判決 願いの代償

数ヶ月後、松崎夫婦に執行猶予の付いた有罪判決が出た。控訴も出来たが寿金融商事から、損害賠償の訴訟を起こされていたこと。証拠が揃っているので上告しても勝てる見込みがないと当番弁護士聞かされ上告を断念。二人の有罪が確定した。

損害賠償の方も松崎側の敗訴で結審し、松崎秋男は借入金、利息、相手の弁護士費用などの支払いを命じられた。

しかし、松崎秋男に支払い能力がなかったため、財産が差し押さえられ競売にかけられることとなった。

松崎夫婦は家や車などを失い。執行猶予期間中の再犯を防ぐ為次男が身元引受人となり、次男夫婦と暮らすことになった。


判決を受けた二人に昔の面影はなかった。特に松崎秋男はあの傲慢さが嘘のように落ち込んでいた。これからは常に監視の目が付き、年金のみで暮らすこととなる。

夢はかなったが、そのためにすべてを失い奈落に落ちてしまった。


柴田弘の財産は松崎千恵子が逮捕された後、柴田道也が管理していたのだが、二人の有罪判決が出た後管理を拒否。道也は『弘が父の財産を一人で相続しており、世話になっている姉が困っているのに手を差し伸べなかったことが我慢ならない。弘が借金を払ってくれればこんなことにはならなかった』と、かかわりを拒否した。

それで、柴田弘には家庭裁判所から弁護士の任意後見人がつけられ、財産は選任された後見人が管理することとなった。

後見人となった弁護士は、毎月弘に生活費を現金で渡し、ホームキーパーを週3日派遣することにした。弘は一応生活できるようになったが、一人余生を送らなくてはならなくなった。


松崎千恵子に一つ救いがあるとすれば、いつまで続くかわからない弟の世話をしなくてよくなったということだろうか。


『身の丈に合わない願いは身を亡ぼす』逆に回り始めた運命の輪は係累を巻き込みながら回転を加速し止めることは出来ない。





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