第 1 章 戦乙女と襲撃者

ユニークスキル・1

 中学二年生・夏


「お前、最近つきあいが悪いぞ。俺ぐらいしか友達がいないんだから、もっと大切にしたらどうだ?」



 耳元で、同じ中学に進学したお馴染みの悪友の声が響く。フレンド登録した相手とは、こうしてハンズフリーで通話が出来る。他にもグループ通話や、相手の姿を見て話すこともでき、街中で独り言をぶつぶつと繰り広げてる人を見かけるのは、大概はこの通話機能を使ってたりするのが原因だ。



「そういう言葉は、可愛い女子に言われたいね。悪いが、俺は今日も忙しいんだ。切るぞ?」



「毎日毎日、何をコソコソとやっとるんだ?部活に入ってるわけでもなし……はっ!まさか、お前!!俺に内緒で、彼女でも作ったんじゃないだろうな!?」



 ブツッ



 これ以上は長くなりそうなので、強制的に通話を切ると、しばらく三浦からの着信を拒否設定に変えた。

 彼女が出来たとして、なぜにお前に報告せねばならんのだ。なんだかんだ、アイツは俺ことが好きすぎるようだな……全然、嬉しくないけど。



「さて、と。今日も、始めるか!」



 あの日以来、俺は進化した自身のユニークスキル【虚飾】の研究に没頭していた。


 色々と試してみて、段々とこのスキルの仕組みも分かってきた。


 まず、いうほどこのスキルは全知全能というわけではなかった。



 基本スキルというのは細分化したのも含めて100近く存在するが、大まかに分けて学問系、専門技能系、感覚系、運動系、特殊技能系の6つに分けられる。


 この【虚飾】は、それら基本スキルをコピペしてrank100の効果を発揮させるというものだが、学問系と専門技能系はそもそもコピペすることすら、不可能だった。

 恐らくはある一定以上の知識が必要とされるものは、適応されないのだろう。確かに、その瞬間だけ凄まじく賢くなるというのは無理がある。


 この時点で既に、大半の基本スキルは使用不能となったわけだが、それでも有能なスキルであることには変わりはない。



 まず“感覚系”。代表される基本スキルには【目星】【聞き耳】などがあり、発動すると視力や聴力が格段に上昇する。おまけに【目星】には、視界の中から自分が欲している情報を表示してくれたりと、利便性が高い。

 その上、“感覚系”はコスパも高く、比較的長時間使用が出来て、再使用までにかかるクールタイムも低めに設定されているのも特徴の一つだ。



 次に“特殊技能系”。【威圧】【隠密】【精神分析】【動物使い】【ヒプノシス】【鑑定】【ナビゲート】などがある。それ、基本スキルか?と思われるようなものが多いが、それだけにどれもrank100状態で使うと、それ単体で一つのユニークスキルに匹敵するような性能を持っていた。

 大まかな効果は、ざっとこの通り。


【威圧】は、相手を怯ませたり、萎縮させたりできる。

【隠密】は、気配を完全に遮断する。

【精神分析】は、相手の心情を読み取ったり、自身の精神を安定させたりできる。

【動物使い】は、動物を瞬時に手懐ける。

【ヒプノシス】は、相手に簡単な催眠誘導を仕掛けたり、自分へ自己暗示を掛けたりできる。

【鑑定】は、注視した物や人の詳細な情報を取得することができる。

【ナビゲート】は、目的地までのナビはもちろん、特定した人や物の現在地までもナビしてくれる。



 試しに使える場所が見当たらなくて苦労したところもあったが、なかなか上々な成果だった。

【鑑定】や【ヒプノシス】などは“専門技能系”っぽいのだが、コピペできたことを考えると“特殊技能系”に分類されるのかもしれない。



 そして、最後に“運動系”。代表されるスキルは【跳躍】【登攀とうはん】【回避】【近接戦闘】【投擲とうてき】などがある。

 これらは“感覚系”とは違い、ほぼ一瞬の持続効果のものが多い。一瞬だけ、跳躍力や把持力はじりょくを爆発的に上げてくれる。

 クールタイムも長いが、それはおそらく身体の過負荷を避ける為だと思われる。瞬間とはいえ、持っている筋力以上のパフォーマンスを引き出すわけだから、それ相応の反動もあるのだろう。



 そして、自分が最も重きを置いて、今もなお研究中なのが、【近接戦闘】のスキルだ。










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