出力は……これくらいで、いくか。プロフェッショナル・モード!」
【虚飾】が、【近接戦闘(格闘)】rank70に代わりました
持続効果 20分
クールタイム 20分
そう、コピペするときは必ずしもrank100の出力で出さなくてもいいらしい。
当初はrank100の動きをしてみて、しばらく筋肉痛でまともに動けなくなることがあった。
そこで試してみたのが、このrank調節である。
もちろん、rank100ほどの異常な動きは出来なくなるが、使用後の体の負担は減った。持続効果が増えてクールタイムは減ったことを考えると、今後は他のスキルでもrank調節は大事になってくるかもしれない。
今回の敵から考えて、ギリギリ勝てるレベルのrank。安全性を考えたら、エキスパート・モードまで上げたいところだが、このユニークスキルには、もうひとつ特別な機能が搭載されていた。だから、プロフェッショナル・モードでいく。
「……さあ、来い」
その言葉を皮切りに、周りを取り囲んでいた幻影たちが、一斉に襲いかかってくる。
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