エピローグ

須藤綾子はいつも通りの生活を送っていた。

その日は、いい天気に誘われるように近所の公園に散歩に出かけた。

疲れたのでベンチに座り持参のお茶を飲んでいると電話がかかってきた。

綾子はスマホを取り出して発信者を確認して電話に出た。

「はい、須藤です」

『須藤様、寿金融商事の及川です。損害賠償の請求をしない代わりに、結果を教えて欲しいと須藤様がおっしゃっていたので、お電話しました。今よろしいですか?』

綾子は周りに人がいないのを確認した。

「ご苦労様です。大丈夫ですよ」

『でわ、御報告いたします。松崎秋男、千恵子ともに執行猶予の付いた有罪判決が出ました。そして当社が出していた損害賠償の請求も当社が勝訴し、貸付金と利息、賠償金を受け取ることが出来ました。松崎夫婦には賠償金を払えるだけの預金がありませんでしたので、財産を差し押さえ競売にかけて支払わせることになりました。

それで松崎夫婦は次男夫婦と同居するそうです。二人とも自力では生活できない状況なのと、再犯防止のためです。

後、柴田弘については、弟の柴田道也が財産の管理を拒否した為、弁護士が任意後見人に付いて財産を管理をする事になったそうです。これは弁護士仲間から聞いたと荒川弁護士が言っていました』

「ありがとうございます。そちらが損をすることが無くてよかったです。松崎も柴田も自業自得ですから」

『須藤様には大変ご迷惑をおかけして、何かお礼をしなくてはと思いますが、損害賠償の請求もなさいませんでしたし・・・』

「それは必要ありません。松崎にも柴田にももう関わりたくありませんし、私には実害はありませんでしたから。ただ、これを教訓に保証人についてはよく確認してくださいね」

『それについては、今回のことを社内で共有して二度と同じような問題を起こさないよう社員一同気を引き締めます』

「それで十分ですよ。それでは失礼いたします」

『本当にいろいろとありがとうございました。須藤様の指摘が無ければ糸口が見いだせず損害を出すところでした。感謝致します。ではこれにて失礼します』

その言葉を最後に電話は切れた。


綾子はふーっと息を吐いた。終わったんだな~。と安堵する思いだった。

それにしてもここまで落ちるなんて。まだ残りの人生があるというのに、松崎夫婦は前科を背負い、財産を失い。柴田弘は誰も相手にしなくなって弁護士の後見人が付くとわね。

松崎夫婦にも柴田弘にもそしてその縁者たちにも散々嫌な思いをさせられた。因果応報。人にしてきたことは自分に帰るんだ。

もうあの人たちにかかわることもないでしょう。あ~さっぱりした。晴れやかな笑みを浮かべ、綾子は雲一つない空を見上げた。




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願いは奈落への片道切符 多肉ちゃん @tan1kuchan

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